Sansanは11月21日、企業が保有する取引先データの品質を高めるサービス「Sansan Data Intelligence」を発表した。12月下旬からの提供を予定している。
Data Intelligenceは、統合基幹業務システム(ERP)や顧客情報管理システム(CRM)、営業支援システム(SFA)などで管理している取引先データを連携するだけで、データに含まれる企業や事業所を特定して、800万件以上の独自データベースの情報をもとに重複や表記ゆれ、欠損、古い情報などを最新かつ正しい情報に更新、保管する。取引先を新たに登録する際に正しい情報を提案するほか、情報のアップデートが必要な際には通知する。

(出典:Sansan)
ERPやCRM、SFA、表計算などのデータをData Intelligenceに取り込むと、取引先名や住所、電話番号などの情報から企業や事業所を特定し、独自に識別コード「Sansan Organization Code(SOC)」が付与される。データを企業や事業所の単位で管理できるとともに、グループ系列も一目で確認できると説明。従業員規模や業種、財務情報などの情報も付与される。これまで人手に頼っていたデータメンテナンスの手間を削減できるとともに常に高品質な取引先データを維持できるとしている。
Data Intelligenceは、企業のウェブサイトや官公庁の公開情報などを同社が独自に収集、名寄せして構築した800万件以上のデータベースを搭載している。システムページにアクセスすることで、このデータベースを営業活動やマーケティングの施策などに活用することも可能。
例えば、既存のシステムでは入力しきれない資本金やグループ企業などの項目を確認して取引先の情報を深掘りできると説明。2000件を超える独自フラグなどの多様な属性情報を組み合わせて、データベース全体から企業を絞り込むこともできる。自社の営業活動で注力している「営業戦略」「採用活動」などの条件に合致する企業を抽出して、アプローチ先の候補をリストアップすることも可能という。

(出典:Sansan)
業務のデジタル化が進む中で部門や業務領域ごとにシステムを導入する企業は増えている。特に事業活動を支える基盤情報となる取引先データは営業や経理、法務など各部門でそれぞれの用途にあわせて個別に管理されることが多く、取引先の重複登録や表記ゆれが生じるケースが少なくない。
取引先の社名変更や移転などの情報は、取引先からメールや手紙で通知され、手作業で更新する場合が多く、更新が漏れて古い情報のまま運用されるケースも発生している。同社の調査によれば、企業の情報システム担当者の約8割がデータの「重複」や「更新漏れ」を経験している。
取引先データの不整合が生じると、データを活用した顧客分析や戦略立案の精度の低下につながる。AIの活用でも古い社名や住所といった不正確なデータを参照し誤った解答が出力される懸念も生じる。実際、AIと業務システムを連携している企業の約9割が「AIが社内データを参照して回答する際に期待通りの精度が出ないことがある」と回答している。データの鮮度と精度を維持することは、AI活用や意思決定の精度を左右する重要なポイントとなる。


