太陽にほえろ!「ボスが太陽なら山さんは月」…男爵バロンの声は宮﨑駿監督に口説かれ「やる気になった」

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露口茂さん 4月28日、老衰で死去…93歳

 刑事ドラマの金字塔「太陽にほえろ!」。七曲署の捜査第一係長の「ボス」藤堂(石原裕次郎)の傍らにはいつも、露口茂さん演じる「山さん」こと山村精一刑事がいた。厚い信頼を背に、深い洞察力で犯人を落とす。「ボスが太陽なら山さんは月。なくてはならない人でした」。「テキサス」刑事役で2年間共演した勝野洋さん(76)は語った。

波止場でポーズを取る露口さん=露口砂子さん提供
波止場でポーズを取る露口さん=露口砂子さん提供

 「マカロニ」役の萩原健一さん、「ジーパン」役の松田優作さんに続く3代目の新人刑事に 抜擢ばってき されたがNGを繰り返す日々。共演者に散々怒られたが、露口さんは違ったという。「俺を見るとフッと笑って『頑張れよ』みたいな優しい目をした。逆に効き目があったね」

 一歩ひいてニヒルに笑い、控えめだが自己主張があった。「少し間を置いてポッとセリフを言う。間の取り方でニュアンスが全部変わる。目で人を引きつけてから芝居した」。その表現を追い続け、「この芝居の時は露口さんのパターンでいこうかなとか、今も僕の中に残っている」と感謝する。

 愛媛大在学中にスカウトされ、俳優座養成所に入所。1964年、今村昌平監督の映画「赤い殺意」の強盗役で注目された。映画「人間蒸発」「ええじゃないか」、NHK連続テレビ小説「おはなはん」などに次々起用され、72年に始まった「太陽にほえろ!」は初回から14年間出続けた。

 低く、知性的な声が評価され、映画やドラマ以外の仕事も舞い込んだ。だが、「ほとんどの台本を『嫌だ』って言っていた。わがままだったから」と妻の砂子さん(80)。ホームズの吹き替えをしたNHKの海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」も当初、主演の英国人俳優との声の高さの違いを気にしてためらったという。砂子さんの説得で出演に踏み切り、当たり役となった。

 60歳代になり、スタジオジブリのアニメ映画「耳をすませば」で猫の男爵バロンの声を演じた。「もう声が出ない」と断ったが、製作プロデューサーなどを務めた宮﨑駿さんに口説かれた。「『でも、しゃべっているじゃないですか』って。話すうちに宮﨑さんが魅力ある人だとわかり、やる気になった」と砂子さんは証言する。収録になるとOKが出ても納得せず、何度も挑む完璧主義な面を見せた。

 自宅には仕事仲間も招かず、私生活を見せなかったが、作中の山さんと同様に愛妻家だった。妻の作る食事だけを好み、時に散髪も頼んだ。役作りも2人で行い、80歳を過ぎても夫婦でゴルフを楽しんだ。

 生前、亡くなることを伏せるよう望んだという。勝野さんは「生き方を通す露口さんらしい」と目を細めた。人々の記憶に山さんの姿を焼き付けたまま、「月」らしく静かに去った。(東京本社文化部 辻本芳孝)

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