世界は「19世紀」に戻り、米国は「非自由主義的民主主義」に陥りつつある | 一人の男のエゴイズムのため
というクーリエジャポン(中身はLe Monde)の記事へのブコメでランド研究所のレポート を教えてもらった。
そのブコメとはこちら https://b.hatena.ne.jp/entry/4769813175171719233/comment/shugetsu-sai
アメリカのランド研究所では、2000年頃から既に世界は「新中世主義」と呼ぶ新たな時代に入っていると分析しており、ザカリア氏の19世紀回帰論には誤りがある。 https://www.rand.org/pubs/research_reports/RRA1887-1.html
ただし、ブコメの指摘と異なりRANDレポートの主旨は、米国と中国で起きていることを対比し、いずれも国家の力が相対的に弱体化しており(Weakening States)、国民社会は連帯を弱め国家以外の多様なコミュニティへと帰属し(Fragmenting Societies)、経済成長は鈍化と不均衡(Imbalanced Economies)、自然災害・感染症・無法で暴力的な非国家主体の脅威(Pervasive Threats)、パラミリ・国際的犯罪組織・サイバーなどによる戦争の非公式化(Informalization of Warfare)が2000年頃からの特徴となっていることを指摘している。
そして、こうした事柄を指して、ランド研究所の U.S.-China Rivalry in a Neomedieval World—Security in an Age of Weakening States は、「ネオ中世」と呼んでいるのだけど、それは別に実際の中世ヨーロッパ(5〜15世紀)を指して、そう呼んだ訳ではなく、近代国民国家のような強い中央集権、国家統治によって国家vs.民衆といったフラットな構造ではない重層的でそこここに権力が分立している様を指して「ネオ中世」と呼んでいることに気付く。
したがって、本件のブコメとなっているファリード・ザカリアのインタビュー記事の「19世紀に巻き戻る」というのも、Liberalを標榜する戦後西ヨーロッパの価値観(*法の支配*)から過去に巻き戻るという意味で使われている点で共通している。
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