裁判所の大理石の廊下には、ぬめぬめとした欲望の気配が立ち込めていた。傍聴席では老婦人が失神し、若い記者がスマホを抱えて涎を垂らしている。うけけけけけ!と笑い声が響き渡る中、財前教授は白衣を翻しながら証言台に立った。
「患者の意思決定能力が治療経過に重大な影響を与える、などと言ったってな、あれは一部のマニュアルにちょこっと書いてあるだけだ!患者が暴れ、拒否し、俺に抱きついて泣きわめくことなど日常茶飯事だ!」
うけけけけけ!佐々木庸平が突如飛び出してきた。彼は「俺は絶対がんじゃない!」と怒号を上げ、若き柳原医局員の白衣を乱暴に引き裂くと、その胸を貪り、股間をぐいと持ち上げた。
「がんじゃないんだよおおおお!!がんにされたくねぇぇぇ!!」
柳原は抵抗することもできず、冷たい床に膝をついて震えながら、「患者は神様、患者は神様…」と唱え続けた。だがその頬には微かに紅潮が走り、思わず震える指先を噛み締めると、うけけけけと声が漏れる。
同時刻、留置場では亀山君子看護師が逮捕され、面会に来た柳原医局員に「初イキはお前だったんだぞ…」と涙ながらに叫んでいた。その瞬間、君子は面会ブースの椅子に腰を突き出し、ぶるぶると小刻みに震えると、ガラスの向こうの刑事が「うけけけけ!」と狂った拍手を送った。
裁判長は目をむき、「静粛に!」と木槌を叩くが、傍聴席はすでに乱交の儀式のような熱狂に包まれていた。東教授の娘、東佐枝子は術後、意識が朦朧とする中で、「パパ…パパ…」と呻きながら、何者かに見えない舌で身体を舐め回されている幻覚に溺れていた。
その幻覚の根源は、実は若き頃の東教授が財前教授を「育成」するために仕組んだ呪いだった。財前は証言台で震える指を見つめ、突然笑い出した。「ああっ、これが…これが我が巨塔か!俺の血と欲望の塔かっ!」
うけけけけけ!うけけけけけけけけ!
法廷は今や、性と権力と嫉妬と欲望が渦巻く終末のカーニバル。里見は泣きながら法廷に立ち、「医学の倫理を…医学の倫理を守れ!」と叫ぶが、声は誰にも届かない。柳原は白衣を脱ぎ捨て、君子の幻を追い求めて床を這い、佐々木庸平は天を仰いで涎を垂らし、「がんじゃない!!」と絶叫し続ける。
東教授の声が響く。「財前よ、お前はワシの欲望を超えたのじゃ…」
そして最後の木槌が打ち下ろされると、法廷は一瞬静まり返った後、全員が一斉に「うけけけけけけけけ!」と笑い、狂気の喝采を上げた。
その瞬間、白い巨塔は天を突き破り、血と精液と涙のシャワーを撒き散らしながら崩れ落ちた。
終わりなき笑いの中、財前教授の虚ろな目は遠くを見つめていた———うけけけけけ!