ウェディングドレスは、個人の儀礼的物語を支える象徴装置だが、それが複数の履歴を持つとき、着用者は「自分だけの物語」を侵食される不快を抱く。そこに「穢れ」の感覚が生じる。
この不快をSNSで語った「花嫁」は、前任者(=元AV女優)を暗に「語りの妨げ」として位置づけることで、自身の儀礼性を再構築しようとした。しかしその語りは、別の倫理──職業差別の構図を可視化してしまった。
この騒動は、「私の特別な物語」を守る語りと、「誰もが対等であるべきだ」という公共倫理とが、SNSという舞台上で衝突した事例である。記号的純白性は、共有空間ではもはや安定しえない。