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2025-08-21

FSD(Supervised)は日本実装可能かを検証する

2025/08/20テスラジャパン公式Xで、横浜みなとみらい周辺の一般道における公道テスト動画を公開した。https://x.com/teslajapan/status/1957986432926249405

動画では、ハンズオフで以下の挙動確認できる。


これらの挙動日本現行法規実装可能か、また「監視なし」でも可能かを、一次情報公的資料を基に判定する。

日本自動運転関連キーワードの超要約

UN R79(自動操舵

ステアリング関連の個別機能要件。ACSFの各カテゴリ(B1=車線維持、C=車線変更など)を規定カテゴリーCは運転者意図的操作で方向指示器を作動させることを前提に単一の横運動を行う。

UN R171(DCAS)

レベル2相当の縦横持続支援包括的型式認可する新規則。R79の制約を補完し、一般道の右左折支援車線変更支援障害回避などのL2支援対象化。

道路交通法の要点

実装可否の判定(2025/08/21時点)

事象一般道ハンズオフ前提) 根拠・条件 高速道路ハンズオフ前提)
交差点で右折矢印点灯後に右折開始 不可(一般道ハンズオン要求機能自体はR171でL2支援として対象化されるが、国内運用一般道でのハンズオフを認めない。参考:MLIT 2024/06資料 条件付き可の見込み(交差点場面は高速では限定的ハンズオフは段階導入の対象領域
信号で停止し青で発進(信号対応 不可(同上) L2の継続支援としては対象だが、一般道ハンズオフは不可。参考:R171本文、MLIT資料 条件付き可の見込み(ハンズオフ領域の拡大に連動)
工事区間で閉鎖車線を回避 不可(同上) 障害回避はR171の対象だが、一般道でのハンズオフ前提は不可。参考:MLIT 2025/06資料 条件付き可の見込み(速度域、合図、DMS、抑止条件などの付帯条件下)
路上駐車車両の追い越し 不可(同上) 周辺交通とVRU配慮を含むが、一般道ハンズオフは不可。参考:UNECE本文 条件付き可の見込み(高速での低速物回避等に限定的適用
横断歩行者に優先を譲り停止 不可(同上) VRU配慮要件化されるが、一般道ハンズオフは不可。参考:UNECE本文 該当稀(高速は歩行者進入が想定外
ドライバー監視なしでの運転 不可 レベル2は監視義務継続スマホ注視禁止道交法71条5の5) 不可(同左)

現行制度上で、実装が予想される日本のFSD(Supervised)

現行制度日本仕様のFSD(Supervised)が目指す絵は、だいたいこうだ。

交差点の右折矢印が点いた瞬間、システムは「今だ」と耳打ちするが、主役はあくま運転者ウインカー人間の出番、手はハンドルに残すのが作法である。もし膝の上で腕を組んで余裕を見せれば、数秒で警告が畳みかけ、支援はしれっと身を引く。北米の「手は自由、車は勝手に」の夢は、ここでは早送りで終わる。

信号では賢く止まり、青になれば「青だよ」とは教えてくれる。ただし「行ってよいか」は自分の目で決める。見通しが悪ければ、システム空気を読みすぎるくらい慎重で、運転者の加速のひと押しを待つ。信号は合図であって免罪符ではない、という教育が徹底されるわけだ。

工事コーンが並ぶ場面では、基本「ちょい避け」+低速。完全なレーンチェンジ一般道では控えめ、合図は人間、進路の意思表示は軽いトルクで上書き、という分業制である。手を離せば、DMSが「握って」と催促する。工事現場で一番存在感があるのはパイロンでも重機でもなく、その警告になるかもしれない。

路上駐車の追い越しは、対向分離のない道ゆえに、対向車線へ大胆に踏み出す発想は封印。微小オフセットでスッとかわし、対向が見えた瞬間にサッと戻る。安全マージンは厚め、演出は薄め。北米の「スッと出てスッと戻る」は、ここでは「そっと出て、そっと戻る」に翻訳される。

横断歩行者には早めに気づき、素直に止まる。再発進は運転者が周囲を見て、合図して、そっと踏む。相手が戸惑えば、システムは強引に割り込まない。せいぜい控えめに促して、「決めるのはあなた」とハンドルを返してくる。主客転倒は起きない設計だ。

ハンズオフの扱いは総論として簡潔で、一定時間警報放置支援解除。つまりAutopilotのと変わらない。まとめるなら、北米の「映画みたいな自動運転」は、日本では「教習所優等生みたいな支援運転」になる、である

ナビはよくしゃべるが、交差点が複雑になるほどハンドルは寡黙になる。案内は饒舌、操舵は保守的責任はずっとあなた。速度もまた、標識地図車両法規の“低い方”に合わせ、越えそうならそっと抑える。画面には「支援中」「要監視」が常時明示され、取扱説明書は「L2は運転者責任」をこれでもかと刷り込む。派手さは薄いが、合格点は堅い。そんな“日本語訳されたFSD”が現行制度の答えである

可でなかった項目に必要制度改正

まとめ

一般道でのハンズオフは不可

FSD(Supervised)の挙動自体はR171(DCAS)の枠で型式認可対象になり得るが、一般道におけるハンズオフ前提の実装は現時点では不可である

高速道路についてはハンズオフを段階導入する国内方針が示されており、条件付きで可の領域が拡大する見込みである。一方、ドライバー監視免除対象外であり、一般道・高速を問わず運転者責任継続する。

北米のFSDへの期待は禁物だが、、

しかし、X上ではTesla AIが当該動画を以下のように引用している

Testing FSD Supervised in Yokohama city south of Tokyoone of the first Japanese ports that was opened to foreign trade🇯🇵

https://x.com/Tesla_AI/status/1958012898707460488

テストされた横浜は1859年に外国貿易港として開かれた歴史を持つ。過去ハリス日本開国を迫った歴史があるように、今回のテスト公開が閉鎖的と見なされがちな自動運転法規開放的運用へ、海外から圧力として作用する可能性はある。

注記

記事は公開資料に基づく技術法規の整理であり、法的助言ではない。最新の運用官公庁告示審査実務に従うべきである

 
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