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大規模修繕工事の施工会社員による住民「なりすまし」事件では、マンションの住民同士が互いの顔も分からないことに付け入られた……(kai/PIXTA) 首都圏の大型マンションで、大規模修繕工事の受注を目的とした前代未聞の「なりすまし事件」が発覚し、波紋を広げている。大規模修繕工事の施工会社の社員がマンション居住者を装い、修繕工事を検討する管理組合の修繕委員会に潜入していたという事件だ。この事件を巡っては現在、詐欺未遂と偽計業務妨害の両容疑で警察の捜査が進められている。 >>特集「マンション管理の大問題」はこちら 各種報道によると、施工会社の社員2人が今年5月、神奈川県内のマンションの居住者になりすまし、管理組合の修繕委員会に委員として参加していたところ、管理組合の関係者に身分を問いただされて発覚したという。その手口は、「覆面調査のアルバイト」と称したチラシで実際の住民に接触し、その夫になりすま
洋上風力の開発から稼動までを担う 三菱商事提供 秋田県沖2海域と千葉県沖の3海域で計画されている着床式洋上風力発電の開発、運営事業者を選ぶ日本初の入札で、三菱商事が3件すべてを落札し、産業界に衝撃が走っている。約1兆円の発注規模が半分以下に縮む水準の安値落札だったからだ。>>>「洋上風力 価格破壊」特集はこちら 設備や工事の受注を目論んでいた企業だけでなく、大型の再生可能エネルギー開発で地域経済の活性化を期待していた自治体からも落胆の声が上がっている。関連する500企業が加盟する日本風力発電協会は2月22日「価格さえ安ければ落札できる誤ったメッセージを与える」「基盤が整っていない関連産業の育成に支障を来す」と懸念を表明。今回の入札評価の情報開示や次回以降の入札評価方法の改善を国に求め始めた。 三菱商事はこれらの声に対し、米アマゾン・ドット・コムなど協力企業との地域貢献策を公表し、欧州での洋
『「稼ぐ小国」の戦略 世界で沈む日本が成功した6つの国に学べること』 編著者 関山健(京都大学大学院教授) 鹿島平和研究所 光文社新書 1100円 せきやま・たかし 1975年生まれ。専門は国際政治経済。著書に『気候安全保障の論理』など。 かじまへいわけんきゅうじょ 外交史家の鹿島守之助博士が1966年に設立。日本の安全と繁栄に関する調査研究を行っている。 平成初期、スペインやギリシャを訪れると、1泊3000円台で清潔なホテルに泊まることができ、物価は日本の半分か3分の2で、経済大国の国民の恩恵を実感したものである。 ところが今や、ホテル代や物価が日本より安い国はヨーロッパにほとんどなく、かつて世界中どこにでもいた日本人旅行者に会うことも少なくなった。地元の店先に当然のように並んでいた日本語版のガイドブックは中国語版やロシア語版に取って代わられた。 1995年から2024年までの1人当たり
でぐち・はるあき 1948年三重県生まれ。72年日本生命入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長を経て退職。2006年のちのライフネット生命を設立。18年立命館アジア太平洋大学(APU)学長。24年APU学長特命補佐・名誉教授。21年に脳出血で入院したが、その後復帰し、リハビリも続ける。77歳。 複雑化して紛争も相次ぐ国際情勢の中で、宗教を今、知る意義について、宗教や世界史などに造詣が深い出口治明・立命館アジア太平洋大学名誉教授に聞いた。(聞き手=中西拓司・編集部) >>特集「宗教で読み解く世界&経済」はこちら ── 中東だけでなくインドやパキスタンなど、世界で宗教を巡る対立が目立っている。現状をどうみていますか。 ■宗教対立の中でも最も大きなニュースになっているのは、パレスチナ武装組織ハマスとイスラエルの紛争だろう。イスラム教とイスラエルの対立は終息のめどが立たないが、1000年単位で歴
岸田首相はジョブ型雇用でトラブルを起こしたオリンパスの竹内康雄会長(左)に感謝状を贈った。「身体検査」に甘さはなかったか オリンパスの医療機器販売子会社「オリンパスマーケティング」がジョブ型雇用の導入を契機に200人に及ぶ降格人事を実施し、降格者から民事訴訟を提起されたほか、自殺未遂者も発生している問題。本誌が3月と4月にオンライン版とヤフーニュースで報じたところ、読者から大きな反響を呼んだ。 事件の概要をもう一度、振り返ると、医療機器メーカー、オリンパスの子会社であるオリンパスマーケティングが2023年4月に雇用制度を年功序列の「職能型」から、仕事の内容に応じて給与を決める「ジョブ(職務)型」に変更。その結果、約1300人の社員のうち、40~50代の中堅社員約200人が基本給を決める人事等級で降格となった。50人は新入社員相当に引き下げられほか、その中の26人が「エリアサポーター」という
米大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長が昨年11月に公表した論考“A User’s Guide to Restructuring the Global Trading System(世界貿易システムの再構築に関するユーザーガイド)”が、米政権の経済政策の真意を示唆している。以下はその要約である。(浜田健太郎・編集部) >>特集「アメリカ革命2025」はこちら 「ミラン論文」の表紙 トランプ米大統領は、米国産業を世界に対して公平な立場に置くため、世界貿易システムの改革を目指してきた。国際的な経済的不均衡の根本原因は、準備資産への需要によるドルの過大評価にある。この状況は、米国の財政負担を増大させ、製造業や貿易部門に影響を与えている。 関税は歳入を生み、通貨調整によりインフレや悪影響を抑制できるが、貿易調整が阻害される可能性もある。また、関税は国家安全保障上の懸念と結びつ
ホワイトハウスの閣議に出席するマスク。近く退任とも報じられている(2025年3月)Bloomberg 希代のポピュリストと自由原理主義者のチームは斜陽の超大国を救えるか。 >>特集「アメリカ革命2025」はこちら 米大統領選でトランプの「応援団長」を務めた大富豪イーロン・マスクが、政府効率化省(DOGE)を率いてアメリカの政治・社会を混乱させている。その強引な手法への反発が強まったことでトランプ側が「足かせ」と感じるようになり、数カ月以内に退任するとも報じられた(4月初頭)。だが仮にマスクが政権中枢を去ったとしても、シリコンバレーで巨富を築いた「テクノ・リバタリアン」が第2次トランプ政権で大きな影響力をもつ構図は変わらないだろう。 人類の「自由」を宇宙へ リバタリアニズムは「自由」を至上のものとする原理主義で、テクノ・リバタリアンはAI(人工知能)、ブロックチェーン、生命科学などのテクノロ
清瀬市(東京都)は市内に6館あった図書館のうち4館を3月末で閉館し、無料配達による貸し出しと返却の宅配サービスを導入した。6館それぞれ規模が違うので単純に施設数だけで議論はできないが、それにしてもいきなり3分の1になるのは驚きだ。閉館に反対する市民の声もある中、閉館の是非を問う住民投票を行う条例案を市議会が否決するなど、閉館・再編への動きは強引で拙速だと感じる。しかし詳細に見ると、現代の読書文化が抱えるさまざまな問題が浮かび上がる。 6館を2館に減らす一番の理由は財政難だ。東京都の多摩地方北部に位置する清瀬市は人口約7万6000人。区部への通勤者も多いベッドタウンである。法人市民税も個人市民税も都内26市の平均を大幅に下回る。これからも6館を維持し続けるのは難しいというのが市の判断だ。 残り621文字(全文969文字)
オリンパスの国内販売子会社「オリンパスマーケティング」で大量降格事件が発生した Bloomberg 大手医療機器メーカー、オリンパスの販売子会社で「ジョブ型」雇用制度の導入に伴い、大量の降格人事が発生し、問題となっている。40~50代の中堅社員約200人が、基本給を決める人事上の「等級」で新入社員相当に引き下げられ、製品運搬や回収などの単純作業を担う部署に配置転換される事例も多発した。一部の社員は、「ジョブ型雇用に名を借りた事実上のリストラ」として、降格の取り消しとパワーハラスメントに対する損害賠償を請求する訴訟を起こしたほか、精神的な苦痛から自殺未遂を起こす社員も発生している。 問題の発端はオリンパスの医療機器販売子会社「オリンパスマーケティング」の安藤幸二社長(当時)が2022年8月5日、23年4月から導入する「ジョブ型」の新人事制度について説明会を開き、従業員に通知したことにさかのぼ
モデルナ・ジャパンの長山和正社長 新型コロナウイルスが2023年5月、感染症法上、季節性インフルエンザと同じ5類に移行してから約2年弱、昨年4月のワクチン有料化から1年が経過した。訪日客が急増する春の行楽シーズンを控え、日本のコロナ対策は十分なのか。コロナワクチンの大手、モデルナ・ジャパンの長山和正社長に、日本の新型コロナの感染状況やコロナ対策の課題などについて聞いた。(聞き手=稲留正英・編集部) ―― まず、日本におけるコロナワクチンの接種状況について ■昨年4月にコロナワクチンの接種が「特例臨時接種」から「定期接種」に移行して、人々の意識が大きく変わった。今まで自治体の勧めで打っていたものが、自分で選択してお金を払って打つことに180度変わり、それが接種率の変化に現れている。 具体的にはコロナワクチンの接種回数は23年の春夏2300万回、秋冬2800万回の計5100万回から、24年は7
石破茂首相の出版文化論 「本と書店」は国の文化的基盤だ 清水幾太郎、江藤淳、五木寛之、寺島実郎、猪瀬直樹…から受けた影響 伊藤彰彦 本と書店への思いを語る石破茂首相 角川春樹氏が牽引する、本と書店を守る運動に本誌は共鳴、これまで何度か推移を報じてきた。角川氏がその政治的担い手を委ねたのは、なんと石破茂首相である。異能作家・伊藤彰彦氏が石破首相を直撃、ことの経緯と、首相自身の読書体験、出版文化への思いの丈を聞いた――。 今年のNHK大河ドラマ『べらぼう―蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)』は江戸期のメディア産業やポップカルチャーの礎を築いた蔦屋重三郎(=横浜流星)を描き、出版文化の黎明(れいめい)期にスポットライトを当てた。しかし、それから二百五十年後の現在、日本の紙の本と書店は存亡の機に瀕(ひん)している。 国民の6割以上が1カ月間に1冊も紙の本を読まない。全国の市町村の4分の
小此木政夫慶応大学名誉教授(丸山博撮影) 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が昨年12月に「非常戒厳」を宣言した背景にある韓国社会の分断について、小此木政夫慶応大名誉教授は、現代の対立状況の背景が19世紀後半の「朝鮮ナショナリズムの分裂と競合」にあるのではないかと指摘する。小此木氏のインタビュー後半として、19世紀後半にまでさかのぼる歴史的背景を語ってもらった。 ── 韓国における「保守派」と「進歩派」には、日本の植民地支配に抵抗した独立運動での路線の違いが歴史的な背景として存在すると指摘されました。それが現在の状況にも影響しているということでしょうか。 小此木 最近の韓国政治はリーダーシップ危機と表現するしかない混乱した状況にあります。私は、「朝鮮ナショナリズム」の分裂と競合に原因があるのではないかと疑っています。そうだとすれば、それは相当に構造的なものであり、簡単には解消しないでしょう。
小此木政夫慶応大学名誉教授(丸山博撮影) 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が昨年12月に「非常戒厳」を宣言した後、韓国政治は先を見通せない混乱に陥っている。こうした状況の背景には深刻化する政党間の対立とそれに伴う社会の分断があると指摘されており、国際的な世論調査でも韓国社会の党派対立は米国と同じくらい深刻だとされる。では、対立を深める韓国の「保守派」と「進歩派」を分けるものは何なのか、なぜ対立がここまで深刻になっているのか──。長年にわたって日本の韓国地域研究をリードしてきた小此木政夫慶応大名誉教授は、現代の対立状況の背景を19世紀後半の「朝鮮ナショナリズムの分裂と競合」にあるのではないかと指摘する。小此木氏の診断を2回に分けて紹介したい。 ── 今回の事態の背景には韓国社会の分極化、すなわち保守派と進歩派の対立の激化があると指摘されます。韓国における「保守派」と「進歩派」とは、いったい何
書店のない自治体が27%という数字がよく話題になる。では、公共図書館のない市区町村は全国でどのくらいあるかご存じだろうか。 日本図書館協会の集計によると全国815市区のうち、図書館を設置しているのは808。つまり七つの市区には図書館がない。これが町村だとどうか。自治体数は926。そのうち図書館を設置しているのは544。382の町村には公共図書館がない。全国の町村の41%には図書館がないのである(2023年)。 図書館を設置している自治体も、必ずしも満足できる状況ではない。11月5日から3日間、横浜市で図書館総合展が開催されたが、会場で出会った図書館関係者たちからは、自治体の予算削減が続いて、資料購入や職員配置に影響が出ているという声を多く聞いた。建物の修繕や設備の更新も、自治体の財政難のため他の予算よりも後回しにされがちだという。 公立図書館の職員の76%が非正規雇用で、低賃金かつ不安定な
◇「破天荒な軌跡」と「芸能者の革命」 広末涼子が12月にライブを行う。数々のスキャンダルに見舞われ、常識の枠に収まらないキャラクターで無頼派ともいえる芸能人生を歩んできた彼女は、いまどんな姿を現すのか。デビュー時からその軌跡を見つめてきた中森明夫氏が、広末に宿る「芸能のデーモン」を解き明かす。 ◇広末涼子が帰ってくる! 昨年6月、カリスマシェフ・鳥羽周作氏とのW不倫が報じられ、CMはじめすべての仕事を降板、表舞台から姿を消した。三人の子の母であり、キャンドル・アーティストと再婚していた。そのキャンドル・ジュン氏の独自の記者会見は世の耳目を集めた。奇妙な巨大ピアスを耳につけ、涙ながらに世界平和への祈りと妻・広末涼子の異様な二面性を語ったのだ。 ふだんはメイクもせず、家事に励み、子供思いの良き母である彼女が、突如、「濃い化粧に派手な格好をして、眠ることもできず、常に何かを書いていなければ心が収
ナシ畑が点在し、黄金色のススキが揺れるのどかな田園風景が広がる一方、窓のない巨大な箱状の建物が林立する──。東京都心部から電車を乗り継いで約1時間。成田国際空港にも近い千葉県印西市が今、全国的にも有数の「データセンター(DC)銀座」として変貌を遂げている。 >>特集「電力インフラ大投資」はこちら DCは、インターネットでつながったサーバーなどの機器を設置するために特別に作られた建物。高速回線のほか機器を冷やすための冷却システムが備えられている。膨大な個人情報だけでなく、中央省庁や企業などの機密情報も扱うためセキュリティーは厳しく、免震性や耐震性も強化されている。電源が止まって冷却も止まれば機器が壊れてしまうため、非常用電源なども完備する。 印西市によると、DCは2019年ごろから市内で建設が相次ぎ、現在は確認できるだけで11事業者・30施設が同市内でDCを運営している。ただ、重要データなど
撮影 中村琢磨 池谷裕二の闘論席 スリーマイル島原子力発電所。この名を耳にすれば、米国で1979年に発生した深刻なメルトダウン事故を想起する人々は少なくないだろう。長らく運転を停止していた同原発だが、このほど1号機の再稼働が決定した。注目すべきは、この再生プロジェクトにマイクロソフトが巨額の資金を投じている点である。 現在の米国では、温室効果ガスを排出しないクリーンエネルギーとして、原発が新たな脚光を浴びている。グーグルやアマゾンをはじめとするIT業界の巨人たちが、こぞって原発事業への投資に乗り出しているのだ。 残り560文字(全文810文字)
『サステナビリティの経済哲学』 著者 松島斉(東京大学大学院教授) 岩波新書 1056円 まつしま・ひとし 1960年生まれ。経済学博士。専門はゲーム理論、情報の経済学、メカニズムデザイン。著書に『ゲーム理論はアート』『金融システムの行動ゲーム理論』など。 「メカニズムデザイン」などの分野で国際的に顕著な業績を上げた著者による初のサステナビリティ(持続可能性)に関する包括的な書物である。宇沢弘文ゼミ出身の著者が、師の社会的共通資本論に真摯(しんし)に向き合ったオマージュの要素もある。 著者はサステナビリティこそ、現代の最重要課題だと訴える。本書の言葉を引けば、「環境、社会、経済の三つの側面を総合的に考慮し、未来世代にも十分な資源や環境条件を提供することを目指さなければいけないという理念」である。現代社会はこの条件を満たしておらず、中でも気候変動はもっとも深刻で、格差・貧困、経済の持続可能性
マツダ3ファストバック「スカイアクティブX」モデル(伊豆スカイラインにて) 筆者は10月2日、エコノミストオンラインに「最新エンジン車に試乗して分かった『EV失速』の本当の原因――優れたデザインで298万円、侮れない国産ガソリン車の競争力」と題する記事を掲載した。足元の世界的な電気自動車(EV)の販売減速を、エンジン車と比較した価格競争力の不足の観点から指摘したものだ。 「Drill, Baby, Drill!」 その約1カ月後の11月5日、米大統領選でトランプ元大統領が劇的な返り咲きを果たした。トランプ氏は、「Drill, Baby, Drill!」((化石燃料を)掘れ、ベイビー、掘れ!)をスローガンに、温室効果ガスの排出量を抑える国際的な枠組みであるパリ協定からの離脱を公約する。同氏の号令で、米国が再びシェールオイルの増産に走れば、原油価格は下がり、インフレに苦しむ米国の一般大衆はEV
帝国データバンクが9月8日に発表したTDB BusinessViewによると、2023年度における出版社の業績は、赤字が36.2%、業績悪化の出版社は6割を超えたという(調査対象652社)。24年1〜8月の倒産・休廃業解散は46件と過去5年で最多ペースだ。 しかし、大手は好調だ。業界専門紙『文化通信』によると、集英社の83期(23年6月1日〜24年5月31日)決算は減収増益。売上高は2044億円で前期比2.5%減だが、前期に続いて2000億円を超えた。興味深いのはその内訳だ。出版売り上げの比率は59.3%で6割を切った。4割は広告と事業収入で、なかでも版権収入が大きい。また、出版売り上げの内訳を見ると59.5%がデジタルで占められる。紙の雑誌・コミックス・書籍はいずれも前期比マイナスで、デジタルのみが4.1%プラスだ。 帝国データバンクのリポートは「出版物の約4割が売れ残りとして返品される
原子力規制委員会が安全規制基準について「不合格」と判断した日本原子力発電の敦賀原発2号機 日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県敦賀市)について、原子力規制委員会は8月28日、原子炉直下に活断層のおそれがある地層が存在し、安全規制基準に適合していないとする審査書案を了承した。2012年に規制委が発足してから、審査「不合格」は初めてである。この審査は、福島第1原発事故前に事業者の言いなりと評された規制行政が事故後にどう変わったかという観点からも関心を集め、表のような経過をたどった。 規制委の有識者会合は13年、2号機下の地層について、活断層と認定した。一方、原電は海外機関に依頼した調査などからそれを否定した。異なる科学評価を規制委がどう判断するのか注目されたが、20年に原電提出の文書に、地質データを80カ所改ざんした跡が発見され、規制委は審査を中断した。その後も同様の問題で審査中断と再開を繰
『財政・金融政策の転換点 日本経済の再生プラン』 著者 飯田泰之(明治大学教授) 中公新書 924円 2000年代に完成した「新・新古典派総合」理論では、経済の安定化は金融政策の役割であり、財政は抑制的に運用されるべきだとされていた。ところが、08年の金融危機後、非伝統的な金融政策が行われたものの経済の回復は思わしくない。それを踏まえて、金融政策の限界と財政政策の重要性が認識されるようになってきたと本書はいう。けれども、「金融政策はインフレには効くが、デフレには効かない」というのが評者の恩師・伊東光晴の持論だった。反対に新・新古典派総合に盲従し、「金融政策でデフレ脱却は必ずできる」と言い続けていたのがリフレ派だったことを本書は書いていない。 インフレ・ターゲットや量的緩和政策などの非伝統的な金融政策は、金融緩和が長期に及ぶという予想を作り出すことによって長期金利を引き下げる政策だという。け
船戸崇史医師 ♢がんが嫌がる生活5カ条 外科手術や緩和医療など、あらゆるがん医療に数十年にわたり携わってきた船戸崇史医師。やがて、自らも腎臓がんを発症。自身の再発防止のために行ったさまざまな補完代替医療や生活習慣の中から、エビデンスとして証明できるものだけを現在も実践、紹介している。がんが嫌がる、そしてがんにならない暮らし方、その決定版! JR名古屋駅から、列車を乗り継いで約1時間。のどかな田園風景と小さな集落を飽きずに眺めながら、岐阜県養老町にある「船戸クリニック」へと辿(たど)り着いた。ここは西洋医学と補完代替医療を合わせた、統合医療のがん治療を受けられる医院として知られる。出迎えてくれたのは、船戸崇史院長である。他人との垣根を取り払う、柔らかい笑顔。しかし、一線で走り続ける人ならではの壮健さも漂う。 「それぞれの医療の良い面は取り入れ、弱点を相互に補う治療を行っています。そのためがん
新型コロナウイルスの5類移行から1年、人の移動は回復してきている JR旅客会社6社、大手私鉄14グループによる経営状況を占う2023年度(24年3月期)の決算が出そろった。昨年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行で行動制限が撤廃され、人々が市中に戻ってきた結果が反映されている。 >>特集「鉄道新時代」はこちら 各社の連結営業収益を22年度と比較すると、国際物流事業の低迷で減収となった西日本鉄道を除いて各社大幅な増収を達成した(上表参照。拡大はこちら)。連結営業損益も改善され、2329億円もの増益を記録したJR東海をはじめ、2045億円増益のJR東日本、957億円増益のJR西日本、163億円増益の阪急阪神ホールディングス(HD)と好決算が続く。JR北海道、JR四国は鉄道事業で設備の安全対策に投資した結果、営業損失が続いている。 各社の決算をコロナ禍直前の19年度と比べた場合、連結営業収益
北陸新幹線が3月に金沢ー敦賀間で延伸開業した 北陸新幹線が3月に敦賀駅まで延伸したが、その効果は軽微にとどまっている。新幹線網がさらに広がることが期待されるが、その見通しは不透明だ。 2024年3月16日北陸新幹線は敦賀まで開業した。 15年3月の金沢開業では、それまでの上越新幹線越後湯沢駅での乗り換えがなくなったことによる効果が大きく、首都圏の人たちにとって北陸地方が気楽に行ける地域となり、北陸に大きな経済効果をもたらした。しかし今回の延伸では、関西圏からは敦賀駅での乗り換えが増え、東海道地区からは米原駅と敦賀駅の2度の乗り換えが必要となった。 開業初日は、金沢─福井間の利用者はコロナ前の19年(同日)に比べて41%増加した。しかし開業ブームはほぼ1日で終わり、4月15日までの1カ月間では同12%増。首都圏から福井への利用が東海道新幹線経由に比べて北陸ルートの方が早くなったことによる効果
紙の雑誌の市場縮小が止まらない。出版科学研究所の発表によると2024年上半期、紙の雑誌の推定販売額は2025億円で前年同期と比べて7.8%のマイナスだ。雑誌の休刊も続いている。アイドル雑誌の『ポポロ』(麻布台出版社)、『声優アニメディア』(イード)、女性ファッション誌の『ジェリー』(文友舎)、『ステディ』(宝島社)など。なかでも『ポポロ』や『声優アニメディア』は、根強いファンに支えられて底堅いといわれていた。 紙の雑誌をめぐる環境は悪化の一途をたどっている。取次大手の日本出版販売がコンビニへの雑誌卸から撤退し、同業のトーハンが引き継ぐものの、雑誌を扱わないコンビニも多数出てくるもようだ。トーハンのキャパシティーの問題もあるが、コンビニ経営者にとって雑誌はもはや魅力的な商品ではない。 大都市の駅売店ではコンビニとの協業やコンビニへのリニューアルが進むが、こちらでも雑誌の扱いを縮小したりやめて
2大取次の日販(日本出版販売)とトーハンの2023年度決算が発表された。日販は減収減益の赤字決算、トーハンは減収増益の黒字決算ではあるが、両社ともに本業である取次事業は赤字だ。 日販は「課題とその背景」として、①書店売り上げの減少、②コスト効率の悪化、③運賃の上昇を挙げている。なかでも書店売り上げの減少の背景には、店頭売り上げの減少や書店閉店の加速だけでなく、客数の減少がある。同社のPOSシステム導入店舗約300店の実績で見ると、新型コロナウイルス流行前の2019年を100とした場合、23年は75.6%と大きく減少している。客単価は107.7%に上昇しているものの、到底客数減をカバーできるものではない。消費者の書店離れが急速に進んでいる。 日本の近代出版流通は取次を中心に動いてきた。毎日発行される雑誌も書籍もコミックも、そのほとんどは出版社から取次を経由して書店に運ばれ、売れ残ったものも取
海外の金融政策に起因する円安に対して日銀が柔軟に利上げを模索できないのかは一つの論点となる 輸入価格主導のインフレで「物価高不況」に陥っている日本に求められる処方箋とは。 >>特集「物価・金利・円安」はこちら 2022年以降の物価上昇は、海外発のインフレから始まった。エネルギーや食料などの国際価格が大幅に上昇し、円安がそれに拍車をかけた。その円安も米欧の利上げが主因なので、海外インフレが日本に波及する経路のひとつと見ることもできる。 物価高がコロナ貯蓄食い潰す 輸入価格主導のインフレは、国内の購買力を低下させるという意味で、いわゆる「悪い物価上昇」である。家計所得の代表的指標である雇用者報酬は、名目ベースではコロナ禍前(19年)よりも6%増加しているが、実質ベースでは4%以上も減少している(図1)。賃金を上回る物価の上昇により、この5年間で日本の家計はかなり貧しくなった。 しかも、家計が保
「書店・図書館等関係者における対話の場」は、出版文化産業振興財団(JPIC)、日本図書館協会、文部科学省総合教育政策局の連携の事業。書店や出版社、公共図書館、学識経験者らで構成され、2023年10月から24年3月まで4回にわたって開催された。4月1日に発表された「まとめ」では、これまでの議論で得られた現状や課題に関する共通認識や書店と図書館の連携方策が提示されている。 興味深いのは「複本問題」について。公共図書館がベストセラーを大量に所蔵して貸し出し、書店の経営や作家の生活を圧迫しているという批判は、20年以上前から続く。一部の書店や出版社からは、複本制限や貸し出し猶予期間の設置などを求める声もあった。しかし「まとめ」ではベストセラー本の複本は平均1.46冊で、約6割の図書館の複本は「2冊未満」で過度とはいえない状況にあるとした上で、実証研究に基づいて「全体として図書館による新刊書籍市場の
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