中学受験をする子たちが本気で嫌いだった
教科書を配られたとき一年でこれしか進まないのと笑う声を聞くたび胸の奥がざらざらした
自分が必死にノートに書いている横で連除法使えばいいのにと言われたとき笑って返したけど本当は机を蹴りたかった
あの子たちは塾に通って家庭教師がいて親が夜食を用意してくれる世界にいた
私は家で弟の世話をしながら学校のドリルを解いて間違えて怒られてまたやり直した
テストの順位表で上の方にいる子はみんなペンも服もきれいだった
家に帰ると新品のランドセルが並んでいて冷蔵庫の中が明るいんだろうなと勝手に想像して腹が立った
「努力すれば報われる」って言葉を信じるにはあの格差は残酷すぎた
それを認めたくなくてあの子たちを嫌いになる方が楽だった
彼らは悪くないのに笑っている顔が全部敵に見えた
塾帰りのリュックが光って見えて目を逸らした
あの頃の私は自分の未来が最初から狭く作られていることに気づいてしまっていた
親の財布の厚さが将来を決めるなんて信じたくなかった