グリーとDeNAを中心に設立された「一般社団法人ソーシャルゲーム協会(JASGA)」という業界団体が解散に向かっている。その前兆か。3月31日、理事を出していた主要6社の1社、LINEが同協会をひっそりと脱退していた。LINEの森川亮社長は協会理事を辞任している。

4月1日付けの協会のリリースに「LINEが退会」とあるが、ウェブを検索してみても誰も話題にしていない(メディアも報じていない)。だが筆者は、ソーシャルゲーム業界の行く末を占う象徴的な出来事と捉え、退会理由についてLINEに問い合わせた。すると、こんな返答が返ってきた。
「ソーシャルゲームをメインとするプラットフォーム事業者と、スマートフォン(スマホ)でのコミュニケーションをメインとするLINEではビジネスモデルが異なることから、さまざまな協会施策について、共同歩調を取れない事もあり、LINEとしては、独自の安心安全なインターネット環境構築を推進していく方がより良いと考え、退会させていただくことにした次第です」――。
発足から約1年半。その間、ソーシャルゲームを取り巻く環境は大きく変わった。
「コンプガチャ」問題を機に呉越同舟
ソーシャルゲーム協会は2012年11月、ゲーム開発会社など約50社の賛同を得て発足した。携帯電話向けゲームが大流行した一方、未成年者が月に何万円もつぎ込むアイテム課金の実態や、消費者庁が違法判断を下した「コンプガチャ」などが社会問題となり、業界として対応が迫られていたことが背景にある。
当時、携帯電話向けゲームで覇権を握っていたのはグリーとDeNA。ユーザーやゲーム開発会社の獲得で激しく火花を散らせ、訴訟合戦も繰り広げるなど犬猿の仲だった。が、規制をちらつかせる行政が不気味に迫り、メディアの風当たりも日増しに強くなる。
業界の権益を守るためには、大手2社が呉越同舟で対応にあたることが至上命題。だからこそ、グリーの田中良和社長とDeNAの守安功社長が揃って協会の代表理事に就いた。
次いで理事を出したのが、ミクシィ、サイバーエージェント、ドワンゴ、そして、NHN Japan(当時のLINE)の4社。さほどソーシャルゲームで儲けていたわけではないが、ゲームプラットフォームを持つ大手ネット企業として、同じ船に乗った。
協会の大きなミッションは、健全化に向けた自主規制のルールを策定し、業界として徹底させること。使い過ぎを防ぐよう、青少年への啓蒙活動などにも取り組んだ。だが、わずか1年で携帯電話向けゲーム市場の競争環境が激変したのはご案内の通りである。
スマホシフトでカジュアルなゲームアプリが主流に
射幸性の高いガチャに依存するようなソーシャルゲームは次第に人気が陰り、その代わり「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」に代表されるスマートフォン向けのカジュアルなゲームアプリが台頭した。
詳細は他の記事に譲るが、要するに旧来型の携帯電話(フィーチャーフォン)からスマホへ急速にシフトすると同時に、ユーザーは旧来型のソーシャルゲームから離れていった。
スマホ向けの人気ゲームアプリにもガチャはあるが、アイテムの強さに強く依存したり、他人と競うことを強く煽るようなゲーム内容ではなく、課金せずとも十分に楽しめるパズル型ゲームが主流。
それまで一世を風靡していたカードバトル型のソーシャルゲームとは似て非なるものだ。
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