ふるさと納税を行った人の約3割は、どの自治体に寄附したか覚えていない。そんな調査結果が公開された。寄附先を選ぶ際、ほとんどの人が返礼品の内容や魅力で決めている。納税者がどう考えようが、地方自治体の収入増になれば問題はないのだろうが、それでいいのか?
ふるさと納税初心者のための情報サイト「はじめてのふるさと納税」が全国の20〜70代の男女1009人を対象に行った利用実態調査によれば、過去に申し込んだ返礼品の自治体名を覚えているかとの問いに、「ほとんど覚えていない」と答えた人が29.2パーセントにのぼった。58パーセントは「大体は覚えている」。すべて覚えているという人はわずか8パーセントだ。

ふるさと納税先を決めるときに重視するポイントを尋ねると、「返礼品の内容や魅力」が85パーセント。応援したい自治体や寄附金の使い道で選ぶ人をはるかに超えている。どこに寄附するかはあまり興味がなく、あくまで返礼品ありきのふるさと納税になっているのが実態。

ところで、ふるさと納税が誕生した際の理念をご存知だろうか。総務省は次の3つを掲げている。ひとつめは、納税者が納税先を選択できること。国民の納税意識を高めるためだ。ふたつめは、ふるさとやお世話になった地域を応援すること。みっつめは、自治体が国民に取り組みをアピールできること、つまり自治体のPRだ。これらにより、納税者と自治体がともに高め合う関係を築くというのが、本来の趣旨だった。
ところが自治体間の競争が過熱し、返礼品がエスカレートし、結局、潤沢な予算のある自治体がより多くの寄附を集めるという、ワケのわからないことになった。
ふるさと納税は、地方の特産物が手に入り、おまけに税金がちょっと控除されるというお得で楽しい制度であることはたしかだ。大いに利用したいところだが、ちょっとだけ本来の理念を頭の片隅に置いて、その地域で暮らす人たちのことを想像してみると、特産品に温かいストーリーが重なって、より価値あるものに感じられるはずだ。



