ドナルド・トランプ大統領は米国時間11月8日朝、自身のSNSであるトゥルース・ソーシャルへの投稿で、関税収入を使って「少なくとも2000ドル(約30万円)」を米国民に直接支給すると約束した。ちょうどその関税が最高裁判所で争われているなか、彼は関税政策によって納税者に報いると同時に、米国の国債を返済すると述べた。
トランプは投稿の中で、関税政策の反対派を「愚か者(FOOLS)」と非難した。これは、最高裁の保守派とリベラル派の双方の判事が、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠にした関税についての口頭弁論を実施してから数日後のことである。
この2000ドル(約30万円)の支給は「高所得者」には適用されないとトランプは語ったが、どの所得水準が除外されるのかなどの詳細は明かさなかった。また、この支給がいつ、どのように行われるのかについても、投稿ではほとんど言及されていない。
この投稿は、最高裁がトランプ関税の合法性を問う2件の訴訟を審理した直後に出されたものである。トランプ大統領は当初、主要な貿易相手国であるカナダ、メキシコ、中国に対して関税を引き上げ、その後4月の「リベレーション・デー(解放の日)」宣言で、この関税をほぼすべての外国に拡大した。同政権はその後、一部の極端な「相互関税」を緩和したものの、トランプは依然として個別の国々に新たに引き上げられた関税率を設定し続けている。
トランプはIEEPAを根拠に広範な関税を課しているが、最高裁の保守派とリベラル派の両陣営の判事は、政策を擁護する政府側の主張に懐疑的な姿勢を見せた。ただし、関税に反対する側の主張にも厳しい質問を投げかけている。
トランプは先日、CBSのテレビ番組『60 Minutes』の中で、最高裁が自身の関税政策を無効とするような判断を下せば「非常に悲しい日になるだろう」と語り、「わが国は計り知れない損害を受けると思う。経済は地獄に落ちる」と加えた。
トランプは、米国は関税により「数兆ドルを手にしており、まもなく3兆7000億ドル(約570兆円)にのぼる巨額の債務を返済し始めるだろう」と主張した。
米財務省の発表によると、9月を期末とする2025会計年度における関税収入は約1950億ドル(約30兆200億円)だった。また、イェール大学の政策研究所であるバジェット・ラボは、トランプの関税政策によって2026年から2035年の間に最大2兆6000億ドル(約400兆円)の収入を得る可能性があると試算している。
しかし、最高裁がIEEPAを根拠とした関税を違憲と判断した場合、この収入は50%以上減少する恐れがある。ただし、現在の関税が無効とされたとしても、トランプ政権は別の法的手段で関税を課す意向を示している。米財務省の最新データによると、米国の国債残高は38兆1000億ドル(約5865兆円)を超えている。



