今週の株式市場ですが、AI相場が大きく揺らぐ場面がありました。好決算の銘柄まで売られる展開に、一部では「バブル終焉」もささやかれましたが、過去の調整局面と同様に、チャート上はまだ上昇トレンドは崩れていません。AI相場はまだ続く見込みではあるものの、AI相場に対する視点の変化が芽生え始めている点には注意する必要があります。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「AI相場は「まだ終わらない」?芽生え始めた視点の変化に注意」
揺さぶられた「AI相場」
11月相場入りした今週の株式市場ですが、軟調な場面が増えています。とりわけ、11月5日(水)の取引では、日経平均が一時5万円台を割り込むなど大幅に下落しました。
こうした株価下落の背景には、前晩(4日)の米国株市場で、足元の相場をけん引してきたAIや半導体関連株が下落したことが影響しています。
この日のナスダック総合指数(ナスダック)は2%安、S&P500種指数も1.2%安となりましたが、この流れを受けた日本株市場でも5日は、ソフトバンクグループ(9984:10%安)やレーザーテック(6920:6.92%安)、アドバンテスト(6857:5.95%安)、東京エレクトロン(8035:4.08%安)などの銘柄が下落しました。
株価下落の要因をもう少し掘り下げると、米パランティア・テクノロジーズ(PLTR)が発表した決算が好調だったにもかかわらず、株価が7.9%も下落したことや、米大手金融機関(モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックス)の幹部がAI相場に対する懸念について発言したこと、そして、空売りで有名な米著名投資家が、エヌビディア(NVDA)およびパランティア・テクノロジーズ株を大規模に空売りしていることが判明したことなどによって、AI相場が揺さぶられる格好となり、売りにつながったと考えられます。
一部では「バブル」との指摘もあったAI相場ですが、このまま終焉(しゅうえん)を迎えるのでしょうか?
AI相場はまだ続くか?
もちろん、現時点で「AI相場が完全に終了した」と断言するのは早計です。
確かに、これまでのAIや半導体関連株の上昇は期待が先行しすぎていた面がありますが、直近の過去を振り返ると、AI相場の過熱感によって株価が下落した場面は、2025年の8月中旬から下旬にかけての時期や、2月中旬から3月上旬にかけての時期にも見られました。ただ、いずれも本格的な下落トレンドに転換することはなく、株価調整の範囲内にとどまっています。
今回についても、翌日5日(水)の米国株市場と、それを受けた6日(木)の日本株が反発していて、下値を探る展開に発展していません。
<図1>国内外の主要株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)
また、関連銘柄の決算が好調であることを踏まえると、先行きの業績が不安視されているわけではないほか、AIというテーマも否定されているわけでもないため、今週の株価下落は、短期間で織り込まれた過度な期待や割高感に対する警戒から売りが入ったものと考えられます。
従って、再びAI相場が息を吹き返す展開は十分に有り得そうです。来週11日(火)にソフトバンクグループ、再来週19日(水)にはエヌビディアがそれぞれ決算を発表する予定となっていますので、今後のAI相場復活のカギを握ることになります。
さらに、米主要株価指数の日足チャートを見ても、株価が移動平均線を下回ることなく推移しており、上昇トレンドが維持されています(下の図2から図4)。
<図2>米NYダウ(日足)の動き(2025年11月5日時点)
<図3>米S&P500(日足)の動き(2025年11月5日時点)
<図4>米ナスダック総合(日足)の動き(2025年11月5日時点)
上昇トレンドが崩れていないこと自体はポジティブではありますが、チャートの見た目では「調整が進んだ」といえるほど下落していないため、割高感がほとんど解消されていない可能性がある点には注意が必要です。
これまで息の長い上昇トレンドを描いてきただけに、今後もトレンドを継続していくには、少なくとも50日移動平均線あたりまでの株価調整が欲しいところです。
また、下段のMACDを見ると、MACDがシグナルを下抜けつつあるため、積極的に上値を追っていくような勢いが乏しくなっている様子もうかがえます。
従って、当面は株価の下落と反発が繰り返されやすい状況が続くかもしれません。
芽生え始めた相場の視点の変化
もっとも、AIを巡っては「巨額の投資に見合う収益を生み出せるのか?」「社債発行など、大規模な投資資金を調達することによる財務リスク」「過当競争による収益性悪化」「開発スピードの速さによる技術や製品の陳腐化のサイクルが短くならないか?」「AIインフラやサービスの過剰から安売り競争開始による利益率悪化」「AIの進展による社会問題の発生と対応するためのコスト増」など、懸念点は少なくはなく、今回の株価下落によって、AI相場に対する冷静な視点が芽生え始めた可能性があります。
<図5>米M7銘柄のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年11月5日時点)
上の図5は、2024年末を100とした「マグニフィセントセブン(M7)」銘柄のパフォーマンス比較の推移を示しています。
エヌビディアやアルファベット(GOOGL)など株価水準を維持している銘柄がある一方で、メタ・プラットフォームズ(META)が足元で株価を大きく下げています。
マイクロソフト(MSFT)やアマゾン・ドット・コム(AMZN)も含め、この5社は積極的にAI分野に巨額の投資を行っていますが、AI投資が収益につながるクラウド部門を持っている企業(マイクロソフト、アルファベット、アマゾン)が株価を保っているのに対し、クラウド部門を持たないメタ・プラットフォームズは、先日の決算で営業利益率が低下しており、AI開発のための先行投資が利益を圧迫している格好になっていることがその理由として考えられます。
<図6>米AI・半導体関連銘柄のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年11月5日時点)
こちらも決算を通じて明暗が分かれている格好ですが、好決算を発表したパランティア・テクノロジーが伸び悩んでいることから、やはり割高感への意識が株価の上値を抑えやすくなっている様子がうかがえます。
従って、今後は、AI関連企業が市場の高い期待に見合うだけの具体的な果実(業績や利益)を示せるかどうかが、より厳しく問われることになり、銘柄が選別される段階に入っていくことになるのと同時に、AI関連以外の業種や出遅れ銘柄への物色が広がっていけるかが、相場の焦点になりそうです。
AI相場は「まだ終わらない」?芽生え始めた視点の変化に注意(土信田雅之)
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