投資の「負け癖」は治るのか？名越康文先生が岐阜暴威さんの深層心理を暴く！

精神科医・名越康文（なこし・やすふみ）さんプロフィール

専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪精神医療センターにて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て1999年より独立。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析などさまざまな分野で活躍中。現在は相愛大学、高野山大学、龍谷大学客員教授。
「名越康文TV シークレットトークyoutube分室」はチャンネル登録者数約20万人。

岐阜暴威（ぎふぼうい）さんプロフィール

アラフォーの専業投資家＆YouTuber。ジェイコム株の大量誤発注事件を見たことをきっかけに「人生、一発逆転！」を狙って投資の世界へ足を踏み入れる。これまでの入金金額は5,000万円近くに上るが、トータルで2,500万円近く負けており、生涯収支は大幅にマイナス。握ったポジションがことごとく予想と逆に動くため、ネット上では「逆神」と呼ばれる。YouTubeでは、自身のトレードを隠すことなく公開している。
X：岐阜暴威 @gihuboy
YouTube：岐阜暴威

同じ失敗を繰り返す…誰か俺を止めてくれ！

岐阜暴威さん：始める前に一つお願いなんですが、今日は厳しい意見をバシッと言ってもらいたくて来たので、遠慮しないでビシバシ厳しくお願いします！　どんなキツイことを言われても受け止めます！

名越先生：お、カウンセリング前にそんなこと言う人、珍しいんですけどね。いいでしょう、厳しくいきましょう！

岐阜暴威さん：よろしくお願いします！

名越先生：僕、岐阜さんのYouTubeもXもいくつか見てきたんですけどね、資産状況スゴイことになってるのに、ご本人がめちゃめちゃ明るい人でビックリしました。珍しいですよこういう人（笑）。

事前に岐阜暴威さんのYouTubeを見てきてくれた名越先生。損失額と番組の面白さが比例する状態にビックリ＆番組としての完成度を大絶賛。

岐阜暴威さん：え、でも俺、今すごい落ち込んでるんですよ。7月にスイスフラン/円と金（ゴールド）で合計500万円くらい、1カ月で大負けしてるんです。

　8月に入ってからもそれを取り返そうとして焦って、トータルで800万円くらいの損失が出てしまって…。6月くらいまでは2025年の収支で600万円くらいプラスだったのに、たった2カ月でそれがチャラになってマイナス収支になってしまって、「俺何やってるんだろう…」って。

名越先生：そういうこと、けっこうよくあるんですか？

岐阜暴威さん：はい。俺、生涯収益をプラスにすることを直近の目的にしてるんですけど、勝ってるときはじりじり利益を増やして、生涯投資額の3,000万円にじわじわ近づくんだけど、2,800万円くらいまでくると、「もっと上いってやろう」って思って何かしらやらかして、短期間でドカーンと負ける、っていうのをここ3年くらい繰り返してるんです。

名越先生：う～ん。岐阜さん、正直に教えてほしいんですけど、投資のゴールってどこに定めてます？

岐阜暴威さん：生涯収支を取り戻そうと思うと、今まで失った3,000万円＋利益3,000万円で6,000万円には到達したいですね。

名越先生：あ、それ多分うそでしょ（笑）。実はもっと大きな額が頭の中にあるんじゃないですか？　だって今「6,000万円」って言った時の声って、感情がこもってないもん。AIの声みたい。ほんとのとこ、どれくらいの金額を目指してるんですか？

岐阜暴威さん：（ギクッとした表情で）……い…1億円？　億は超えたい…ですね。でもね、先生、俺は金額がどうとかよりも、幸せになりたいだけなんですよ。目指してるのは億り人じゃなくて幸せであって…。

名越先生：じゃあ、岐阜さんが「これくらいあったら幸せやな」って思う金額っていくら？　正直に教えて？

岐阜暴威さん：（焦りながら）…ひ…100億円…？

名越先生：やっぱりな…。自分でも意識してないけど、岐阜さんの奥には、100億円を目指してる、スケールの大きい別の岐阜さんがいるんですよ。

　本来100億円のところで勝負してるんだから、800万円とか3,000万円とか損したところで「100億円目指してるんだから、これくらい損したって当たり前」って無意識のうちに考えちゃってるんだと思う。だから「負けた負けた」っていいながらも負けた実感が薄い。

　でも常識で考えたら100億円って、一種、常識はずれな世界でしょ。その100億円の妄想の岐阜さんが、3,000万円の現実の岐阜さんの意識を引っ張っちゃってるんです。

深層にいる100億円スケールの男、魅力もあるが危うさも

岐阜暴威さん：確かに100億円とまではいかないけど、大金持ちになったらどうしようかな～っていう妄想はしょっちゅうしてるんですよ。今日もここへ来るまでに日本赤十字社の前を通ったんですけど、「お金持ちになったら日本赤十字社に数億円は寄付できるし…」とか考えてて。

名越先生：…スゴイな。自分はめちゃくちゃ負けてるのに、もうかったらやりたいことの第一番として「日本赤十字社に寄付」が出てくるところが普通じゃない。素晴らしい人格ですよ。100億円は持ってなくても、人格は100億円の器（うつわ）を持ってるということです。

　YouTubeでも視聴者さんに愛されてるし、今日も負けてるのにニコニコ元気いっぱいで、あなたは人を幸せにできる人ですよ。ただ、投資とお金に関しては完全に感覚が間違ってる（笑）。

100億円の器を持つ男！と称賛され、照れる岐阜暴威さん。負けっぷりも100億円スケールにならないために、名越先生に教えを乞う。

岐阜暴威さん：え、俺の周りの人は幸せかもしれないけど、俺は今、幸せじゃないですよ。負けて泣きそうですよ（笑）。俺が幸せになるためにはどうしたらいいんですか？

名越先生：まずは自分で「自分は無意識に100億円を人生の単位にしてる危ない男や」ということを自覚することです。

岐阜暴威さん：むむ…。

名越先生：岐阜さん、投資を始めたきっかけが「一発逆転」を狙って、ということなんですが、1億円にしろ、100億円にしろ、何年後にその「逆転」をしたいんですか？

岐阜暴威さん：今です、今！　たった今です！　この我慢のなさもダメなんだと思うんだけど（笑）。

名越先生：もし本当に今、勝ちたいなら、投資をするときに100億の危ない自分が自動的に立ち上がってくる「二重人格」をなんとか治さないとたどり着けないと思いますよ。そしてもし本当に100億円を達成したとしたら、あなたはたぶん目的を見失って「鬱（うつ）」になると思う。

　だから、今、岐阜さんはこの100億円を取り下げるか取り下げないか、人生で2回か3回かしかない、「転機」にいるんだと思う。

岐阜暴威さん：うーん。でも、この手の妄想を辞めてしまったら俺、現実と向き合えなくて耐えられないと思います…。

名越先生：全部やめる必要なくて、半分くらいは手元に必ず残して、残り半分で妄想癖のまま、100億スケールの大勝負をしたらいいと思うんすけどね。でもそれをやったら、ただのセコいオッサンでしかなくなるんやけどね（笑）。