小惑星が2032年に地球へ衝突する確率が3.1%に上昇、対策は?

世界中のネットワークで小惑星を見つけて追跡、新たな一手は 詳しく解説

2025.02.19
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
NASAには、最近発見された「2024 YR4」のような地球近傍小惑星を追跡する望遠鏡のネットワークがある。広域赤外線探査衛星「WISE」は2024年8月までこれらの観測所の一つだった。WISEは本来のミッション終了後、小惑星と彗星の追跡に再活用されている。今後数年間のうちに、NASAは小惑星の検出に特化した赤外線宇宙望遠鏡の打ち上げを目指している。(Illustration by NASA/JPL-Caltech)
NASAには、最近発見された「2024 YR4」のような地球近傍小惑星を追跡する望遠鏡のネットワークがある。広域赤外線探査衛星「WISE」は2024年8月までこれらの観測所の一つだった。WISEは本来のミッション終了後、小惑星と彗星の追跡に再活用されている。今後数年間のうちに、NASAは小惑星の検出に特化した赤外線宇宙望遠鏡の打ち上げを目指している。(Illustration by NASA/JPL-Caltech)

 小惑星は日常的に地球の近くを通過しており、そのほとんどは全く問題ない。だがまれに、地球と衝突する可能性がわずかにでもあるため、潜在的な脅威として警告されることがある。新たに発見された地球近傍小惑星「2024 YR4」はその一つだ。大きさが約40~90メートルで、今のところ、2032年12月22日に地球上のどこかに衝突する確率が、NASAの2025年2月18日時点の計算で3.1%とされ、発見当初の確率(1%超)よりわずかに上がっている。

 誤解のないように言っておくと、慌てて頑丈なシェルターにお金をかける必要はない。この小惑星は、たとえ推定のうち最も小さいサイズだとしても、直撃すれば都市を壊滅させる可能性があるため、監視した方がよいことは確かだ。しかし、天文学者がより多くのデータを集めるにつれ、地球との危険なランデブーの確率は、ほとんどの場合、おそらく急激にゼロに近づくだろう。

 今回の発見は、地球を致命的な宇宙岩石から守る「プラネタリー・ディフェンス(惑星防衛)」のシステムが、順調に機能していることを示している。

 世界中の天文台が、地球近傍天体の発見に貢献している。米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)はともに、現在までに発見された危険になりうる小惑星と彗星をすべて、極めて正確に追跡できる自動ソフトウェアプログラムを開発してきた。

 惑星防衛の重要な原則の一つは、地球に向かってくる小惑星を、地球にぶつかる前に発見することだ。NASAとESAや彼らの同僚らが、どのようにしてそれを実現しているのかを紹介しよう。(参考記事:「続報:NASAの「地球防衛実験」、小惑星の軌道変化を確認」

【動画】「2024 YR4」が2024年末に発見された後、チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)が、2025年1月上旬にこの小惑星の画像を撮影した。これらの画像は、小惑星がフレームの中心に固定されたままになるように調整されており、背景の星は動いているように見える。(ESO)

小惑星の偵察隊と監視隊

 地球上のどの望遠鏡も、惑星防衛に貢献できる。もし地球上のどこかの天文学者が、小惑星(または彗星)らしき天体を発見したら、惑星防衛コミュニティーに報告すればよい。

 しかし、NASAは、未発見の小惑星や彗星を探すことに特化した望遠鏡のネットワークを世界中にもっている。チリにある望遠鏡は、NASAが出資する「小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)」の一部であり、2024年12月27日に「2024 YR4」を発見した。

 天文台が未知の小惑星を発見すると、米マサチューセッツ州ケンブリッジにある小惑星センター(MPC)に報告される。そこは、天文学者の掲示板のようなものだ。そして、興味を持った天文学者は、その最初の観測結果を利用して、自分の望遠鏡で追跡することができる。

次ページ:新たな天体が発見されると……

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
 日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

宇宙最前線

未踏の世界を切り開く3つのプロジェクト

塗り替えられる宇宙像。これから先も、どんな驚きが待ち受けているか誰にもわからない。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕〔電子版あり〕

定価:1,650円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加