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今こそ買い?「アサヒグループ株」サイバー攻撃の影響と株価見通しを長期投資のプロが分析=栫井駿介

現在、アサヒグループホールディングス(アサヒGHD)は、深刻なサイバー攻撃の影響を受け、出荷業務が滞るという状況に直面しています。この攻撃は9月末に発生しましたが、現在も売上(出荷量)はそれまでの水準の約1割程度にしか戻っていないという危機的な状況が続いています。

こうした厳しい状況にもかかわらず、アサヒGHDの株価は、NISAの買い付けランキングで上位に食い込んできたことが確認されています。多くの個人投資家の間で、「これはまさに押し目買いのチャンスではないか?」という期待が高まっているのです。今回は、アサヒGHDが今後回復する可能性や、今回の事象が投資市場全体に何を意味するのかについて深く掘り下げていきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

ランサムウェア攻撃の詳細と甚大な業務影響

今回の事態は、9月29日にランサムウェアによる攻撃が国内の基幹システムで発生したことから始まりました。これはロシアを拠点とするランサムウェア集団「Qilin(キリン)」による攻撃であると判明し、受発注および出荷業務が全面停止に追い込まれています。ランサムウェアとは、企業のシステムを乗っ取り、データを暗号化して読み取れない状態にした上で、復旧のために身代金を要求してくるタイプの攻撃です。

被害拡大を防ぐため、アサヒGHDはシステムを遮断する対応を取りましたが、その結果、顧客とのメールのやり取りなどもできなくなり、現在、受発注は電話やFAXで対応せざるを得ない状況です。この対応の結果、11月4日時点でも売上の1割程度しか出荷できておらず、10月はほぼ丸々この状況が続きました。

さらに、10月14日には個人情報流出の可能性が公表されました。攻撃集団Qilinは、身代金を払わなければ情報を流出させると脅迫し、その証拠となり得る画像をダークウェブに公開するなど、脅しをかけている状況です。加えて、この事態により決算発表の延期も示唆され(後に発表された)、市場の懸念が拡大しています。

投資家の動向:なぜ今、「押し目買い」が注目されるのか

株価は攻撃発覚以降、ずるずると下落傾向にあります。

アサヒグループホールディングス<2502> 日足(SBI証券提供)

アサヒグループホールディングス<2502> 日足(SBI証券提供)

9月頭からの下落幅で見ると15%程度下落しており、この下落を見て「安くなったから買い」と考える投資家は少なくありません。

バリュエーション的にも、アサヒGHDは割安な水準に見えます。PBR(株価純資産倍率)は0.95倍、そして利回りは3.08%です。

実際に、SBI証券の10月27日から10月31日までの買い付けランキングでは、アサヒGHDは7位に浮上しました。このランキングでは、特別注意銘柄に指定されたニデック(1位)や決算で株価が下がったオリエンタルランドへの買い付けも上位にあり、個人投資家が下がった銘柄を「押し目買い」として買う傾向が強いことが伺えます。

過去のサイバー攻撃事例との比較:アサヒGHD固有のリスク

過去のサイバー攻撃の事例を見ると、一時的な混乱はあっても、最終的には業績や株価が回復するケースが多く見られます。

例えば、2024年にランサムウェア攻撃を受けたKADOKAWAは、損失36億円を計上しましたが、約2か月で段階的に復旧を果たし、株価は一時下落後、その後は上昇しプラスで推移しています。また、2022年にはトヨタの関連会社である小島プレスが被害を受け、国内工場が1日停止する(1.3万台の生産に影響)事態に至りましたが、株価への影響は軽微でした。さらに、2024年に個人情報流出も伴う被害を受けたHOYAも、業績への影響は限定的であり、株価は一時下落したもののその後持ち直し、現在では事態発生時を大きく上回る水準になっています。これらの事例から、復旧作業と対策を打つことで、業績や株価はやがて回復するのがこれまでの一般的な経緯でした。

しかし、アサヒGHDの状況は過去の事例と比べて、ダメージが甚大になる可能性があります。

Next: 株価はさらに落ちる?回復する?長期投資にプロの判断は…

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