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ニデック、特別注意銘柄に…むしろ買い?不正会計の背景と今後の投資判断を徹底解説=栫井駿介

日本の主要企業であるニデック(Nidec)<6594>について、現在の状況を解説します。ニデックは現在、特別注意銘柄に指定されています。この指定は頻繁に出るものではなく、万が一の場合には上場廃止に至る可能性も騒がれています。この結果、ニデック株は日経平均やTOPIXといった主要な株価指数から除外され、株価は大きく下落しています。

この危機の根本には、不正会計をはじめとするいくつかの不祥事があります。本記事では、ニデックに今何が起きているのかを整理し、今後の展望、投資の是非、そしてこのような不正な状況を投資家が見抜く方法について解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

特別注意銘柄指定の詳細

ニデックが特別注意銘柄に指定されたのは、2025年10月28日付です。2024年以降で見ても、わずか6銘柄しか指定されていない中で、時価総額が何兆円にも及ぶプライム市場の企業にこの指定が出たことは、極めて大きな問題と言えます。

最大の原因は、2025年3月期の有価証券報告書を期限内に提出できなかったことです。本来6月に出るべき報告書が、イタリアと中国における問題が原因で提出不可能となっていました。

約3〜4ヶ月の遅延を経て報告書は提出されましたが、ニデックに雇われていた監査法人PwCは、その会計が正しいという意見を表明できない(意見不表明)という事態になりました。監査法人の「お墨付き」を得ていない報告書を提出した結果、ニデックは特別注意銘柄に指定されたのです。

ニデック<6594> 週足(SBI証券提供)

ニデック<6594> 週足(SBI証券提供)

不正・不適切会計が起きた現場と第三者委員会の動き

ニデックの子会社で発覚した具体的な問題は、イタリアと中国の2拠点にまたがります。

<イタリア子会社での問題:関税逃れ>

イタリアの子会社では、関税逃れを図ろうとした疑惑があります。

本来は中国で製造された製品を、イタリアの子会社がアメリカに輸出する際、「これはイタリアで製造されたものだ」という虚偽の情報を申告したとされています。これが発覚したことで、これまで支払っていなかった関税の支払いが求められる状況となりました。

<中国子会社での問題:費用の先延ばし>

中国では、約2億円の購入一時金に関する不適切会計の疑いが指摘されています。これは主に、費用を計上すべきタイミングで計上せず、先送りしたこと(コストの先延ばし)が原因です。

<重要な論点:経営層の関与>

現時点で発覚している不正会計の金額は、ニデック全体の規模から見れば、会社経営の屋台骨を揺るがすほど大きなものではありません。

しかし、本当に問題なのは、これらの子会社で起きた不正に、ニデックの本体や経営陣が関わっていたのではないかという疑惑が浮上している点です。現在、この事実関係を明らかにするため、弁護士などが参加する第三者委員会が立ち上がり、精査を行っている状況です。

なぜ不正は起きたのか?:コスト至上主義の企業文化

今回の不正の背景には、ニデック特有のトップダウン型でコストに厳しい企業文化があります。

<永守流の強烈なプレッシャーと文化>

ニデックは、永守会長(当時)による強烈なリーダーシップの下、M&Aを駆使して成長してきました。その経営手法は、倒産寸前の会社を安く買い取り再生させるというものでしたが、同時に徹底したケチケチ経営でも知られていました。

  • 極端なコスト管理
  • 予算を使う際には、長森社長/会長が1円単位で決済する文化があったとされています。

  • 高すぎる目標
  • 経営陣からは「15%成長を維持せよ」という強力なプレッシャーがあり、高い成長目標が恒常化していました。

  • 目的達成の優先
  • 「手段より目的達成が優先された」結果、数字を作るためのプレッシャーが強まりました。

Next: 不正の温床はまだある?投資家はどうすれば見抜けるのか

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