F1レッドブルの角田裕毅(25)が電撃解雇される可能性が高まる中で、退団した際の〝救世主〟としてある人物が注目されている。早ければ夏休み中の更迭がウワサされる角田は、今季終了まで残っても契約満了となる来季以降はF1での活動が厳しい状況。ただ、移籍先として一縷(いちる)の望みとなりそうなのがハースだ。日本人指揮官の小松礼雄代表が率いていることに加え、昨秋からトヨタ自動車が業務提携したことで豊田章男会長の〝鶴の一声〟も期待されている。

 角田は4月の日本グランプリ(GP)から緊急昇格したが、結果を出せないまま低迷を続けている。特に近走は不振ぶりが際立っており、6月末のオーストリアGPでは親会社レッドブルのお膝元で上位進出が厳命されていたが、予選Q1(1回目)敗退の18番手と大きく出遅れ、決勝でもフランコ・コラピント(アルピーヌ)に対して無謀な追い抜きを仕掛けてペナルティー。結局、完走中最下位となる16位に撃沈した。巻き返しどころかさらに評価を落とし、電撃解雇へのプレッシャーが高まっている。

 夏休み中の緊急更迭も取りざたされるが、たとえそれを回避して今季終了まで延命しても、来季以降は契約がなく退団が確実。そして各チームにシートの空きはなく、リストアップされている新チームのキャデラックもセルジオ・ペレスらベテランや、チームの地元である米国人ドライバーが優先される方針で食い込むのは現実的ではない。

 そうなると〝F1引退〟が濃厚に。英公共放送「BBC」も角田の来季以降のF1残留は厳しい見通しを報じている。だが、まだ希望はありそうだ。大手広告代理店関係者は「角田選手は世界的に人気があり、ドライバーとして商品価値がある。ハースはトヨタがバックアップしているし、角田選手の魅力を見込んで豊田会長が動くこともあるのではないか」と指摘する。

角田の命運握る? トヨタの豊田章男氏
角田の命運握る? トヨタの豊田章男氏

 トヨタはF1に2002年から本格参戦して09年限りで撤退していたが、昨年10月にハースとの提携を発表。パワーユニット(エンジンなどの動力装置)の供給こそ行わないが、車両開発に技術者を派遣するなど強力タッグを組むことになった。モータースポーツのファン拡大にも寄与する方針を示しており、提携発表会見で豊田会長は「F1撤退で日本の若者が一番速い車に乗る道筋を閉ざしてしまっていたことを、心のどこかでずっと悔やんでいたのだと思います」とF1という舞台への思いを語っている。

 角田がクビになればF1に日本人ドライバーが不在となり、近年高まっていたモータースポーツ人気の熱が再び冷めることにもなりかねない。そこで豊田会長の〝英断〟に期待が寄せられているのだ。

 ハースを巡る状況も、角田の移籍を後押ししそうだ。フェラーリでルイス・ハミルトンの去就が不透明になっており、代役候補として昨季まで所属していた現ハースのオリバー・ベアマンの復帰が浮上。枠が空けば、実績や経験のある角田が補強ターゲットになってもおかしくない。

 捨てる神あれば拾う神ありとなるか…。角田の去就問題は風雲急を告げている。