福井県の杉本達治知事が25日、取りざたされていた県職員へのセクハラ疑惑で辞職の意向を表明した。昨今、全国の首長がさまざまな疑惑に徹底抗戦しているだけに「潔い」「他の首長も見習ってほしい」とセクハラ辞意も好意的に受け止められる珍現象が起きているなか、あの首長も杉本氏に続くように辞意を表明している。

 杉本氏のセクハラ疑惑は4月に「知事から不適切な内容のテキストメッセージが送られた」との通報が県が設置した外部の相談窓口にあり、弁護士による特別調査委員会が6月に立ち上げられていた。県側は先月に事案を説明し、杉本氏は続投の意思を見せていたが、この日、調査委員会の報告が来年1月以降になることを受け、「予算審議などで支障が出る。知事として適切でない」「セクハラに当たると自分でも認識した」と早々と白旗を上げた。

 セクハラに当たるとされるメッセージの内容や職員の性別や年代なども明かされていないが、杉本氏は「一緒に仕事をしている仲間とはざっくばらんに付き合ってきた。やり取りの中で、軽口、ふざけて書いていたが、今思えばセクハラだった」と話し、相手は特定の1人ではなく、複数人に上るとみられている。

 地元の経済界や県民からの支持は高かっただけに会見では報道陣から「残念」「出直し選に出るべきとの声もある」と再起を期待する声も出たほどだ。ネット上では「他の首長にもツメのアカを煎じてのませたい」との声が相次いだ。

 杉本氏の事案は先月に表に出ていただけに辞職まで時間を要したことに判断遅れを指摘する声もあったが、「人間として未熟だった。そのことで気づきがなかった。深く反省している」と頭を下げ、詰問されるまでには至らなかった。セクハラ事案での辞意表明会見で、紛糾せずに穏便に済んだ特異なケースになったともいえそうだ。

 一方、ラブホ騒動の群馬・前橋市の小川晶市長もこの日、議長に退職届を出していた。市議会では小川氏への不信任決議が近く可決される見通しだったが、土壇場で自ら決断した形だ。不祥事報道があっても自分からは辞めない首長が続いていただけに驚きをもって受け止められている。