高市早苗首相が台湾有事に関して武力行使を伴えば存立危機事態になり得ると発言したことを受けて日中関係がますます緊迫の度合いを高めている。19日には木原稔官房長官が中国外務省局長の〝両手ポケット〟映像を問題視し、事前調整がなかったと中国側にクレームを入れた。この両手をポケットに入れる行為に対し、日本のSNSではネガティブな反応が相次いでいる――。

 日本の外務省から金井正彰アジア大洋州局長が訪中し、中国外務省の劉勁松(りゅう・けいしょう)アジア局長と18日に会談。これに関連して、両手をポケットに突っ込んで不遜な態度を取る劉氏に対して、金井氏が頭を下げているように見える映像や画像が報じられていた。

 局長級協議後の雑談シーンと思われるが、中国国内のSNSで拡散され、「いい写真だ」などと好意的に受け止められているという。一方、木原氏は「日本と調整されない形でプレスアレンジが行われた」と、中国側が意図的に〝両手ポケット〟の場面をマスコミに撮らせたと主張。中国側に申し入れを行ったと明かした。

 ポケットに両手を入れて対応する映像は、日本がわざわざ中国まで謝りに来たという印象をでっち上げるための演出だった可能性があるわけだ。中国国内向けのプロパガンダとしては効果があるのかもしれないが、問題の解決はより遠のいた。

 永田町関係者は「両手をポケットに突っ込んでふんぞり返るというのは日本では好まれません。かつて岸田政権で官房副長官を務めていた木原誠二氏が両手をポケットに入れていたことで大バッシングに遭いました。このことで謝罪に追い込まれています」と振り返った。

 2023年1月、岸田文雄首相(当時)の海外出張に木原氏も同行。岸田氏が取材対応する後ろで木原氏がポケットに両手を突っ込んで立っている姿が報道され、炎上していた。

 当時のSNSでは「このポケットおじさんって誰なのか知らないけど、岸田総理に失礼ですよね」「木原官房副長官、ガラ悪い以外に言葉がない」「後ろのおじさんはVシネの脇役か何かの人?」などと批判が殺到していたのだ。

 劉氏に対しても同じで日本のSNSでは「礼儀も品もない」「人として恥ずかしくないのかね」「世界的に見て逆効果」とネガティブな反応ばかり。俳優の三田村邦彦もXで「なんですか! この無礼な態度!」と激怒した。日本では公式の場で〝両手をポケットに入れる〟のはかなり嫌われる行為なのだ。

 中国はすでに日本への渡航自粛を国民に求めていたが、さらに19日、日本からの水産物輸入を事実上停止すると日本側に通知。東京電力福島第1原発の処理水放出のあった23年にも同様の対応をしており、再びというわけだ。

 中国による経済的な圧力に加え、両国の心理的なミゾも深まっている。今後どのように歩み寄るのだろうか。