お互いに高校生だった頃から熱心に追いかけてきたアイドルが結婚していたことを知ってから、泣くまで74時間。自分は神山くんが想定し配慮したのであろう土日休みの会社員の一人で、休み明けの一日を慣れた仕事ミスりまくりながら乗り切って、家帰ってご飯食べてシャワーも浴び終えて、寝転がってケータイ開いて、ファミクラウェブを開いた21時35分。21時に更新されたブログを読んで、噛み締めて、泣いた。やっと。
珍しく2日連続で更新されたどうでも良い内容のブログから、神山くんの不安を痛いくらいに感じ取ったからだった。
それではじめて、自分は何が寂しかったのかわかったからだった。
神山くんの結婚報告は、大多数から「完璧」「これなら祝える」と言われた。そういう物言いのよしあしは置いとくし、わたしはここ数年、神山くん以外の人の結婚は前後の週刊誌とか報告文章の書き方とか含めて心底どうでもよく、とくに嬉しいとも悲しいとも思ってこなかったので、どうだったら完璧で、どうだったら祝えないのかは状況から察するのみなのだが、
この「完璧」で「祝福される」結婚がわたしには、神山智洋という「人間」には後にも先にも、触らないでくださいっていう強い拒絶のように思えた。
完璧で究極のアイドルを全うし生きてきて、これからもそうして生きていく覚悟が固まっている神山くんにとって、人間の神山智洋は本当なら触ってほしくないもので、この先何事もなかったかのように、またアイドルの神山智洋を見せるし、それだけを見て欲しい、という風に見えた。そう感じた。というかまあ、実際そうだろう。
だから、わたしは金土日と、おめでとうと言わなかった。思っていなかったわけではない。ただ、ああ、極力触らないでほしいと思っているんだ、と思ってしまったから、言えなかった。神山くんの嫌がることをしたくない、と思った。
思っていないと推測されるのは嫌だったので、昨年出した「神山くんの幸せを願ってる、恋人がいても嬉しく思うし、安心して欲しい」という内容のファンレターをインターネットに掲載した。
日曜の17時に更新されたブログを読んだ時は、思った通りだと思った。きっと金曜の夜に公表して、日曜にブログを通常運転で更新することを前から決めていて、そのとおりにアイドル神山智洋として生きているのだと。
神山くんがこういう素朴な内容のブログを2日続けることはすごく珍しい。
状況が状況だからそう感じるだけでは、と思われるかもしれないが、とにかくわたしは
人間でちゃってる!
気付いて!
と思った。
人間だもんね ごめんね
泣けてきた。
そこからはもうずっと泣いていて、火曜の仕事も泣きながらやった。いつどうしたのと聞かれると不安だったが、そっとしておいてもらえた。社長室からは音量デカすぎるドジャースがずっとはっきり聴こえていて、延長18回って聞こえた時は、思わず延長18回!?てケータイ開いて呟いた。
神山くんが、普段だったら更新しないようなどうでもいい話を2日続けて更新したから、人間すぎて そんなの
じゃあおめでとうってすぐに言ったほうがよかったの?言ってよかったの?そしたら神山くん安心できたの?
ノータイムで直接伝えられるわけじゃないけど、いやでも、インスタの最新投稿のコメント欄はおめでとうで溢れてて、わたしもそうするべきだったのかな、今からでも送るべき?
答えは出ない。わたしも神山くんも、どっちもだと思った。神山くんはアイドル神山智洋に強い自覚と誇りを持っていて、だからこちらからその向こうに触れるべきではなくて、でも事実、そこには不安に思いながら、ファンに優しくありたいと思い続けている神山くんっていう、ずっと見てきた、よく知ってる、人間がいる。
「完璧」なこれまでと文章だって、なにも拒絶なんかじゃなくて、それが「完璧」な、「ファンに最も配慮した在り方」がそうとされるから、そうしてくれたってだけなのかもしれない。ずっと、完璧に、そういう人だった。
アイドルの結婚がショックなのは、何も知らなかったことを思い知らされるからだといつだったかに見た。けど、わたしは自分に知れる限りの神山くんのことを全部知っていると言い切れるし、先述したように大切な人がいるということも察していたので、全然何も知らなかったなんてことはないなと考えていた長い夜。
事実、だからショックなのか、と自問するとしっくりこなかったし、そもそもショックを受けているのかもよくわからなかった。涙も74時間出なかったし。
大丈夫?ときいてくれる人もいたが、きかれることで堰を切るとかでもなく、大丈夫だった。
でも本当はずっと泣きたかった。けど、なんで泣きたいのかわからないことには泣けなかった。論拠厨すぎる。
まだまだ考えてしまうことはいくらでもあるけど、とりあえずひとつ整理できたことは、
これから先もずっと、ここにある線を実感しながら生きることが
いやおめでとう言ってる人いっぱいいるけど、でもわたしは、あの文章で、ずっと見てきたアイドル神山智洋が、それを求めてるって、喜んでくれるって、思えなかったよ。
それがすごく寂しかったよ。
傷付いて、おめでとうって言えない人、その時泣いている人。そういう人のことをまず一番に考えて、そうしてくれたのかもしれません。
普通に考えたらそうなのかもしれない。
どちらにせよ、書いてある以上のことを想像するのはよくないんだけど。