2025-11-14

もうすぐクリスマス

朝、会社更衣室でロッカーを開けると金属の匂いがした

昨日も感じたし、その前も感じた。今日の少しだけ濃い気がした。

気のせいだと自分に言い聞かせ、作業服羽織る。

朝礼で名前を呼ばれても返事をする者は少なく、俺もその一人だった。

ライン作業は単純だ。金属片をレーンに乗せて傷がないか確認し箱に入れる。

単純だから、そのぶん考え事が増える。

前に勝った日のこと。風俗嬢刺青のこと。帰省したときの姉の表情。

そんなものを一巡させては、また目の前の金属片を見る。

休みスマホを触る。誰からメッセージは来ていない。

広告ばかりが溢れる画面を眺めながら。思う。

人生広告みたいに勝手に流れていけば楽なのに。

弁当唐揚げが冷めていた。

仕事帰り。駅前パチンコ店の光が目に入り、誘われるように入る。

負けるだろうと分かっていながら足は止まらない。

椅子に座り玉が流れる音に包まれると世界輪郭がいつも曖昧になる。

喧噪の中に居ると落ち着く。そう思うようになるのはいつ頃からだろうか。

その日は−42kでやめた。

帰り道。コンビニの袋がブロック塀にぶつかり乾いた音がした。

家に帰って弁当を流し込み、ソファに崩れ落ちた。

胸の奥が少し痛む。健康診断問題なかった。

医者はこの痛みを知らない。

土曜の夕方、馴染みの風俗店へ向かった。

勝ったわけではないが、行かなければならない気がしたのだ。

受付を抜ける。黒革のソファ

待っている間、ふいに姉の姿が頭をよぎった。

どうしてこんなときに、と思う。

嬢が現れた。

新しい子ではない。

俺のことを覚えてもいないだろうし、覚えている必要もない。

部屋に入る。服を脱ぐ。嬢の刺青が視界に入った。

顔に刻まれ笑顔刺青

お仕事、何してるの?」

営業です」

いつもの嘘だった。

すると嬢は少し笑って「そうなんですね~」と返す。

俺はその軽さに救われたような、見放されたような気持ちになった。

行為の途中に天井を見た。

嬢の動きが止まっても気づけないほど、意識が浮いていた。

大丈夫?」

嬢が不安そうに聞く。「うん」と答えた。嘘でも本当でもない返事だった。

ベッドに入ると天井が白く滲んだ。

昼間の工場蛍光灯風俗店電球。家の天井が混ざり合う。

今日が何日だったか思い出せないまま。俺は詩集を枕元に置いた。

目を閉じる。

祈ることをやめた人間は、どこへ行くのだろう。

俺はそのまま眠った。

明日もまた朝は来るだろう。

祈りの届かない部屋で。

  • こちらの仕事を聞いてくる嬢なんていない。つまりこれは生成AI

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