〝疑惑の判定〟が波紋を広げている。大相撲九州場所13日目(21日、福岡国際センター)、横綱大の里(25=二所ノ関)が新関脇安青錦(21=安治川)を寄り切って首位を守った。安青錦が土俵外に飛ぶ間に大の里が前に倒れたが、審判から物言いはつかず。NHKの大相撲中継では、解説の舞の海秀平氏(元小結)が「物言いをつけても良かったのでは」と指摘したほど微妙な勝負だった。

 一方で、高田川審判長(元関脇安芸乃島)は「(物言いを)つけようがない。(安青錦は)飛んでいるし、大の里がふっ飛ばしていた。きわどくも何ともない」と説明。当事者の大の里は「(土俵際は)勝ちかなと。少し自信はあった」と振り返り、安青錦も「土俵の外に飛んでいたので。自分の中では負けている」と潔く敗北を認めた。

 ただ、物言いをつけなかった審判の判断には、角界内からも疑問の声が上がっている。かつて審判を務めていた親方の一人は「あれは良くない。最低でも、物言いをつけて確認しないといけない場面だった。協議をして勝負の結果が変わらなかったとしても(審判長が観客に)説明することが大事。あれでは、見ているお客さんが納得できない」と苦言を呈した。

 大の里と安青錦による結びは、今場所最大の注目カードだった。首位で並ぶ2敗同士の直接対決。優勝争いだけでなく、大関取りを目指す安青錦にとっては、今後の力士人生にも大きな影響を及ぼす大一番だった。今回の〝物言いスルー〟は、見ている側にもすっきりとしない印象を残してしまった格好だ。