東京都足立区で24日午後0時半ごろ、11人が死傷するひき逃げ事件が発生し、80代男性の死亡が確認され、20代女性が心肺停止となっている。ひき逃げした車は赤信号を無視し、歩道に乗り上げ人々を次々にはねたという。車が止まると乗っていた男は逃走。同日夜になって警視庁は車を盗んだ窃盗の疑いで同区に住む男(37)を逮捕した。現場には暴走の衝撃を伝えるものが残されていた。
3連休の最終日の真っ昼間に事故は起きた。車は国道4号線(日光街道)を南から北に走行。足立区役所あたりで赤信号を無視し横断歩道に突っ込み、歩道に乗り上げるなどしながら次々に人をはねた。目撃者によるとガシャーンと大きな音がしたという。トラックなどほかの車にぶつかる玉突き事故も起こしており、11人が巻き込まれた。車が止まると男は乗り捨てて逃走したという。
車は環状7号線と国道4号線が交わる梅島陸橋の手前で止まった。フロントガラスが割れ、ボンネットは大きくゆがんでいたという。車が止まったと思われる付近の街路樹は根元から折れ、少し南の植え込みには海抜2メートルと書かれたロケット型消火器格納箱がこれまた根元から倒れていた。粉砕されていたと言ってもいいほど砕かれ、消火器が飛び出していた。
少し南にも同じタイプの消火器格納箱があったが、こちらも倒れて根元から掘り起こされていた。暴走した車が突っ込んだか、玉突きする形で別の車がぶつかったと思われるが、事故の衝撃の強さを物語っている。
近所住民は事故直後の様子を「足立消防署や区役所のあたりで車道に人が倒れていて、警察らしき人たちが取り囲んで対応に当たってました。そこから北にも車道に人が倒れていて、3人はいたと思います。車道に倒れているということは、車が歩道に入ってきてはね飛ばされたのでしょう」と振り返った。車が止まった場所と区役所はだいたい300メートルの距離がある。この間、車は暴走していたわけだ。
消火器格納箱の倒れ具合などから察するにかなりのスピードを出していたと思われる。「この辺りに何十年も住んでいるけどこんな事故はなかった。暴走して歩道に乗り上げるなんて避けられないから怖いですよ」と近所住民はおびえた。現場となった道路は幅が広く、真っすぐで見通しは良い。歩道も広く、乗り上げることがそもそも想定外だ。
ひき逃げに使われた車は近くの自動車販売店で展示されていたものだった。事故の約2時間前に販売店店員から「展示車が盗まれた」と通報があり、パトカーが追跡していた。ひき逃げをした車はナンバーが「認定中古車」だった。
警視庁は販売店から車を盗んだ窃盗の疑いで男を逮捕。男は「試乗するために店から出て走った」と容疑を否認している。自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)と道交法違反(ひき逃げ)容疑についても捜査を続けている。












