■『15％で打ち止め』はどこから出た話か

概要

• 相互関税の税率は日本政府の口頭説明を唯一の根拠にメディアへ拡散した。
• 米大統領令は「日本へ追加15％課税」と規定し、打ち止め条項は存在しない。
• 情報の乖離が市場に混乱を招き、GDP試算で▲0.7％押下げまで取り沙汰された。

時系列

• 2025/07/23　日米首脳会談後、政府交渉団が「自動車を含む関税は15％上限」と記者団に説明。

- 出典：ロイター https://www.reuters.com/business/trump-strikes-tariff-deal-with-japan-auto-stocks-surge-2025-07-23/

• 同日　NHKが速報テロップ「政府関係者 自動車関税も15％に引き下げで合意」。

- 出典：NHKニュース７アーカイブ（7月23日放送）

• 2025/07/31　米大統領令「Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates」公表。Annex I に Japan 15％と記載、Section1 で“additional duties”と明言。

- 出典：White House https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/further-modifying-the-reciprocal-tariff-rates/

• 2025/08/06　ホワイトハウス高官が記者ブリーフィングで「15％は追加であり自動車にも適用可能」と発言。

- 出典：共同通信 https://www.47news.jp/12979399.html

• 2025/08/07　米税関CBPがCSMS #65829726を通知。自動車（HTSUS 9903.01.15）を相互関税対象外とし、実効税率は27.5％据え置き。

- 出典：CBP Cargo Systems Messaging Service

政府リークの問題点

• 交渉内容を文書化しないまま「合意」を既成事実化。
• 記者クラブ経由で一斉配信、NHK含む全社が速報。裏取りは米公文書公開後にずれ込んだ。
• 法令上の根拠が薄いまま市場が織り込んだ影響は、試算でGDP▲0.7％。

報道別要約

• 国内主要紙：政府説明を踏襲し「15％で決着」と報道、8月7日付で修正記事。
• 海外通信社：ロイター・ブルームバーグは当初より「米側文書に打ち止め記載なし」と指摘。
• 放送局：NHKは速報内容の訂正をテロップでは行わず、夜の番組で「見解の相違」を説明。

今後の注目点

• 大統領令にEUと同等のノースタッキング条文を追加できるか。
• CBP暫定規則がFederal Registerに掲載される際、相互関税対象外リストを固定化するか。
• 日本政府が文書交渉を怠れば、いつでも「追加15％」の復活余地が残る。

まとめ

『15％で打ち止め』という数字は、日本政府発の口頭説明に依存した情報であり、米側公式文書は一行も保証していない。NHK速報を含む報道の連鎖は、そのまま市場と政策判断に影響を与えた。文書化なき外交はリスクそのものである。

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