若いころ、女の子が笑ってくれたり、急に怒ったりすることがあった。
窓に映る自分の顔を見ながら、なんとなく落ち込んだ。
それでも、仕事はそこそこ出来ていたと思う。
図面を仕上げ、納期を守り、現場で叱られても次の日には立て直した。
そういうことの積み重ねが、男としての“筋”だと思っていた。
けれど、時代が変わった。
いまは「会話ができる男」が求められる。
返事が遅ければ気持ちが冷めたと見なされる。
便利な時代になったのかもしれない。
だけど、なんだか人の中身よりも“言葉の表面”ばかりが評価されるようにも見える。
朝から晩まで働いて、頭の中が仕事でいっぱいの二十五歳の労働者に、
むしろ高くなっているようにも見える。
けれど、本当の生活って、そんなに華やかじゃない。
小さく息をつく――その瞬間にこそ、
人間の素顔が出るんだと思う。
手のひらのタコが、その人の誠実を語っている。
最近は、年収七百万円くらいが希望なんだそうだ。 少し前までは一千万円が理想だったと聞く。 それでも十分、夢のような数字だ。 「どこの部長を探してるんだ」と思わず呟いた。 き...