娘が生まれて半年ほど経ったころ、知人から小さな猫を譲り受けた。
掌にすっぽり収まるくらいのキジトラで目の色がミルクティーみたいに薄かった。
娘とほぼ同じタイミングでハイハイを覚えて、ふたりして床の上を移動してた。
そのうち猫のほうが娘のあとを追いかけるようになって、娘はそれを見てケラケラ笑う。
あれから三年。うちは夫が主夫をやってる。稼ぎ頭は私だ。
仕事は大変だけど、家のドアを開けた瞬間――天国になる。
靴を脱ぐ間もなく、ちょこちょこと足音が近づいてくる。
「おかえりー!」と娘の声。その隣で猫が、まるで同じタイミングで「にゃー」と鳴く。
玄関マットの上でちょこんと並んで座ってる。
小さな頭がふたつ、こっちを見上げて微笑む。
もうそれだけで今日の嫌なことも全部どっかに消える。
夫がキッチンから「手洗ってきてねー」と笑って言う。
奥からはカレーの匂い。
猫は娘の足元をくるっと回って、娘は猫の背中を撫でて、ふたりともこっちを見てニコニコしてる。
なんだこれ。天国じゃん。
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