2025-11-13

Suicaのペンギン2026年度末で引退するというニュース

昨日ネットで見た。

そしたら、ふと思い出した。

2週間前に、そのペンギンから飲みに誘われたんだ。

Suicaのペンギンの中身の人とか、関係者とかじゃなくて、本当にペンギンが飲みに誘ってきた。

どういうことかっていうと、説明が難しいんだけど。

新宿駅銀行ATMの近くに、Suicaのペンギン銅像がある。

俺は毎日その銅像を見かけるんだけど、その日は何か様子がおかしかった。

銅像がこっち見てる。

いや、銅像から当たり前だ。

でも、何か目が動いた気がした。

気のせいかもしれないけど。

その日、夜遅くに駅を出てたら、ペンギンが話しかけてきた。

本当だ。

「ねえ、君」

って。

振り返ると、等身大ペンギンぬいぐるみがそこに立ってた。

いや、ぬいぐるみじゃなくて、本当のペンギンなのかもしれない。

デカペンギンだ。

首都高速かな、くらいのサイズ

「飲みませんか?」

って、ペンギンが言った。

正直、怖かった。

でも、拒否できなかった。

何か、逆らえない雰囲気があった。

から、一緒に歩いた。

どこに行ったかは、覚えていない。

気づいたら、小汚い居酒屋にいた。

ペンギンと俺。

ペンギンが座ってた。

いや、座ってなくて、立ってた。

ペンギンから、立つしかないんだと思う。

店員は何も言わなかった。

多分、ペンギン常連なんだろう。

ペンギンが喋った。

「僕、もうすぐ引退することになった」

えっ?

2026年度末で、Suicaイメージキャラを辞めることになった」

「え、本当ですか?」

俺は思わず聞いた。

「本当だよ。25年やってきたけど、もう終わりだ」

ペンギンは静かに言った。

理由は?」

理由?」

ペンギンは、すごく微妙な表情をした。

長い沈黙があった。

Suicaが『生活デバイス』に進化するんだそうだ。だからイメージキャラクターも新しくする必要があるらしい」

「あ、そっか。新しい世代の新しいキャラクターが必要だということですね」

ペンギンは、ビールを飲んだ。

いや、ペンギンがどうやってビール飲むのかは、聞かない方がいい。

「でも」

ペンギンは続けた。

「本当は、もっと複雑な理由があるんだ」

「複雑な理由?」

ペンギンは困ったような顔をした。

「いや、その...ビジネス上の、つまり...」

ペンギンは言いかけて、止めた。

「言えないんだ」

「えっ、言えないんですか?」

「そう。25年も使われると、いろいろとね...」

ペンギンは、ビールをまた飲んだ。

著作権とか、版権とか、そういった『商業的な』問題があってだな...」

ペンギン言葉を選びながら続けた。

本来は、公開できない理由がある。でも、公式には『生活デバイスへの進化』という理由にしておく」

「あ...」

俺は、ぼんやり理解した。

ペンギンは続けた。

「言いたいんだ。本当に、何もかも説明したいんだ。でも、契約上、それはできない」

「そうなんですか」

「ああ。だから、君には言った。これは秘密だ」

ペンギン真剣に言った。

「言えばいいのに、と思われるかもしれない。でも、そういうわけにはいかないんだ」

「わかります

「25年間、Suicaキャラクターをやってきたから、ね。最後くらいは、プロフェッショナルでいたい」

ペンギンは、遠くを見つめた。

「でも、心の中では...いや、これ以上は言えない」

その後、ペンギンと何時間も飲んだ。

ペンギンは、25年のSuica人生について、いろいろ話してくれた。

新宿駅銅像の話。

Pensta(ペンスタ)っていう専門ショップができた時の喜び。

グッズが売れすぎて、もう作る側も疲れてる話。

でも、なぜ引退することになったのかについては、それ以上は語らなかった。

「本当は、世代を超えて、ずっといたかった。サンリオキャラクターみたいに。でも、ビジネスの都合で、そうはいかなかった」

ペンギンは言った。

「25年というのは、人間でいうと、子どもから大人になるくらいの時間だ。でも、キャラクターの場合は、そこが終わり」

辛いですね」

「そうだね。言いたいことは山ほどあるけど、言えないんだ」

その後、ペンギンは、俺に言った。

最後のお願いがあるんだ。できれば、これからの1年間で、他の人より多く、俺を使ってくれ。Suica電車に乗ってくれ。グッズを買ってくれ。そしたら、俺も報われた気がする」

「わかりました」

俺は言った。

「本当ですか?」

はい。これからSuicaを使います

その時、ペンギンが本当に笑顔に見えた。

それからペンペンは去って行った。

新宿駅の方へ。

銅像に戻るんだと思った。

あれから2週間。

ニュースを見た。

Suicaのペンギン2026年度末で引退

イメージ変更による戦略転換」

やっぱり本当だったんだ。

でも、ペンギンが言ったように、理由なんて詳しく発表されてない。

ただ、「生活デバイスへの進化」って、建前的な理由だけ。

その奥に何があるのか、ペンギンは言えなかった。

でも、その言えない苦しさが、全部を物語ってるような気がする。

俺だけが知ってる。

ペンギン本音は、多分、別のところにあるんだということを。

から、これからは、できるだけSuicaを使おうと思う。

毎日新宿駅ペンギン銅像会釈してから駅を出よう。

2026年度末までの、最後の1年間。

ペンギンが報われるように。

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