■女子は算数苦手でもいいんです。どうせ国語の方がセンスあるから。

某中学受験塾で講師に言われた言葉だ。

あの時、教室の空気が一瞬だけ止まった。

私は笑えなかったけど、周りの親たちは微妙に笑ってた。

あれは「この場を壊したくない」って種類の笑いだった。

息子を持つ親の中には頷いてる人もいた。

「うちの娘もそうですよ〜」って明るく言った母親もいた。

でもその一言の下で、何人の女の子が“算数が得意”を諦めてきたか、あの講師は知ってるんだろうか。

塾のパンフレットには「すべての子どもに可能性を」って書いてある。

でも教室の中では「女子は国語、男子は算数」が当たり前みたいに流通してる。

それを指摘すると「いや、傾向としての話です」って逃げられる。

傾向で切り捨てられる人生がどれだけあるか、知りもしないくせに。

うちの娘は算数が好きだった。

数字の並びを見てパターンを探すのが得意だった。

でもその日から「私、国語頑張るね」って言い出した。

“苦手でもいい”って言葉が、まるで呪いみたいに聞こえたんだと思う。

講師の言葉は軽かったんだろう。

何百人も相手にしてるうちの、たった一コマの雑談だったんだろう。

でもあれを聞いた子どもの世界は、その瞬間に少し狭くなる。

選べたはずの未来がひとつ減る。

「男子は負けず嫌いだから伸びる」

「女子は安定してるから文系が向いてる」

そんなテンプレで人の人生を整列させて、

それを教育だと思ってる大人が一番怖い。

この国の“教育”って、まだ男と女で別の地図を配ってるんだと思う。

そしてその地図を信じることが“常識”だと教えられる。

娘はいま中学生になった。

算数は苦手になった。

でもたまに、ノートに難しい数列の式を書いてる。

その横顔を見て思う。

あの日の講師の言葉を、私は一生忘れない。

そしてたぶん、娘も。

Permalink | 記事への反応(3) | 21:09

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