冬時間入りで調整色を強めたニューヨーク市場。しかし、これはクラッシュではなく急坂を上り続けた後の「呼吸を置く」局面だ。決定的な政治・経済要因が見当たらない中、窓埋めのサイクルと捉えるのが妥当だろう。一方で、AI活用の急速な普及により雇用環境は激変期を迎えており、従来の金融政策では解決できない構造的変化が始まっている。利下げ期待と雇用不安、物価高と株高が同居する「2026年のニューノーマル」を読み解く。
プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。ブログ:ニューノーマルの理(ことわり)
米国株、わかりやすい調整か
冬時間になってわかりやすい調整感が否めないNY下落…かといって調整とクラッシュは違う。 急な坂道を上り続けて、呼吸を置いているといった状況。事故があったわけではないです。

NYダウ 日足(SBI証券提供)
時間軸でいうと短いと個人的には思う。下落に決定的な政治的・経済要因は見当たらないし、キャリートレード環境をみても11月3日時点で巻き戻しの兆候も感じない。
日本語でいう窓埋め(調整)のサイクルじゃないですか?個別ではなく指数からみたバリュエーションだが過熱感はあれども、よく言うバブル感は感じない。
まぁ当然、AI関連におけるリーディングカンパニーというか注目銘柄のPERは高くはなっているが、莫大な設備投資額を吸収するだけの巨大な需要が待っているといった流れは止められない。
よって、指数の動きはあくまでクラッシュではなく調整。
一方、実体経済は「変革期」
しかし間違いなく実体経済は変革期を迎えている。水曜、ADP雇用報告も冷ややかな反応しか招かないものになる。そういう意味で、メディアが報じるADP雇用報告は意味は無いです。
呼吸を整えながら上昇していくのは自然の流れで、気になる点があるとすれば、理論ではなく年明けの1月FOMC前後から2月2週にかけてだが、これはもう古臭い感覚なのかもしれない。自分は長いですからね。ここは直感。
ただ言えるのは、このような時代の変化の狭間(AI活用の普及が進み、雇用が減退していくという、しかも急速な流れ)では、人員削減が今後も急速に進んでいく。
投資家は活発になる?
これを金融政策で解決できるのかといえば疑問符が付く。前から言っているが、金利政策(利下げ)では雇用を救えない時代が到来しつつあるのではないかな?利下げをしたって、物価高になり市民を苦しめるだけである。
ただそれら企業に投資する株式(投資行動)は上昇するということ。つまり、利下げ期待が大きいなか、利下げをしても雇用は救えず、物価高となり、株式は上昇というまとめ。これも「2026年のニューノーマル」…現時点ではね。過去とは違う固定観念。
本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
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