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米国発の金融危機は近い?専門家が警告する「大恐慌級」2つの時限爆弾とは=高島康司

最近、SNSには金融危機を警告する専門家の投稿があふれている。へッジファンドマネージャーやエコノミストたちは、大恐慌の再来さえ警告する。背景にあるのは、地方銀行の商業用不動産ローン問題と、連邦政府閉鎖の長期化による米国債格下げリスクだ。この2つの危機が同時に起これば、1929年や2008年のような激烈な金融危機が現実となる可能性がある。アメリカ発の金融危機は本当に起こるのか?(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

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※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2025年10月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

アメリカで金融危機が発生する可能性は?

これからアメリカで金融危機は発生する可能について解説したい。

最近TikTokなどのSNSには、金融危機、ないしは深刻な経済危機を警告する投稿があふれている。それらの投稿は、へッジファンドマネージャーやエコノミストなどの専門家によるものが多い。例えば以下は、FOXニュースの経済分野のコメンテイターとして登場している人物のものだ。10月20日の投稿である。

「まもなく企業は大量解雇の発表を始めるでしょう。もしあなたが職を持ち、この波を乗り切るための少なくとも100万ドルの資産を持っていないなら、上司にこう尋ねてください。「私の職は安全ですか?」「もし会社が解雇を進め始めた場合、職を守るために何をする必要がありますか?」

他の業務を引き受ける、労働時間を増やす、できることは何でもしてください。この経済環境下で失った職を代替する新たな仕事を見つけるのは極めて困難です。そして状況がすぐに好転する兆候はありません。刻一刻と悪化しています。手遅れになる前に、ご自身とご家族、そして職を守ってください」

また、へッジファンドマネージャーによる次のような投稿もある。

「私は、1930年代の大恐慌が迫っていると思っています。これは深刻で、市場が50%以上暴落し、長期的なGDP崩壊と大規模な失業が発生する状態を指す。1930年代の大恐慌では、市場は90%下落し、失業率は25%に達し、GDPは30%減少しました。現時点では、我々は不況圏内にあり、大恐慌領域には至っていません。しかし、状況次第ではその境界線は極めて曖昧です。」

市場は上昇し米経済は一見好調のように見えるが、SNSでは専門家によるこのような投稿が最近特に増えているように感じる。

地方銀行の損失計上と商業用不動産の不振

このような不安感に拍車をかけているのは、最近発生したニューヨークの地方銀行の大きな損失だ。米地銀、ザイオンズ・バンコープと他の2行は、商業不動産の融資2件について、不正があったとして多額の損失を計上すると発表し株価が急落した。

2023年の地銀危機以来、投資家は不確実性への耐性が低下しており、個別の不良債権問題や不正行為であっても幅広い売りの引き金になる。金融緩和と透明性の低さが何年も続いたことで、投資家はリスクが本当はどこに潜んでいるのかと疑心暗鬼になっている。小規模な悪いサプライズでさえ、大規模な相場調整を引き起こしかねない状況になっている。

こうした不安が拡大している背景には、アメリカの商業不動産の問題がある。いまのところ、まだ限定的ではあるが、アメリカの大都市圏における商業不動産の不振が、地方銀行の経営難を引き起こし、金融システム全体を揺るがす危機に発展する可能性は存在する。2020年から始まったパンデミックや、大統領選挙の混乱、そして人種差別反対運動に拡大などで、大都市圏の企業ではリーモートワークが進み、オフィス需要は大幅に減少した。また、パンデミックの失業の拡大によるホームレスや薬物中毒者の増加、そしてそれを背景にした大都市圏での犯罪率の増加
で、商業用不動産の需要は大きく落ち込んだ。

これは、地方銀行の経営に深刻な影響を与えている。その理由は、地方銀行の商業用不動産向け融資の集中度が高いことにある。地方銀行にとって商業用不動産の融資は主要な収益源であるため、融資残高が資産の25%を超える銀行も少なくない。この結果、在宅勤務の定着やeコマースの拡大、高金利環境の影響でオフィスの空室率が上昇し、資産価値が急激に下落する。そして、ローンの支払いに耐えられない不動産会社は破綻する。

すると、デフォルトしたローンは銀行の不良債権となり、銀行は引当金を積み増す必要がある。引当金の計上や貸倒損失の発生は、銀行の収益を圧迫し、自己資本を毀損する。銀行の経営不安が表面化すると、株価が急落し、投資家や預金者の信頼喪失につながる。

しかし、いまのところ、商業不動産の不振がアメリカの金融システム全体を危機に陥れる可能性は低いと評価されている。商業用不動産融資のリスクは、主に中小・地方銀行に集中しており、大手銀行やグローバルな金融システム全体を直撃するほどの規模ではないからだ。連邦準備制度理事会(FRB)の健全性審査(ストレステスト)などでは、深刻なストレスシナリオでも銀行業界全体の商業用不動産関連の損失は限定的であると推定されている。

Next: 負のループ?米国債の格下げと商業用不動産ローンの破綻が同時に…

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