JX金属<5016>の株価は、この3ヶ月ほどで大きく上昇しました。しかし、この数週間はやや弱い展開を見せており、これが押し目買いのチャンスではないかと考える投資家も少なくありません。JX金属の株価が上昇している理由、そして今後どのような展開が予想されるのかを、ファンダメンタルズに着目して徹底的に解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
JX金属の株価急騰の直接的な要因
JX金属の株価は、2025年3月の上場後、それまで動きの少ない展開が続いていましたが、8月に決算を発表して以降、ポンと急騰しました。株価はあれよあれよという間に上昇し、2倍から2.5倍程度になっています。

JX金属<5016> 日足(SBI証券提供)
この急騰の直接的な要因として最も大きいのは、今期の業績予想が上方修正されたことです。
具体的な業績修正の内容は以下の通りです。
- 第1四半期の純利益は、前年度比で27.8%増
- 今期の通期純利益の当初予想580億円から、700億円に見通しが引き上げられた(前年度比20.7%増)
しかし、利益が20%増えただけで株価が2倍や2.5倍になるのは通常考えにくいことです。この上方修正の裏には、業績の上昇以上に、株価を大きく後押しする構造的な要因が存在しています。
株価を後押しする構造的要因(1):AI・半導体向けの需要増
業績上昇の背景を深掘りすると、現在の相場に乗る要素が多数見られます。
<AI半導体に不可欠な先端材料メーカー>
JX金属の成長の主要因は、「AI半導体向け高純度銅材料の需要増」です。
同社は、半導体・情報通信分野に欠かせない先端材料を世界に供給するグローバルトップメーカーです。その事業は「フォーカス事業」と「ベース事業」に分けられます。
【フォーカス事業の強み】
- 薄膜材料(スパッタリングターゲット)
- 圧延銅箔(どうはく)
半導体用として使用され、世界シェア64%を誇ります。
情報通信材料として使われ、世界シェア78%を誇っています。
<AIサーバー・データセンター需要の恩恵>
同社の製品は、まさにAIブームのど真ん中で活用されています。
- AIサーバーや最先端向け需要が成長を牽引
- データセンター向けのHDD需要も引き続き好調
- (スマートフォン向けに加えて)AIサーバーでも大量に使われているため、需要の伸びが当初の業績予想発表時と比べても加速
JX金属は「銅」という素材を扱う会社ですが、その高付加価値な加工技術によって、現在のAI半導体市場で大きな強みを発揮しているのです。