目が覚めると、俺は1999年にいた。
いや、正確には「気づいたら1999年だった」という感じだ。
手にはカルディの無料コーヒー……のはずが、カルディなんて当時は日本にまだ数えるほどしかなかった。
代わりに、駅前の輸入食品店で試飲していたらしい。店内にはシナモンロールと生ハムが並んでいる。
「おぉ……90年代でもこういうの売ってたんだな……」
と感心しながらレジに向かうと、隣の男子高校生二人がゲーム雑誌を片手に話している。
「マリオの新作、64で出るらしいぞ!」
「そろそろ逆パターンあってもよくね? なんつーか、時代的に」
フェミニズムという単語は出てこなかったが、それっぽい話をしていた。
横目で雑誌を見ると、Nintendo Switchどころか、まだ次世代機はゲームキューブすら発表されていない時代だった。
店を出ると、なぜか泌尿器科が目に入った。
なぜかわからないが、なんとなく血圧を測らなければいけない気がして、ふらっと入る。
「170ですね」
「ギリセーフ?」
「アウトです」
医者に冷たく言われ、なんだか今すぐ運動を始めるべきな気がした。
試験期間だからか、どの階も長蛇の列。そこへベビーカーを押した若い母親が現れ、赤ちゃんがギャン泣きし始める。
「育児、大変そうですね……」とつぶやくと、後ろの学生が「ピザーラでも頼もうぜ」と言い出した。
1999年でもピザーラはすでにあったが、宅配ピザの値段はまだまだ高級だった。
「バイト代入ったから」と友人に自慢げに言っているのを聞き、時代を感じる。
家(当時の実家)に帰り、ホットラテ……はまだ馴染みがないので、ドリップコーヒーを淹れる。
テレビでは大谷翔平ではなく、松坂大輔の甲子園の映像が流れている。
ふと、未来について考える。いずれ結婚して、育児して、一軒家を建てるのか?
断熱窓ってもうこの時代にあるんだっけ? そんなことを考えていると、テレビから速報が流れた。
「……よし、未来のことはどうでもいい。とりあえずゲーム買おう」
1999年に戻っても、俺は俺だった。
将来のためにエヌビディアの株カットけばオールオッケーだな
ピーチ姫が助けるゲームならマリオUSAが当時既にあったし、フェミニズムは田嶋陽子とか活躍してた