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2025-09-13

ぼくが大好きだった重量物輸送屋さん

みなさんお気に入りの重量物輸送屋さんがあると思いますが、ぼくはシンプルに巨大で重い物を運ぶという点を重視しています

オランダ語マンモス意味するMammoetが大好きでした、スイスアウトドアブランドMAMMUTドイツ語ですが特に関係はありません

コーポレートカラーは赤、企業ロゴマンモス、かつてのモットーThe biggest thing we move is time

Mammoetなんて知らないよという方もいると思いますが彼らのレガシーの一つを恐らく知っていると思います

2016年11月29日人類史上、最も重い地上構造物の5日間、330mの旅が終わり

NSC(New Safe Confinement )は、チェルノブイリ原子力発電所4号機老朽化した石棺を覆い、向こう100年の安全約束しました

長さ165m、幅260m、高さ110m、重量3万6200tの巨大なパイプ車庫の様なNSC移設担当したのがMammoet

ギネスにも登録されている地上で最も巨大な自走式機械Bagger293が1万4200tなので2.5台分ぐらいです

また、Bagger293は、クローラーで自走するため車輪を用います

しかし、NSC移設車輪は用いられていません(移設使用する油圧ポンプの電源が乗っている架台には、キャスターが付いています

車輪発明される以前の重量物の輸送はコロでした、コロより前は、引きずっていました、そう、最も原始的方法人類史上、最も重い地上構造物移設が行われたのです

Mammoet移設に用いたskidding systemは、skidding trackskid-shoe構成され理屈原始的であるけれど現代技術が使われています

まず、skidding track目的地まで敷設します、モジュラー化されているのでレゴのようにどんどん繋いでいきますskidding track上面にはテフロン製のブロックが設置されています

その上に、skid-shoeが乗ります、底面はステンレス鋼で、ステンレスがテフロンの上を滑ります

skid-shoeには、油圧シリンダーが連結しており油圧でskid-shoe押し出しますストロークが最大まで達するとskid-shoeskidding trackに固定されます

そして、シリンダーが最小まで縮んだ後にシリンダーskidding trackに固定され、skid-shoeロックが解除され、再び押し出す準備が整います尺取り虫みたいに動きます

車輪は偉大な発明で移動に欠かせませんが超重量物に耐えるには、数を多くして圧力分散する必要があります

NSC移設においてはスペースと荷重問題skidding system採用され、skid-shoeの耐荷重は700t、これを116台、8万1200tのキャパティです

skidding systemは単純ですが簡単では有りません、116台すべてをミリ単位で同期させる必要があり左右58台ずつに分かれ間は260m離れているため機械的に接続することもかないません

それでも、正確に制御されNSCは無事に旅を終えました

三菱商事洋上風力発電撤退で一部の船舶マニアに衝撃が走った※追記

https://anond.hatelabo.jp/20250904152738

ぼくは、この増田を書きました、読みづらい文章を読んでくれた方ありがとうがざいます

最後まで読んでくれた人の中には、ある疑問をもった人がいると思います

海にはパワフルな作業船があるけど陸上ではどうするの?海から運んできた重量物はどうやって運ぶ?港までどうやって運んできたの?

これらを解決するのがMammoetを始めとする重量物輸送を専門にしている会社でありskidding systemです

skidding systemは、全てがモジュラー化されているので運ぶ対象に合わせて柔軟に組み替えることでき、ジャッキアップも可能です

もちろん、他にも方法がありクレーンを用いたりもしますが長くなるでやめておきます

日本は、FPSOや巨大な海洋構造物の建造から一歩引いているのであまり縁がないですが中国韓国ベトナムなどアジアにも彼らが出張ってきます

この分野は、欧州の独壇場です、欧州神聖視する必要は全くないですが彼らの地力は失われていないと思います

大陸ゆえでしょうか、巨大な物を扱うことに長けていますしかし、この業界アメリカが案外大したことありません、何もかもスケールの大きい国なのにちょっと不思議です

また、2020年に重量物輸送マニアに衝撃が走った気がしました

イギリスALEMammoetの傘下に入ったのです

Mammoet現在SK6000という最大吊り上げ能力6000tの陸上最大のクレーン保有していますがこのSKシリーズを開発していたのはALEです

Mammoetskidding systemSPMT(Self-Propelled Modular Transporterなど重量物の輸送に強みを持っていますクレーンはそこそこな感じ

そこにSKシリーズを持ち大型クレーンに強いALEが合流し世界最大の重量物輸送会社誕生しました

規模だけでなく様々な技術を持つ非常に強力な会社です、ただ、一つ失われたことがあります

The biggest thing we move is timeというモットーです

私たちが動かす最大のもの時間です)

これがWe help the world to grow safely, efficiently and move to a more sustainable future に変わりました

世界安全効率的に成長し、より持続可能未来へと向かう手助けをします)

大変に素晴らしい理念ですがぼくからしたらなんのこっちゃです

The biggest thing we move is timeは吊りフックに懐中時計がかけてある画像と共にPRされました

https://encrypted-tbn0.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcRzXwLr0fgFj-KBlEuiZ4uJ7J9QFcW5byYQSA&s

強靭な吊りフックに子供でも持ち上げられる懐中時計がかかっています一見、とてもアンバランスおかしいのです

しかし、それは重い物を吊る、運ぶ、単純な脳筋に思われがちな仕事を、それだけが自分たち仕事ではないと

われわれはトータルソリューション提供するのだという強い意志を感じる素晴らしい物でした

から個人的The biggest thing we move is timeがなくなったことが残念でした

大好きから好きぐらいに変わりました

2025-09-04

三菱商事洋上風力発電撤退で一部の船舶マニアに衝撃が走った※追記

追記

この増田は、特定企業非難攻撃するために書いていません、あくまファンが外から見た話です

仕事柄、造船に関わることはありますがそれは、図面通りの物を造るという仕事業界俯瞰することはありません

また、企業業界の様々な事情考慮されていません

例えば、下に出てくるJMUJapan Marine United)は、今年の6月今治造船の傘下に入りました

今治造船は、ぼくが増田で書いている大手造船が本当に大手だった頃、中堅と呼ばれるような規模の会社でした

それが今や日本最大の造船会社になり、IHI住友重機日立造船JFE錚々たる面子ルーツに持つJMUを傘下にしたのです

そんな今治造船の主力は、バラ積みやコンテナ船です、結果を見れば中韓競争してでも貨物船に集中し巨大化の波に乗るのが正解だったんです

じゃあ、なぜこの増田今治造船の話が出て来ないか、それは、ぼくの好みの船を造っていないからです

マニアファンとの意見と言うのは往々にして業界のためにならないし、業界を語ることも出来ません、興味のないことに注意を向けないからです

これはそんな増田です、この増田業界を反映していません、ぼくの好きな特殊作業船をいっぱい造って欲しい、そして、出来たら日本企業がいいなってそんな話です

洋上風力発電は多くの場合、設置にSEP船が使われる

SEP船は(Self Elevating Platform)の略であり海底に向け足をビューンと伸ばして着底したらドーンと船体を海面より上に持ち上げる

船体が海と接しておらず、かつ足で海底に固定されているため波浪の影響を軽減しつつ作業が出来る作業船一般的に水深60mぐらいまで対応できる

このSEP船、これまで日本には2018年に完成した五洋建設CP-8001しかなかった

そんな中、2022年清水建設BLUE WIND2023年大林組東亜建設柏鶴五洋建設鹿島建設・寄神建設CP-16001が完成し計4隻となる

CP-8001CP16001BLULE WIND柏鶴
基本設計GustoMSCGustoMSCGustoMSCJMU
昇降装置GustoMSCGustoMSCGustoMSC三菱重工
能力800t1600t2500(1250)t1250t
自航能力
建造JMUPaxOceanJMUJMU

GustoMSCはオランダの造船会社Werf Gustoルーツに持つ、オフショアプロジェクト世界的なシェアもつ会社で今はアメリカのNOV(National Oilwell Varco)の傘下、NOVのルーツUSスチール

Werf Gustoは、日本韓国との競争に負けて再編、閉鎖されたがオフショアに活路を見出していた

日本JMUで建造されているものの基本設計GustoMSC、SEP船の特徴である昇降装置GustoMSCに頼っていた中

柏鶴は、オランダのHuisman製クレーン使用しているものの基本設計からJMU担当しておりほぼ国産と言っていいSEP船である

Huismanは海上港湾で使われる大型クレーン世界的な企業世界最大の起重機船 Sleipnirの10000t×2のクレーンもHuisman製

日本最大の起重機船は、寄神建設が所有する海翔の4100t

日本洋上風力発電の波が来たことで高い技術力を持ちながらも経験や実績不足から海外に頼らざるを得ない状況が改善されていくかに見えていた中での三菱商事撤退

作業船好きなマニアに衝撃が走った、夢見た国産化の道が、造船立国日本の復活が途絶えてしまうのではないか

SEP船の建造費用は数百億円かかりBLUE WINDは約500億、近年は大型化に拍車がかかり3000tクラスの吊り上げ能力もつものもあり1000億がみえている

20フィートコンテナ20000個以上積める、24000TEUのコンテナ船で1隻当たり330億ぐらいであり、SEP船は単価が高い

コンテナ船は同じものを何隻か造ることでコストダウンしているため単純比較は出来ないが、中韓との単純な価格競争に巻き込まれづらい利点もある

日本は、世界の建造量において中国の48%、韓国28%に次いで15%と世界3位の座を維持しているもの価格競争に晒されるコンテナバラ積みなど貨物船が主力で苦労している

その中でSEP船は小さいが一つの解決策に見えた

三菱重工のように大型客船解決策を見たケースもあったが炎上沈没比喩)、祖業の造船を分社化商船から撤退という結末を迎える

このパターン過去にもあった

Werf Gustoらに勝ち世界の頂点に立った日本は、韓国中国に追い立てられた時FPSO(floating production storage and offloading)に手を出した

FPSOは、石油プラットフォームから石油を受け取り炭化水素生産、処理を行ったり一時的石油を貯蔵したりする船舶

石油プラットフォームと違い移動が可能で、パイプラインを陸地まで引く必要がないなどの利点がある

しかし、これは失敗だった

FPSOに手を出した日本大手造船は赤字を叩き出し撤退、今は現代重工など韓国企業シェアを持っているが利益を出せていない

FPSOの設計は、基本的欧州企業が手掛け、アジア製造のみを担当していることが多く、欧州設計アジアが血を吐きながら生産欧州運用という状況が続いてる

からこそ、柏鶴希望だった、外国に旨い所を持っていかれない、国内だけで完結することが出来る未来

しかし、三菱商事洋上風力発電撤退ということで国内洋上風力発電の勢いが小さくなれば、この未来も危うくなる可能性がある

世界最大の起重機船Sleipnirを建造したのはシンガポール国営エネルギー開発企業Sembcorp Industriesだが

1985年に建造され一時、世界最大の起重機船だったThialfを建造したのは三井造船であるものの今世界一の船舶日本が建造したものはない

日本の造船の技術力は高い、それは間違いないが中韓は安さだけでやっているのではなく技術力があり日本より実績がある

世界最大の半潜水式の重量運搬船BOKA Vanguard現代重工

世界最大の積載量を誇るコンテナ船Evergreen Aシリーズは、サムスン重工と中国船舶集团有限公司

世界最長488mのPrelude FLNGサムスン重工

個人的に最も好きな作業船世界最大の船舶の一つPioneering Spirit全長382m、総トン数40万tはHanwha Ocean(大宇造船海洋)が建造

石油プラットフォームをそのまま持ち上げることが出来るリフト能力が最大60000t、スカイツリーの総鉄骨重量が36000t、レインボーブリッジの総鉄骨重量が48000tだからイカレテル

最近では、バージョンアップして石油プラットフォームを海底に固定してるジャケットを引き上げる能力も獲得しこちらが20000t、イカレテル

なお、上であげた世界最大の船舶たちの設計欧州がやっている、アジアは手足でしかない、もちろん手足も重要だがやはり頭は自前で欲しい

から柏鶴希望だった、しかし、終わりそう

ちなみにベルギーJan De Nulが所有する世界最大のSEP船Voltaire吊り上げ能力3200tは中遠海運集装箱運輸が建造、クレーンはやっぱりHuisman

中遠海運集装箱運輸は傘下に川崎重工との合併企業を持っている、日本大手造船が赤字で苦しむ中、川崎重工が堅調だったのはこれがあったからだが良いのか悪いのかは分からん

 
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