2025-11-04

制服代で家が壊れた日の話

入学式の朝に制服請求書が届いた

額を見て頭が真っ白になった

母はテーブルに突っ伏して泣き声をあげた

父は黙って封筒を握りしめていたけど目はどこか遠くを見ていた

新品の制服写真スマホに送られてきてその光が腹に刺さった

隣の家の子は昨日ランドセルを誇らしげに見せていたのを思い出した

うちの冷蔵庫にはまだ二日分の食材しかないのに制服が十万近くするってどういうことだ

公立入学式でこれほど金を要求されるなんてふざけんなと思った

店員は丁寧にサイズを測ってくれて申し訳なさそうに値段を繰り返した

の子は笑って「似合うね」と言ったけどその声が遠くて刺さるだけだった

母が祖母電話して黙っている声を聞いて胸が締め付けられた

祖母は小声で「なんとかする」と言ったけどそのなんとかがどれだけの借金か見えた

通帳の残高を見つめる父の指が震えているのを見て私は大人世界に嘘があると知った

隣の親は「祝いだから」とプラスチックの袋を渡して笑っていた

その笑顔が一番許せなかった

私は店の外で子ども制服を入れた袋を抱えている自分に酔ったふりをした

帰り道に見た同級生の新品の帽子がくっきりと景色を割った

学校平等を教える場所のはずなのに入学の条件が家計の厚さで決まるこの現実が許せない

誰かが「節目だね」と言えば私たちはほほえみながら借金を抱えることを選ぶように仕向けられている

私の腹の底にあるのは悲しみでも羨望でもなく激しい怒りだ

この国で子どもを祝うために親が首を絞められるのは間違っている

私はこの朝を忘れないでおこうと思う

忘れるといつの間にか同じことを繰り返してしまいそうだから

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