2025-11-10

anond:20251110225452

山内】 東京映画文化が爛熟(らんじゅく)していた時代に、伝説的な映画館にいっぱい行けていてうらやましいです……!

  

森下】 2000年代の前半くらいですかね。その原因は、洋画の買値が高くなったこと。そうすると単館ではできなくなって、東京だと渋谷新宿銀座で同時に上映するなど何館かで一緒にという形になった。そうするとミニシアター個性だんだんなくなっていく。作品が変わったというのもありますが、本当に冬の時代でした。2006年には邦画洋画より多くなったんです。

 

山内】 そこが時代の切り替わりなんですね。すごい失礼な話なんですけど、私はやっぱり洋画が好きなので、邦画のことを下に見てしまうところもあったんです。でも今は完全に逆転して、洋画マニアしか観ないようなところまでシュリンク(縮小)しまっているのではないかと思います。まだミニシアターが元気だったころの、思い出深い作品はありますか?

 

森下】 最初会社担当したデビッド・リンチ監督の『ストレイト・ストーリー』。あとはティム・バートン監督の『ビッグ・フィッシュ』、ミシェル・ゴンドリー監督の『エターナル・サンシャイン』の宣伝しました。だんだん年もとって、何度か転職もして、邦画担当にもなりました。でもあるとき会社映画の配給をやらなくなって、IT会社吸収合併して、仕事自体が変わったんです。

  

それで出会ったのが『365日のシンプルライフ』というタイトルで初めて配給した映画でした。男子が裸になって自分の持ち物を全部倉庫に預けて、一つ一つ取っていく物語で、昨年『女性休日』を売ってくれたセラーから配給権を買って、日本公開につなげました。

 

 【山内】 森下さんが『女性休日』と巡り合えたのも、そういった成果なんですね。本当に良い巡り合わせで、50周年にジェンダー後進国日本でこの映画が上映されるという。タイミングや縁がうまくつながってここまで来ているんだと分かりました。

 

 日本特に東京では毎日大量の映画が上映されているけれど、森下さんのような配給の方がいることで成り立っている。お話を聞いて、1本の映画映画館で観られることのありがたみが増しました。

 

 映画って、知らない世界を知るのに良いメディアだと改めて感じました。日本にずっと腰を落ち着けていると、ついつい視野が狭くなってしまうけれど、ドキュメンタリー映画を通してまだ知らない国に触れることができる。世界がぐっと広がります

 

 【森下】 私自身、映画を通してどれだけ色んなことを教えてもらったか……。突き詰めれば世界平和のためだし、やっぱり映画は「想像力」を養うと思います。本もそうだと思いますが、その人の人生体験はできないけど、その人の立場ではどうなのかを考え、想像できるので。

次回は森下詩子さんとの対話映画をふまえて、山内マリコさんがエッセーをつづります

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