今回は、2025年9月29日に再上場したソニーフィナンシャルグループ<8729>について、その特殊な上場形態、現在の株価動向、そして今後の投資判断について詳しく解説します。上場直後から株価は下落傾向にありますが、既存のソニーグループの株主として株式を受け取った方も、新規購入を検討されている方も、この銘柄を持ち続けるべきか、あるいは今が買い時なのか、投資判断にお役立ていただければ幸いです。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
異例の「現物配当」で再上場。ソニーフィナンシャルの現状と株価動向
ソニーフィナンシャルの新規上場は、非常に特殊な方法で行われました。
これは、既存のソニーグループの株主に対して、ソニーフィナンシャルの株式を現物配当するという、珍しい形式での新規上場です。
高い知名度を持つソニーフィナンシャルですが、上場から株価は下落傾向が続いています。
現在の主要な財務指標(上場から3日目の時点)は以下の通りです。
- PER:13.9倍
- PBR:1.8倍
- 配当利回り:2.18%
これらの数値だけを見ると、金融機関としては特に割安でも割高でもない水準に見えます。しかし、ソニーフィナンシャルの過去の業績や事業内容を深く見ていくと、数値以上の買いのチャンスが見えてくるかもしれません。
事業の3本柱:安定した収益源とソニー生命の優位性
ソニーフィナンシャルは主に以下の3つの事業を柱としています。
- 生命保険事業:ソニー生命
- 損害保険事業:ソニー損保(自動車保険など)
- インターネット銀行:ソニー銀行
この中で、売上および利益に占める割合が特に高いのが「ソニー生命」で、8割程度がソニー生命からの貢献となっています。
過去の業績を見ると、売上高(経常収益)は右肩上がりで伸びており、経常利益もアップダウンはあるものの、長期的にはプラス成長のトレンドが見えます。これは「安定成長」している企業と評価できます。

出典:有価証券報告書
足元の利益が変動しやすいのは、金利の影響など、金融機関特有の要因を受けているためです。
なぜソニーグループはソニーフィナンシャルを「切り離した」のか?
ソニーフィナンシャルは元々上場していましたが、一度非上場化され、今回再び再上場するという複雑な経緯を辿っています。
<表向きの理由:ガバナンスの解消とシナジーの追求>
元々、ソニーグループが65%、市場流通株が35%という「親子上場」の状態にありました。これはガバナンス上好ましくないとされる形態であり、非上場化によってこの問題が解消されました。
また、非上場化することで経営戦略の自由度が増し、ソニーグループ全体とのシナジーを発揮しやすくなると説明されていました。