人工知能(AI)の普及でデータセンターや半導体製造装置向け材料の需給がひっ迫している。2025年はサムスンや台湾TSMCが2ナノメートル半導体の量産を始める「2ナノ元年」とされ、日本の半導体素材メーカーも設備投資を拡大している。そこで、今回はあらためて半導体製造に欠かせない材料・素材を手掛ける企業に注目し、いくつかの代表的な銘柄を取り上げる。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2025年11月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:田嶋智太郎(たじま ともたろう)
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
AI特需の恩恵を受ける半導体材料・素材
素材メーカーがデータセンターや半導体製造装置向け材料の生産能力を引き上げる。人工知能(AI)の普及で需給が逼迫しているためで、関連する企業は「AI特需」を逃さず取り込むことに注力している。
AI特需は裾野が広く、恩恵を受ける素材メーカーは多い。例えば、三井金属が取り扱う電力損失が少ない銅箔「VSP」はAI向けデータセンター内の通信機器などに組み込まれ、世界シェアは約8割あるとされる。半導体などを搭載するプリント基板に使い、電力損失を減らすことができる。電線を手掛けるフジクラは千葉県佐倉市で450億円を投じてデータセンター配線用に光ファイバーの新工場を建てる。
また、最近は微細な回路線幅2ナノメートル品など先端半導体の量産が始まることに対応して日本の半導体素材メーカーが韓国などで設備投資に乗り出すケースも増えている。サムスンや台湾TSMCが2ナノメートル品半導体の量産を始める25年は「2ナノ元年」といわれる。TSMCは28年に次世代の1.4ナノ品も生産する計画としており、こうした動きを受けて次世代素材の量産設備を導入する企業の例も枚挙にいとまがないほどである。
そこで、今回はあらためて半導体製造に欠かせない材料・素材を手掛ける企業に注目し、いくつかの代表的な銘柄を取り上げることとしたい。
ADEKA<4401>
中堅化学メーカーで、プラスチック向け樹脂添加剤と半導体の成膜工程で使われる高誘電材料は世界で高シェア。同社は、スズなどを含む金属で回路をつくる新タイプのレジスト「MOR」の中核材料となる金属化合物の量産設備を茨城県神栖市の工場に設ける。
MORは先端半導体の製造に適した極端紫外線(EUV)露光技術向けの次世代レジストとして注目される。現在は金属を含まない「化学増幅型」のレジストが主流だが、それよりも高解像度が実現しやすいことからナノ単位の微細な回路形成にも向くとされる。
足元は、先端DRAM向け高誘電材料の販売が低調ながら、データセンター投資や生成AI搭載デバイスの需要拡大により、先端フォトレジスト向け半導体リソグラフィ材料の販売は好調に推移。半導体材料は今期後半から伸びが拡大すると見られる。また、アジアや米国で自動車エンジンオイル向けの「潤滑油添加剤」や「電子部品用特殊エポキシ樹脂」の販売が好調に推移する。
26年3月期は、売上高が前期比8.3%増の4,410億円、営業利益は同4.9%増の430億円、純利益は同5.5%増の264億円を見込んでいる。

ADEKA<4401> 週足(SBI証券提供)
株価は今週13日に上場来高値を更新。それでも足元の予想PERは13倍台に留まり、予想配当利回りは2.8%台と魅力の水準にある。なお、2018年に日本農薬を子会社化している。
四国化成ホールディングス<4099>
傘下の四国化成工業(香川県丸亀市)が今年7月、同県坂出市に半導体材料の新工場を建設すると発表した。2029年の全面稼働を予定する。新工場では、半導体材料「グリキャップ」と半導体プロセス材料を主に生産する。グリキャップは半導体など電子部品を載せるプリント配線板の性能向上につながる材料で、従来の方法よりデータ伝送の損失を抑えることができる特徴がある。
現在は丸亀工場(丸亀市)で生産しているが、半導体メーカーからの需要は25年に前年比で倍増し、26年もさらに3割増える見通しのため、新工場建設で生産能力を倍増させる。6割が輸出。半導体プロセス材料は半導体製造の前工程で使われる化学物質で、現在は徳島工場で生産している。新工場では半導体の基板に回路を形成するリソグラフィ技術に使う製品など、複数種を生産する。需要に合わせて品ぞろえを増やし、生産能力も3倍に増やす。
足元は、柱の化学品カテゴリーにおいて半導体材料が好調。建材も値上げ効果で徐々に上向き。
25年12月期は、売上高が前期比0.7%増の700億円、営業利益は同2.7%増の100億円、純利益は同20.6%減の70億円を見込んでいるが、3Q時時点の進捗率は営業利益で82.7%、純利益で86%に達しており、最終的に上ブレ着地が見込まれる。

四国化成ホールディングス<4099> 週足(SBI証券提供)
株価は、本日(14日)上場来高値を更新。足元の予想PERは17倍台で、今後の成長余力を考えれば割安と言える、
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