2025-04-03

[]経産省による肖像・声の商品等表示認定に関する整理について

つまるところ声のパブリシティー権に関するお話パブリシティー権自体法律で明確に規定された権利ではなく、過去裁判例を通じて徐々に認められてきた裁判上の方便的なもの。そのため、その解釈適用範囲には曖昧さが残ってた。

過去裁判例においてパブリシティー権が認められる対象の例示の中に「声」が明示的に含まれていなかったため、声にパブリシティー権司法において認められるかどうかは不確実な状況だった。でも、例示に声が含まれていなかっただけであり、声にパブリシティー権が認められないと判断されたわけではない。

今回の経産省による整理は、あくま行政としての見解を示したものであり、法律が変わったわけでも、法的解釈公式に変更されたわけでもない。また、法律で明確に定められていなかった権利立法によって確立したわけでもなく、新たな裁判例や判例が生まれたわけでもない。実質的には「声の問題に対して受けてくれる弁護士が現れるんじゃないかなー」程度の影響と考えられる。三権分立原則から経産省行政機関であり、法として認めるのは立法の、最終的な法的判断司法役割

この整理は「音MAD」や「人力ボカロ」などで無断で有名人の声が利用される行為など、従来から問題視されていた行為に対して訴える法的根拠が一歩前進した形。ただし、これは生成AI学習や生成自体禁止するものではない。「依拠」していてかつ「類似」しているものについては、人が手書き作成しようが機械作成しようが著作権法違反になるという整理と同様。

この経産省見解は、従来微妙ポジションであった声のパブリシティー権に対する行政の考え方を示したものと言える。これに関連付けてAI規制派と呼ばれる一部の人々が様々な関係のない別の問題を指摘しているが、それらの多くは既に法律禁止されている行為であったり、権利者でない人が存在しない権利を主張するような行為

例えばディープフェイクについては、基本的名誉毀損または侮辱著作権法違反などに問われる可能性があり、政治家対象場合公職選挙法違反となる場合もある。今回の整理はそうした既存の法的枠組みの中での解釈を一部明確化したものと考えられる。

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