喫茶店に入ったら常連客ばかりで、いきなりジロジロと見られて居心地が悪かった、という話題が話題で話題になっていました。
社会学には「儀礼的無関心」という概念があります。これは簡単に言うと、知らない人をいきなり無遠慮にジロジロ見たり、話しかけたりしないで無関心であることが礼儀だよねという話です。
私たちもふだんは無意識のうちに、この儀礼的無関心を基本にして生活しています。ですがこれは、歴史的には都市の誕生とともに生まれてきたありかたです。
たとえば全員が顔見知りの村であれば、通りがかりに顔を見て「おはよう」と挨拶したり、知らない人間が村に入ってきたときに「どちらさんですか」と顔を見られるというのは当たり前ですよね。
人口が増え、互いの顔や素性がわからない人間が集まるようになってはじめて、儀礼的無関心という特殊なありかた、振る舞いが成立したのです。
私たちも、学校の教室や、職場の部署内では、全員が顔見知りですから、誰かが入ってきたら「おはよー」といいますし、知らんひとなら「誰やねん」みたいな顔をしますよね。
つまり、全員がほとんど顔見知りであるようなコミュニティであれば、儀礼的無関心は成り立たないのです。
これは人間に広く見出せる振る舞いです。私たちも、同じような条件であれば無意識に同じように振る舞っているはずです。
喫茶店でも、常連客はいつも互いに「おはようさん」「今日はえらい遅いやん。どうしたん」とか言ってるのです。
いきなりジロジロ見られたからといって、喫茶店の常連客がとくべつに排他的であるとか、閉鎖的であるといえるわけではなく、コミュニティの濃度が一定まで上がると起こる普遍的な現象であると理解しましょう。
ブコメでも酒場や銭湯でも同じことを感じるというひとがいましたが、これはスナックや銭湯が地域のコミュニティとして機能しているからですね。
はてなにはアーバンなシティーボーイ、シティーガールが多いので最初は戸惑うかもしれませんが、視線が障壁になって喫茶店から足が遠のいてしまうのはもったいないので、以下、チェーン店のカフェにはない喫茶店のいいところをプレゼンします。
・おばちゃんがお菓子を配り始めるなどの意味のわからないイベントが定期的に起こる
おばちゃんたちはお菓子をはじめとして、スーパーで買ってきたロールケーキを店主に切らして配るなどします。僕がアガったのは「たこ焼き買うてきてん! 時間ないからまたくるわ!」と言ってパックを店主に手渡してすぐ帰ったおばちゃんです。パックにはたこ焼きではなくお好み焼きが入っていました。お好み焼きは切り分けられてソーサーに乗せて配られました。スタバではこういうことは起こりません。
・店に猫がいたりする
猫は触れたり膝に乗ってくれたりします。キャットカフェのように追加料金がないのがいいです。あと、おばちゃんが犬を連れてきたりします。ブルーボトルコーヒーではこういうことは起こりません。
・めっちゃ褒められる
私はアラフォーの中年男性ですが、いまだに「あらー!若い兄ちゃんきたでー」と言うてもらえます。それに、イケメンの基準がガバガバであるため、イケメンではなくても「イケメンやーん」と言うてもらえるので、自己肯定感が高まります。タリーズではこういうことは起こりません。
・安い
・煙草が吸える
長居ができるかは店によります。あと、いいことばかり書いてきましたが、喫茶店ではおもしろいイベントが起こりやすいのと同時に、不愉快な目にあうことも多いです。衛生的にもゆるかったりします。当たり外れがなく均一なサービスを求めるならば、紙コップでコーヒーを出すチェーンのカフェにいきましょう。店主がカウンターのなかでギターを弾き出したり、知らんひとにスマホの操作方法を聞かれたり、訳がわからないことが起こっても許せる人には喫茶店がおすすめです。
いろんな喫茶店の灰皿に吸い殻を積み上げて本を読みながら、私は人間のわけのわからなさをちょっと好きになることができました。