■テスラ公式動画の一般道テスト走行と、日本特有の道路事情を踏まえた論点

テスラジャパンがXで、日本の一般道上での走行テスト動画を公開した。

https://x.com/teslajapan/status/1957986432926249405

走行主体や提供形態の詳細は未明示だが、少なくともメーカー主導の公道テストである事実は動画で確認できる。

一次情報を基に観察事実を整理し、日本特有の道路事情に照らした技術的論点と今後の展開を検討する。

動画から読み取れる挙動

• 交差点手前で先頭で右折待ちし、右折矢印点灯で右折開始
• 赤信号手前で先頭で停止し、青信号に変わると発進
• 工事で閉鎖された車線をウインカーを出して回避
• 路上駐車車両を追い越し
• 横断しようとする歩行者に優先を譲り、横断歩道手前で停止

これらは北米や中国で見られるFSD（Supervised）相当の挙動と整合し、従来のAutopilotの日本向け提供機能では未実装とみなせる領域を含む。

技術的な位置づけ

本動画の範囲は、運転者監視を前提とするレベル2相当と解するのが妥当である。

ステアリング介入や監視義務は継続し、責任はドライバーに帰属する。

FSDにとって難易度が高いと考える日本特有の道路事情

• 長大トンネル
  • 山手トンネルや関越トンネルなど、照度変化が大きく、路面標示の摩耗や反射材の差異が顕著な区間
  • GPS遮断、出口逆光、路肩作業車の存在が同時発生しやすい
• 連続トンネルと山間部
  • 明暗遷移とカーブが連続し、濡れた路面でレーンマーカーが視認しづらい
  • 落石・崩落対策の仮設コーンや可搬式標識が頻出
• 料金所と分合流の密集
  • 首都高や都市高速での短距離分合流、ETCレーン直後の隊列圧縮
  • 標識の多言語表示や路面矢印の重畳で視覚負荷が高い
• 右折専用矢印と多相信号
  • 右折優先の矢印信号、歩車分離、点滅信号など相関が複雑
  • 二段階右折の自転車や右折待ち先頭での判断が難所
• 生活道路と幅員減少
  • センターライン消失や鋭角すれ違い、ミラー越しの譲り合い
  • 植栽や電柱で見通しが悪い交差点
• 雨雪と路面条件
  • 豪雨でのスプラッシュとワイパー作動による映像ノイズ、積雪でのレーン消失
  • マンホールや鋳鉄グレーチング上での加減速挙動
• 人混み・自転車・バイク
  • 学校周辺や商店街での歩行者優先、逆走自転車、右左折巻き込みの回避
  • 交通誘導員や警察官による手信号への即応
• 工事・仮設規制
  • 夜間工事の反射コーン、車線シフト、片側交互通行での旗振り合図

今後考えられる展開

• 段階的開放
  • 社内テストとデータ蓄積の後、条件付きで一部オーナーに開放する段階進行が有力だ。安全スコア等の条件付与が想定される。
• ローカライズとHMI
  • ハンズオン検知、注意喚起、日本語表示、機能制限条件の国内ガイドライン適合
• 適合性評価と手続
  • 保安基準やガイドラインへの適合確認、ソフト更新後の継続適合の扱いが焦点
• データの扱い
  • 走行データの取得と匿名化、越境移転の透明性確保が社会受容の鍵
• 保険と責任
  • レベル2の性質上、事故責任はドライバーに帰属する前提が続く。表示や取扱説明の充実が必要
• 競合の反応
  • 国内勢の高機能運転支援の前倒し投入圧力が強まる可能性

まとめ

公式動画により、日本の一般道でのテスト走行の事実は確認できた。挙動の多くはFSD（Supervised）相当の能力と整合する。

一方で、日本特有の長大トンネル、複雑な信号体系、生活道路の幅員減少、気象条件などは難所であり、ローカライズと運用要件の設計が鍵となる。

当面はレベル2としての段階開放を軸に、安全検証と適合性評価の透明化が普及の分水嶺になると見立てる。

Permalink | 記事への反応(2) | 17:58

ツイートシェア