50万円近くした。
脇の下に超音波式の脂肪吸引装置をぶっ刺して肉を内側から破壊したらしい。
吸引したあとのアポクリン汗腺を看護師が見せてくれたが、オレンジ色の汚い何かが浮いていたので、恐らく効果はあったのだろう。
いや、あったんだよ。
ワキ毛を剃ってデオドラントを塗らずに寝た次の日、明らかに臭いが減ったんだから。
0にはならなかったが、明らかに減った。
部屋のカーテンに染み付いたワキガの臭いに気づいて、絶望しながら買い替えられる程度には嗅覚も回復したのだから。
それでも駄目だった。
チェック結果で「服の匂いを減らす薬を使え」と言われて売り込まれた洗剤も使った。
意味がなかった。
どうなんだ?これはどっちだ?なんなんだ?俺のレビューでショックを受けて修行することにしたのか?うん?
とにかく俺は今、人生が詰んでいる。
毎日囁かれる「臭いんだよ」は俺の中の悪魔が世界を滅ぼさせるために流した悪意ラジオか?
でもそれにしてはハッキリ聞こえすぎる気がする。
俺に出来ることはあるのか?
医者か?
「精神科」
はぁ?お前も俺を狂っていると?
まあいい、次は精神科だ。そして俺はデパス漬けのキチガイになるんだ。
躁転したあとの行動を間違えないように冷静なうちに「やるべきもの」を整理しておくか。
助けてくれ。
腕がまともに動くまでに3ヶ月かかった。
バキバキに破壊されたワキの内側が膿んだように痛いのが一月続いた。
その間まともに動かせなかったせいで二の腕がカチカチに固まってまともに動かせなくなっていた。
それが治るのに全部合わせて3ヶ月。
こんなにも苦労して何も起きなかった。
50万だぞ?
詐欺なのかも分からん連中から謎の石鹸を買い続けたのはいくらになるんだろう。
まあ、まあ、まあ。
部屋中に無香料の消臭剤を置きまくった日々、日当たりのいい家に引っ越すための費用、全部でいくらかかった?
そして駄目だった。
もう駄目だ。
俺は世界を憎まないことが出来ない。
でもな、「世界や自分の人生に何も期待しない感覚」は最高に鍛えられた。
ふふふ、この感覚を定年後に慌てて身につける羽目になって、間に合わずに気が狂って小学生の群れを殺しに軽に乗り込むようなクソジジイにはならずにすんだぜ。
ガキ殺して何の意味があるんだろうなあ?
殺すべきはよお、いい年こいて他人が何でも自分の思い通りになるべきだと言い張り続けるクソガキオジサン共だよなあ!?
そうさ俺も死ぬべき!テメーはどうだ!
待ってろ!
『ホールドオーダーズ』という映画に出てた教師がトリメチルアミン尿症という設定だったけど、本人が自分が臭いのを気にしてるんじゃなくて周りの人から指摘されてたんだよね。身...