2025年11月1日、20年以上に及ぶ紆余曲折の末、ついにエジプトの首都カイロで大エジプト博物館が開館した。
ラムセス2世の巨大な像、クフ王の船、ツタンカーメン王墓で発見された5000点の財宝など、館内は値段のつけようのない貴重な遺物で埋め尽くされている。ツタンカーメンの財宝が1カ所に集められて展示されるのは、発見以来、これが初めてだ。(参考記事:「【動画】80トンのファラオ像、4度目の引越し」)
しかし、実はこの博物館は、エジプトにとって歴史的・考古学的に極めて重要な遺物の多くを所蔵していない。そうした遺物は、エジプトにいた外国の軍に奪われたか、エジプト政府の目をすり抜けて持ち出されたか、あるいは共有財産という名目で外国に所有されているかだ。いずれにしても、かつて植民地を支配した国々のために多くの考古学的遺物がエジプトから運び出され、今もそれらの国の博物館で展示されている。(参考記事:「王の遺産を収める大エジプト博物館」)
そのなかから、貴重な7つの遺物と、それらがなぜ今エジプトにないのか、エジプトに帰還させようとしてどんな取り組みが行われてきたかを紹介する。(参考記事:「文化財は誰のもの?」)
1. ロゼッタストーン
展示場所:英国ロンドンの大英博物館
1799年に初めてロゼッタストーンを目にしたとき、ナポレオン率いるフランス軍の兵士らは、ヒエログリフを解明する手掛かりをついに見つけたことを悟った。勉強机とほぼ同じ大きさの花崗閃緑岩の石碑には、古代ギリシャ語、ヒエログリフ、古代エジプトの民衆文字(デモティック)がはっきりと刻まれていた。(参考記事:「ロゼッタストーン、古代文明の謎解きにどう役立った?」)
当時のエジプトは無法地帯も同然で、「冒険家たちがやって来ては何でも好きなものを持ち去っていました」と、米ロングアイランド大学の上席研究員で、古代エジプトに関する本を10冊以上執筆しているエジプト学者のボブ・ブライアー氏は言う。フランスの将軍ジャック・フランソワ・メヌーも、ロゼッタストーンを自分のものにしようとした。だが、英国は同意せず、銃を突き付けて石碑を渡すようメヌーに迫ったという。
1802年にはすでに、ロゼッタストーンは大英博物館に展示されていた。当時は、ガラスケースにも入れられずむき出しのままで、来館者は自由に石に触れたという。エジプトに返還しようという動きはあるものの、ロゼッタストーンは今も同じ場所に展示されている(もちろん、現在はガラスケースに入れられている)。(参考記事:「ギャラリー:エジプト学の祖シャンポリオンとロゼッタストーン」)
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