はてなキーワード: 田津とは
百人一首が嫌いだ、と会社から帰りの電車で「ちはやふる」の新テレビシリーズの吊り広告を見ながら思った。
私は百人一首が嫌いだ。中学や高校の時間に学んだ短歌はむしろ好きだった。
しかし、あの、百首の歌を暗記して冒頭の数文字に基づいてカードを奪い合うあの百人一首というのはともかく下品だ。あれは古典に親しむ教養の反対の存在であり、反射神経だけを競う実にアタマの悪いものだと思っている。
また覚える対象が、藤原定家が選んだ百首の短歌、というのもよくない。特定の歌人が選んだものを盲目的に覚え尽くすという所業自体、実に権威的であり、この点でもアタマが悪いと思うのである。
私はもっと短歌をしみじみと楽しみたい。その楽しみの中に百人一首のようなゲーム性が入るのは構わないが、ゲーム性が目的と化してしまった今の百人一首には別れを告げたい。そんなふうに考えて、和歌を使った新しいかるたを考えてみたいと思った。
対象とする歌は、定家が選んだ百人一首から外れて、古代から近現代にいたる各種の名作を選びたい。結果として百人一首から60ぐらいは入ってくるだろうとは思う。百人一首は万葉集の詠み人知らず系が入ってないのが以前から不満があった。例えば、「 防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思ひもせず」とか。万葉集で百人一首にないものでは額田王も欲しい。「熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」とか。
近現代だと啄木とか入れたい。「たはむれに母を背負ひて/そのあまり軽(かろ)きに泣きて/三歩あゆまず」とか。そんな感じでたぶん300ぐらいの有名どころの短歌を選べるのではないか。
下の句を見せられて何かをするという、百人一首の大枠は残してもいいかと思う。例えば300首の中からランダムに5枚選んで、上の句が何かを2人でニヤニヤと当てあう、みたいな酒の肴的な楽しみ方ができればいい。「ほうほう、これは確か高校の国語で習った歌で、子規が病床で何々がどうたらな話でしたよね」みたいなトークのネタにするような楽しみ方である。案外、最初に百人一首をかるたにした人も、今のような脳筋反射神経ゲームにする気はなくて、そういうのんびりした楽しみ方を想定してたんじゃないかなとも思った。