ハシビロコウ
分類: 鳥類
IUCNのレッドリストによる
危機の評価: 危急種
食性: 肉食
野生での平均寿命: 35年
飼育下での平均寿命: 50年
体高: 1~1.5メートル
体重: 5キロ(メス)、5.4キロ(オス)
ハシビロコウとは
ハシビロコウがおっとりした鳥に見えるか、今にも獲物に襲いかかろうとしている鳥に見えるかは、あなた次第だ。
ハシビロコウは英語で「shoebill(靴のようなくちばし)」と呼ばれている。そのユニークな名前が示すとおり、長さ30センチ近くあるくちばしはオランダの木靴のようだ。黄褐色の地に茶色の斑点が不規則に散らばり、幅は10センチ強。非常に鋭く、先端はかぎ状になっている。このくちばしを使って、ハイギョ、ティラピア、ウナギ、そしてヘビといった大型の獲物を捕まえる。ナイルワニの子やナイルオオトカゲを食べることもある。
一見すると、ハシビロコウの姿は待ち伏せ型のハンターとは思えない。体高は最大で約1.5メートル、翼開長は約2.4メートルに及ぶ。目の色は、若いうちは黄色で、成鳥になると青くなる。羽の色は全体的に灰色だが、背中側に比べておなか側は白っぽい。後頭部には冠羽という飾り羽がある。脚は細長く、長い足の指は大きく広がっている。生息域は、東アフリカのエチオピアや南スーダンからザンビアにかけての淡水湿地だ。この足のおかげで、湿地に生える植物の上でも体を安定させて歩くことができる。
ハシビロコウは何時間も動かずに立っていられる。これは大好物のハイギョを捕えるのに好都合だ。肺で呼吸をするハイギョは、息を吸うために時々水面に浮いてくる。この瞬間をじっと待っているのだ。体ごと倒れるように前に突っ込んで獲物を捕る狩りの方法は、「コラプシング(collapsing、崩れ落ちる)」と呼ばれる。
ハシビロコウ科を構成する唯一の鳥だが、かつてはコウノトリ科に分類されていた。長い脚や首は確かにコウノトリに似ているものの、一番近い仲間はペリカンだ。
たいてい静かにしているが、仲間への挨拶や求愛行動の手段として、くちばしを叩き合わせて音を出すことがある。これは「クラッタリング」と呼ばれる。また体温が上がるのを防ぐために喉の筋肉を震わせて熱を放散させる。ハシビロコウのひなはおなかがすくと、しゃっくりに似た音を立てることがある。
繁殖
ハシビロコウは3歳から4歳で成熟する。一度ペアになれば生涯、繁殖相手を変えない。とはいえ基本的に単独行動を好むため、繁殖期にペアを形成しても、食事は縄張りの別の場所で個々に行う。巣は浮遊植物の上や水面に木の枝などを置いて作り、大きさは直径2.4メートルほどになることもある。メスは雨期の終わりに平均して2個の卵を産む。
抱卵や、卵を定期的に回転させる転卵、暑い日には大きなくちばしで水を汲んで卵やヒナにかけて冷やすことなど、卵と子どもの世話はオスとメスが共同で行う。卵が孵るのは産卵からおよそ1カ月後。ひなは青みがかった灰色の綿毛で覆われ、くちばしの色も親鳥に比べて薄い。巣立ちまで育つのはたいてい1羽だけだ。
保護
国際自然保護連合(IUCN)の推定によると、現在の生息数は3300~5300羽で、数は減っている。
牧草地への転換などの影響で生息地は大きく減少している。家畜が巣を踏みつぶしてしまうことも少なくない。農業における野焼きや、石油産業や皮なめし工場からの汚染物質も生息地に悪影響を及ぼしている。またハシビロコウを食料として捕獲したり、不吉な鳥として駆除したりする地域もある。
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