2025-10-31

炊飯器を買った

最近料理に目覚めたのでついでに炊飯器も買ってみた。

実家を出てから、一度も炊飯器を買ったことがなかった。

早炊きとか予約とかはわかるんだが、メニューの中に「調理」があるのが驚いた。

最近炊飯器でなんでも作ると聞いたことはあったけどあくま裏技的なもので、公式メーカーがそういうモードをつけてるとは思わなかった。

さっそく米も買って炊いてみることにした。

うそう、こんなだったよなと思いながらずいぶん高騰した米を丁寧に研いでひたひたに水を入れボタンを押す。

ピピピ・・と音が鳴ったらかきまぜ蒸らして少し待つ。しゃもじで茶碗にご飯をよそいながら、ふいに涙がこぼれてしまった。

俺の家は幼少の頃から親がネグレクト気味でなかなか家に帰ってこないことが多かった。

子供の面倒を見ないというだけで、お金適当に渡されていたし、俺自身はそれほど辛い思いはしてなかった。

ただ下の妹は甘えん坊で、親が帰ってこないことが寂しいとよく泣いていた。

話し相手は俺しかしないから妹はずっと俺にくっついていた。俺は妹の面倒を見るのはすごく面倒で嫌だった。

一緒に遊んでも全然楽しくないし、だから無視することも多かったんだが、そうすると妹は寂しくてずっとグズってしまうのだった。

外で友達と遊ぶときも妹はくっついてくるので邪魔だったが、一人にするのも怖いので仕方なかった。

親は帰ってきたとしても遅い時間だったから、夕飯はいつも妹と二人で食べていた。

毎日朝と夕方ご飯を炊いて、自分の分と妹の分をお茶碗によそって、ほら、とテーブルに並べていた。

炊飯器の蓋を開けたときのあたたかい湯気に包まれる瞬間だけ、俺は妙に寂しい気持ちになっていたのを思い出した。

すぐに蓋をしめればその一瞬の寂しさはもう忘れる。気を抜いたら妹が味噌汁をこぼしたりして危ないからだ。

そんなことが一気に思い出されて、思わず涙がこぼれてしまっていた。

俺にとって家族での食卓風景というのは、妹と二人きりで食べてた食事だ。

おかずなんていつも決まってるし炒め物とかそんなのしかできなかった。

でも妹はご飯を食べてるときが一番よく喋って、楽しそうだった。

俺もご飯を食べるときだけは妹を邪魔には感じなかった。

妹がアホみたいに喋りまくるのを聞きながらご飯を食べていたあの時間は、なぜか生活の中で一番静かな時間だったなと思う。

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