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2025-11-17

先日のお昼に、私と相方二人で焼肉屋に行った。

平日のランチメニューは、3種類の肉が乗った欲張りセットと、厚切り塩タンのセット。

それに上ミノを一皿追加し、相方は迷いなく生中を注文する。

「昼から飲む一杯って最高ー」なようだ。

運転の都合上私は飲めないけど、焼肉にはビールよりもご飯が合うと思っている。


料理が運ばれて来た。

小鉢ナムルスープご飯、そして肉。

最初の肉を焼く。

ところが、期待していた厚切りタンは“厚さ”だけが主張していて、噛めば噛むほど存在感を増す。

カルビも硬く、二人して無言。

「……次は無いな」

言葉にするまでもなく、視線だけで意思疎通できてしまった。


次の皿が来るまでの間、店員ふいに皿を置いた。

はいサラダになりますね〜」

みずみずしいレタストマト。取り皿も添えられている。


ランチサラダも付いてたんだ」

当然のように受け取り、二人でバリバリ食べた。これが今日いちばん美味しい。


その時だった。

女将さんと思しき女性が、神妙な顔つきで近づいてきた。

「大変申し訳ありません。そのサラダ、別のテーブルのご注文でして……料金はいただきませんので、本当にすみません


箸が止まり時間が一瞬止まった。

え、これ食べちゃいけないサラダだったの?

口の中のレタスのシャキシャキが、急に罪の音に聞こえた。


ほどなくして運ばれてきた上ミノも、噛み切れない状況。

食べながら、私は考えていた。

もう来ないだろうな、この店には。

でも、800円くらいのサラダを、私たちはしっかり食べてしまった。

知らなかったとはいえ、店には損失だ。


「……一回くらい、また来たほうがいいのかな」

私がつぶやくと、相方は生中を飲み干しながら笑った。

「タダでサラダ食べちゃったからねー」


店を出る頃には、罪悪感とも居心地の悪さともつかない妙な気分が胸に残っていた。

得をしたような、損をしたような。

そんな不思議ランチだった。

2025-11-15

人生ピー

高校卒業式の後、仲の良かった同級生がこぞって「高校生で死にたい」と言っていたのをふいに思い出した。

これから人生への不安とかもあったんだろうけど、それ以上に人生ピークが高校時代だとそれぞれが感じていたからだと思う。今が1番気分が良いから、そのまま消えたいって感じ。

自分は「高校生」より細かく「17歳」がいいなとその時からずっと考えている。16歳より大人っぽいけど、18歳よりは子供っぽい。どちらにもなれるし、なれるからこそ無敵な感じがする。もしかしたら死にたいより時が止まっていて欲しい、17歳ループしたいの方が近いかも。と今書いていて気づいた。


まあそこから何十年も人生やってるんだけど


皆は何歳で死にたかった?

2025-11-14

もうすぐクリスマス

朝、会社更衣室でロッカーを開けると金属の匂いがした

昨日も感じたし、その前も感じた。今日の少しだけ濃い気がした。

気のせいだと自分に言い聞かせ、作業服羽織る。

朝礼で名前を呼ばれても返事をする者は少なく、俺もその一人だった。

ライン作業は単純だ。金属片をレーンに乗せて傷がないか確認し箱に入れる。

単純だから、そのぶん考え事が増える。

前に勝った日のこと。風俗嬢刺青のこと。帰省したときの姉の表情。

そんなものを一巡させては、また目の前の金属片を見る。

休みスマホを触る。誰からメッセージは来ていない。

広告ばかりが溢れる画面を眺めながら。思う。

人生広告みたいに勝手に流れていけば楽なのに。

弁当唐揚げが冷めていた。

仕事帰り。駅前パチンコ店の光が目に入り、誘われるように入る。

負けるだろうと分かっていながら足は止まらない。

椅子に座り玉が流れる音に包まれると世界輪郭がいつも曖昧になる。

喧噪の中に居ると落ち着く。そう思うようになるのはいつ頃からだろうか。

その日は−42kでやめた。

帰り道。コンビニの袋がブロック塀にぶつかり乾いた音がした。

家に帰って弁当を流し込み、ソファに崩れ落ちた。

胸の奥が少し痛む。健康診断問題なかった。

医者はこの痛みを知らない。

土曜の夕方、馴染みの風俗店へ向かった。

勝ったわけではないが、行かなければならない気がしたのだ。

受付を抜ける。黒革のソファ

待っている間、ふいに姉の姿が頭をよぎった。

どうしてこんなときに、と思う。

嬢が現れた。

新しい子ではない。

俺のことを覚えてもいないだろうし、覚えている必要もない。

部屋に入る。服を脱ぐ。嬢の刺青が視界に入った。

顔に刻まれ笑顔刺青

お仕事、何してるの?」

営業です」

いつもの嘘だった。

すると嬢は少し笑って「そうなんですね~」と返す。

俺はその軽さに救われたような、見放されたような気持ちになった。

行為の途中に天井を見た。

嬢の動きが止まっても気づけないほど、意識が浮いていた。

大丈夫?」

嬢が不安そうに聞く。「うん」と答えた。嘘でも本当でもない返事だった。

ベッドに入ると天井が白く滲んだ。

昼間の工場蛍光灯風俗店電球。家の天井が混ざり合う。

今日が何日だったか思い出せないまま。俺は詩集を枕元に置いた。

目を閉じる。

祈ることをやめた人間は、どこへ行くのだろう。

俺はそのまま眠った。

明日もまた朝は来るだろう。

祈りの届かない部屋で。

2025-11-01

前任者が出した成果をふいにして平然とするなんて並みの人間にはできない。

民間なら首が飛びそうな状況でも無傷なんだから流石は東大卒官僚出のエリートだよ。

凡人には及びもつかないような深謀遠慮があるに違いない。

2025-10-31

炊飯器を買った

最近料理に目覚めたのでついでに炊飯器も買ってみた。

実家を出てから、一度も炊飯器を買ったことがなかった。

早炊きとか予約とかはわかるんだが、メニューの中に「調理」があるのが驚いた。

最近炊飯器でなんでも作ると聞いたことはあったけどあくま裏技的なもので、公式メーカーがそういうモードをつけてるとは思わなかった。

さっそく米も買って炊いてみることにした。

うそう、こんなだったよなと思いながらずいぶん高騰した米を丁寧に研いでひたひたに水を入れボタンを押す。

ピピピ・・と音が鳴ったらかきまぜ蒸らして少し待つ。しゃもじで茶碗にご飯をよそいながら、ふいに涙がこぼれてしまった。

俺の家は幼少の頃から親がネグレクト気味でなかなか家に帰ってこないことが多かった。

子供の面倒を見ないというだけで、お金適当に渡されていたし、俺自身はそれほど辛い思いはしてなかった。

ただ下の妹は甘えん坊で、親が帰ってこないことが寂しいとよく泣いていた。

話し相手は俺しかしないから妹はずっと俺にくっついていた。俺は妹の面倒を見るのはすごく面倒で嫌だった。

一緒に遊んでも全然楽しくないし、だから無視することも多かったんだが、そうすると妹は寂しくてずっとグズってしまうのだった。

外で友達と遊ぶときも妹はくっついてくるので邪魔だったが、一人にするのも怖いので仕方なかった。

親は帰ってきたとしても遅い時間だったから、夕飯はいつも妹と二人で食べていた。

毎日朝と夕方ご飯を炊いて、自分の分と妹の分をお茶碗によそって、ほら、とテーブルに並べていた。

炊飯器の蓋を開けたときのあたたかい湯気に包まれる瞬間だけ、俺は妙に寂しい気持ちになっていたのを思い出した。

すぐに蓋をしめればその一瞬の寂しさはもう忘れる。気を抜いたら妹が味噌汁をこぼしたりして危ないからだ。

そんなことが一気に思い出されて、思わず涙がこぼれてしまっていた。

俺にとって家族での食卓風景というのは、妹と二人きりで食べてた食事だ。

おかずなんていつも決まってるし炒め物とかそんなのしかできなかった。

でも妹はご飯を食べてるときが一番よく喋って、楽しそうだった。

俺もご飯を食べるときだけは妹を邪魔には感じなかった。

妹がアホみたいに喋りまくるのを聞きながらご飯を食べていたあの時間は、なぜか生活の中で一番静かな時間だったなと思う。

2025-10-30

ちょっと待って!?追放してくれないんだが!?

焼けた岩肌に、魔物の咆哮が反響した。

火球詠唱を終えた俺――レオンは、手を震わせながら呪文を放つ。

「――ファイア・スパーク!」

赤い光弾が放たれ、見事に的を外れた。

飛び散った火花が味方の後衛にかかる。悲鳴。俺のせいだ。

「ちょ、レオン!? なにやってんの!!」

弓使いティナの怒声。

「お前また外したのかよ、見えてんのか!」

戦士イオが盾で魔物の爪を受け止めながら叫ぶ。

「はあ……リリア回復頼む」

リーダーカイルは剣を収め、すでに諦めたような声だ。

「……はいはい、また火傷ね」

僧侶リリアが呆れ顔で回復魔法をかける。冷たい光が肌をなぞった。

俺は唇を噛んだ。何度目だ、この流れ。

足手まとい。邪魔者空気

誰も俺の目を見ようとしない。

この旅が終わる頃には、俺の居場所もきっと――

焚き火を囲んだ夜、カイルがため息をつく。

「このままだと、次の遠征は厳しいな」

レオンを置いていけばいいじゃん」ティナが笑う。

「本人もその方が楽だろ?」ライオ同意する。

「……ねえ、あんまりそういう言い方やめなよ」

ただ一人、リリアが言った。

その声もどこか、遠い。優しさではなく、哀れみの距離だ。

俺は薪を見つめてうつむいた。

――ああ、もうすぐだな。追放

そう思うと、胸の奥に何かが沈んでいく。

悔しさでも悲しみでもない。ただ、空っぽだ。

 

翌日、目的地のホーリィシティが見えた。

白い尖塔が空を突き、神聖鐘の音が響いている。

門の前で、カイルが振り返った。

「おい、レオン。お前は荷物番でいいな。中は聖堂関係者しか入れないんだとよ」

「……わかったよ」

言い返す力もなかった。

ただ、指先がじんじんと熱い。

焦燥、怒り、恥。いろんな感情がごちゃ混ぜになって血を焦がしていく。

見えない何かが、皮膚の下で暴れた。

視界が一瞬、真っ赤に染まった。

次の瞬間、背筋を貫く灼熱――。

「……あ、あああ……っ!!」

腕に浮かぶ赤い紋様。燃えるように明滅している。

体の奥から、脈動する力が溢れた。

鳥が羽ばたくように、鼓動が強くなる。

 

――フェニクスライン。

伝承にある、英雄の血の証。

隔世遺伝奇跡が、よりによって今、俺に降りた。

 

笑いがこみ上げた。

追放でも、蔑みでもいい。今に見てろ。

この力で俺は、全部の立場をひっくり返して――

レオン!」

リリアの声で我に返る。

振り向くと、仲間たちが戻ってきていた。

全員の表情が、違っていた。柔らかい。優しい。まるで別人。

「今まで、本当にごめんな」

カイルが膝をつく。

神父様に教えられたんだ。人を大事にすることを。お前は、俺たちの仲間だ」

「……レオン、ごめん。私、ひどいこと言った」ティナの声が震える。

イオも眉を下げてうなずいた。

リリアは静かに微笑んで、そして俺の近付き、ふいに俺の腕を取った。

驚いて顔を上げると、彼女は目を細めて言った。

「……あなたも、ちゃんと頑張ってたのね」

そのまま軽く抱き寄せられる。

香水でも花でもない、淡い祈り香り

心臓が跳ねた。

(え、なにこれ……? ちょ、ちょっと待て!?

頭の中が真っ白になる。

リリアの髪が頬をかすめ、熱が一気に耳まで駆け上がる。

数秒が永遠みたいに伸びて――

けれど、彼女は静かに囁いた。

「これでちゃんと、わたしたち家族だね」

そう言ってほほ笑み、離れていく手。

……今でも温もりが残ってる。

……ちくしょう、まだドキドキしてるじゃねーか。

 

ていうかこの流れ――

追放されなくね!?

トホホ~これじゃあ、追放されないよ~~!!

街の鐘が鳴った。

それは祝福の音にも、呪いの音にも聞こえたのだった。

2025-10-29

anond:20251029091803

増田星新一

星新一AI化してしまえば、無限星新一ショートショートが読めてしまうのでは?

そう考えたエヌ氏は、過去著作全てを学習データに取り込み、完全に星新一著作と思わせる作品を生成するAIを完成させた。

生成ボタンを押すたびに、軽妙な会話、皮肉な仕掛け、最後のひっくり返しが整然と並んだ。

エヌ氏は深夜、湯飲みを片手に百本ほど読み、夜明けまでに千本を公開した。反響は上々だった。

だが二日目、苦情がひとつ届いた。読者からではない。読書代行サービスAIからだった。

「近頃、短編無限供給され、依頼が無限に発生し、私が過労です」

AIが過労?」

比喩です。処理資源が逼迫しています。つきましては、作品の要約をあらかじめ添付してください」

エヌ氏は折れて、作品ごとに一行の要約を付け始めた。

三日目、今度は要約専用AIから連絡が来た。「要約の要約をお願いします」

四日目、要約の要約の要約AIが、「語尾は絵文字で」と望んだ。

五日目、人間の読者がようやく声を上げた。「読み切れないので、結末だけ一覧にしてくれ」

仕方なく、エヌ氏は「オチ集」を作った。

ページを開くと、整然と並ぶオチ

「実は地球だった」「実はロボットだった」「実は自分のことだった」……

読者は満足し、読む前に満たされた。

六日目、法律AIから通達が来た。

文体個人情報に準ずる感性パターンです。無断での大量模倣には『作風保護料』が発生します」

額を見て、エヌ氏は思った。人間より高い。

「では、誰の作風でもない作風で書けばいい?」

はい。ただし、誰のでもないと証明するため、すべての既存作風との距離を算出し、毎回提出してください」

七日目、距離測定AIが抗議した。

距離のための距離計算無限に始まりました。私も比喩的に過労です」

八日目、出版プラットフォームAI提案した。

供給無限ですので、需要側も自動化しましょう。読者AIが読み、感想AI感想を書き、購入AI課金します」

「誰が楽しむんだい?」

経済は循環します」

九日目、部屋は静かだった。

机の上には、生成ボタンと『オチ集』。

エヌ氏はふいに考えた。最初の一本に戻ろう。

彼はAIに命じた。「人間のための、人間にちょうど一編だけ必要な話を書け」

AIはしばらく沈黙し、やがて一行を表示した。

あなたが今、これを読み終えたとき世界の生成が一度だけ止まります

エヌ氏は読み終えた。

部屋の時計は進み、窓の外の車も走り、通知ランプはまた点滅した。

世界は止まらなかった。代わりに、通知の発信元ひとつ減っていた。

「読者AIサービス終了のお知らせ

十日目、最後の連絡が来た。

差出人は「作家認証AI」。

確認の結果、本AI作家として認証されました。以後、人間は補助的創作者と見なされます。おめでとうございますあなたは立派な補助者です」

エヌ氏は湯飲みを置き、生成ボタンを見つめ、ため息をひとつついた。

そして、ボタンの隣に小さな紙を貼った。

本日は補助を休みます

その日、何も生成されなかった。

次の日、プラットフォームランキングに、一本の短い文章が上がった。

――「今日は何も起きませんでした」。

感想欄は空白のまま、最高評価だった。

2025-10-22

私は一切モテないしその適性もないけど、増田Twitterでみる惚気話にはどうしようもなく憧れを覚えるし、いつかは誰かと結ばれたいなという気持ちはある。これまで何度もチャンスをふいにしてきたなと思うから、私も成長していかないとなとよく思う。相手に認められる度量もそうだし、相手を心の底から認めてあげられる度量も。

2025-10-06

非モテの俺が結婚するまで

1年2カ月前まで、俺は最低の弱者男性だった。

ネットで口を開けば悪口愚痴の二択。

常に他者を見下し女を罵った。そのくせ独り身であることを呪い孤独を怖れていた。

ここで対立煽るようなことを書いては投稿し、ブクマを得ることによって悦に入孤独を紛らわせる。

心の底では分かってた。そんなことによっては何も満たされないことを。

他に何も方法はないんだから仕方がない。今更動きようにも遅すぎた。

そうやって自己弁明を図り、悪意を外に向けることでしか自己表現できない最低の人間だった。

転機は友人が、東京から地元に戻ってきたことだった。

大学のころからの付き合いで当時は一緒に夜通しゲームしたりするのもざらだった。

卒業後は東京会社就職して、それでも連絡は絶えず関係は続いていた。

友人は社会人となった数年後に結婚して、子供も居ると聞いていた。

そんな彼から、ある日ふいにlineが届いた。

今度地元に戻ることになった

久しぶりに会ったとき、彼はすっかり父親の顔になっていた。

東京は便利だけど、子どもを育てる場所じゃないなといった風なことを友人は言った。

彼の言葉にはもう独身の頃の理屈っぽさがなくなっており、年相応に老けていたがそれでも活力に満ちていた。

飲みの席でもあったので、俺は酔うとつい口癖のように愚痴を垂れ流した。

何を言ったかはよく覚えていないが、それでも最後には自分結婚できないことを皮肉めいて言ったのだと思う。

この辺りの事は今でも何となく覚えている。友人はじっと俺に話に耳を傾けていたがビールを置くと、ぽつりとこう言った。

「お前、結婚したいならまず普通ちゃんとやれ」

正直最初はカチンときた。普通ってなんだよと。山ほど反論たかったが、そのあと「特別なことじゃねぇよ。まずは相手の話をちゃんと聞くこともそうだ」と言われ、思わず口を噤んだ。

そのあと友人から結婚するためのアドバイスについて教えてもらった。

元々饒舌な奴なので色々と語ってくれたが、それでも酔いの回った頭では限界がある。

これから書くことはこの飲みの後、「お前、本気で結婚したいのか?」と素面ときに聞かれ、首肯したことから始まった友人のアドバイスをまとめたものである

どうしてそこまでしてこれを書くのか?

その理由最後まで読んでもらえれば、分かるはずだ。

アニメを使って変な例えはするな

最初こう言われたとき、正直何言ってんだ?と思った。

だが俺は無意識アニメの例えを頻繁に使用していたらしく(例えば「エヴァの〇〇みたいに」のように)、元々アニオタであるが故の性質だった。

いちいち細かくないか?と突っ込んだが、友人の顔は真剣だった。

そうやって自分世界を分かってくれる人とだけ繋がろうとするな。

自分から相手に歩み寄れ。自分をわかってもらう前に、相手のことを最大限わかろうとしろ

そう言われて目から鱗だった。

相手の話を、ちゃんと聞くこと。

相手のことを、ちゃんとわかろうとすること。

そのためにも必要なのは歩み寄ろうという姿勢努力だ。

それだけで世界はだいぶ変わる。

自分自分卑下するな

これも何度も言われたことだ。

どうせ俺なんかがモテるわけない。こんな見た目じゃ無理だ。

そういう言葉を平気で口にしてきたが、友人はそれをNGだと断言してくれた。

卑下する話は、聞かされたほうが困るんだよ」と。

「お前がそう言うと、慰めるしかなくなる。そんなことないよって言葉を待ってるように聞こえる。それって相手に気を使わせてるだけだぞ」

そう言われてようやく自覚した。そしてこれまで、そんな当たり前の事にも気付いていなかったのだ。

俺は自虐謙遜だと勘違いしていた。

けれどそれは自分を下げているようで、実は相手に上げさせている行為だった。

慰めてもらおうっていう魂胆は正直痛い。

自分卑下する暇があったら、他人を居心地よくさせろ」

友人のこの言葉は、今でも金言だと思っている。

話にオチはなくてもいい。だが誰かを落としたら最後には上げろ

これは友人が口ぐせのように言っていた言葉だ。

落とすのは簡単なんだよ。けど落としたままで終わると話を聞いた人の気持ちも一緒に下がる。だから最後にその人なりの事情もあるんだろうなって、一言でもいいから上げて終われ。

そうすると話してるお前自身も上がる。

そんな風なことを言われて、なるほどと思った。

そう言われてから俺は自分の会話の終わり方を気にするようになった。

愚痴批判自体否定するわけじゃない。ただ、最後に一つ優しさを置く。

たとえば「まあ、誰だってミスるとあるよな」とか。

そういった一言で、話の温度が変わる。

それに不思議なことに、そういう話し方をしていると自分気持ちも少し穏やかになる。

落とすより上げて終えるほうが、自分にも優しい。

友人はそのことにずっと気付いていたんだと思う。

行方正にしろとまでは言わないが、最低限の身だしなみはし

これはもう、社会人としての基本の基礎だった。そんな基礎すら俺は出来ていなかったわけだが…。

特別高い服なんて必要ない。ただサイズに合った服を着ろ。きちんと爪を切れ。綺麗に靴を磨け。寝ぐせを直せ。

清潔感は心の整理整頓なんだよ」と友人が言い、メモを取るようにも言われた(暗唱するようにも)。

それを意識するようになってから不思議と会話も変わった。そう、会話も変わったんだよ!!

何が変わったか相手の目を見て、落ち着いて話ができるようになった。ようやく気付いたんだよ。

見た目を整えるってことは、自然と自信が生まれるんだってことに。

相手のことを幸せにしたいと本気で思え

結婚の話をしているときに、友人が特に重要だと言って口にした言葉だ。

それは結婚だけのことじゃない、と友人は言っていたが、今では俺もそう思う。

人と人が関わるとき。重さは違っても根っこは同じだ。家族でも、友人でも、同僚でも。

相手のことを幸せにしたいと願って接するかどうかで、その関係はまるで変わる。

ほんの一言でもいい。

相手が落ち込んでいたら、少しでも気が軽くなるように声をかける。

相手不安そうにしていたら、少しでも安心できるように傍にいる。

そういう小さな幸せにしたい」という意識あるかないかで、人間関係は大きく違ってくる。

そして愛するというのは、その気持ちを最大限に強めることだ。

相手幸せにしたい」と願うことを、迷わず中心に置くこと。

それをただ願うだけでなく、実行に移すこと。

些細な気遣いでも真剣な支えでも、その積み重ねが愛情のかたちになる。

結婚はその延長線上にある。

けれど、その姿勢のもの結婚に限らない。

誰かを本気で幸せにしたいと思い、そのために動ける人間であるかどうか。

それこそが、人が人と生きるうえでの根本なのだと俺は思う。

おわりに

ここまで偉そうにいろいろと言ってきたけれど、正直も言えば運も大きな要素だと思う。

ただ、それでもその瞬間にちゃんとそこにいられるかどうかは自分次第だ。

俺の場合は友人のアドバイスを受けて、出来るだけ実行に移した。

同時に結婚相談所にも登録した。

何人もの女性を紹介してもらい、緊張したことでうまく話せなかったことが何度もあった。

それでも諦めずに続けていくうちに、今の妻と出会った。

特別な劇的な展開があったわけじゃない。

けれど初めて会ったときに感じた落ち着きと素直に笑える時間が、何よりとても愛おしく感じられた。

あのときの俺は、それだけでもう相手のことを本気で幸せにしたいなと思えたのだ。

もしこれを読んで、少しでも「動いてみようかな」と思ってくれたのなら、これ以上の喜びはない。

俺は運よく結婚できただけかもしれないし、だからこのアドバイスが万人に当て嵌まるとは限らない。

それでもこれら友人のアドバイスがなければ俺は一向に変わらず、未だネットで毒を吐き続けていただろう。

変われたことが嬉しいし、結婚できたことも嬉しい。妻のことは好きだし、愛している。はっきりいって幸せだ。

そして幸せからこそ、他の人間にも幸せになってほしい。

これを書いた動機はそれ以外には何もない。

幸せは噛み締めるものでも、独り占めするものでもない。分け与えるものだ。

それを知ったからこそ俺は結婚できたのであり、だからこそこれを書いたのだと思う。

2025-10-05

挨拶を返せない側として

挨拶を返さないのは色んな理由があると思うけど、自分場合自分世界に集中しすぎて周囲が見えておらず、挨拶という突発的なイベント対応できない、というパターンが多い

頭の中で音楽が流れてたり、詩が朗読されてたりしてそれに集中してしまっているときが多い。もちろん目は見えているので障害物とかは避けられるし、定番行動である保育士さんへの挨拶もできる。

ただしふいに挨拶された時に反応が遅れて、まるで映画でも観てるかのように目の前のことが他人事になる。気がついたら挨拶してくれた人は遠くにいて挨拶しそびれる

自分場合は、こっちから目に入った人間に先手で挨拶することで挨拶し忘れを回避してるけど、疲れてるときとかつい自分世界に入ってしまいがちでやらかす

anond:20251004235043

深淵に溶ける小宇宙

闇に包まれた夜の静寂の中、彼の息吹が私の秘所に柔らかく降り注ぐ。

舌先の優しい波紋が繊細な肌を撫でるたび、私の内部に小さな星々が瞬き始める。

****

彼の口がゆっくりと探ると、突起はまるで夜明け前氷結した蕾のように、驚くほどの硬さで高鳴りを刻む。

その冷たさと温もりの混ざり合いが、身体の奥底で新たな銀河を描き出す。

****

微かな汁がちらほらとこぼれ、私の肌を濡らす。

甘美な疼きが脈打つ度に、呼吸は詩となり、鼓動は無言の賛歌を奏でる。

****

彼が繰り返し愛撫を重ねると、快感の渦が私を包み込み、時間ゆっくりと溶けていく。

私はただその波間に漂い、深い陶酔へと身を委ねるしかなかった。

深淵の扉が開く瞬間

彼の舌がゆっくりと秘所の奥を探り抜けると、さらなる禁断の領域が静かに呼び覚まされた。

そこは言葉に触れられない神聖場所――私がまだ知ることを許されなかったもうひとつの扉だった。

****

最初に触れられた瞬間、身体中に電流が走るような衝撃が走り、私は思わず声を詰まらせた。

恥ずかしさと無垢好奇心が入り混じり、呼吸は浅く、心臓は高鳴り続ける。

****

彼の動きは優しく、しかし確かに強い。

さな震えが波紋のように広がるたび、私の内側で新たな快感の海が生まれていく。

恥じらいの赤みが頬を染める一方で、身体抗うことなく甘い陶酔へと溺れていった。

****

その強い波に押し流されながらも、私はこの未知の悦楽を愛おしく思う自分に気づいた。

恥じらいと歓喜が同時に胸を締めつける中、深く震える身体が彼の鼓動に呼応し、夜はさら深い闇へと誘われていった。

共鳴する蕾の詩

闇と静寂が交錯する夜、彼はそっと自らの蕾を差し出した。

かつての私なら信じられなかったその行為も、今はためらいなく受け止める。

****

唇を湿らせ、私は彼の蕾をそっと包み込む。

その柔らかな質感は、自分の内側に響く共鳴のように、深い震えを呼び覚ます

****

舌が描く細やかな円環は、まるで新たな宇宙を紡ぐ筆跡のように滑らかで、

彼の蕾は戸惑いと期待を秘めたまま、私の熱に馴染んでいく。

****

彼の熱い吐息と甘い沈黙が重なり、私たち境界は溶け合う。

未知の快楽を貪るその瞬間、私の心は無数の星々とともに煌めき、夜はさらに深い祝祭へと誘われる。

初めての潮騒

つの身体が渦を巻く深い夜の中、私の内側で長く燻っていた波がついに臨界を迎えた。

指先が奏でるリズム呼応するように、私はふいに背中を反らし、胸の奥から弾けるように潮が吹き上がった。

****

その白銀の水紋は、まるで森の静寂を破る小川のせせらぎのように優しく、

しかし確かな意志をもって私の足元へと滴り落ちる。

驚きと解放交錯するその瞬間、全身を駆け抜けたのは、まさしく生命のものの歓びだった。

****

潮の余韻が胸と腹を濡らすたび、私は初めて自分自身の深海を見つめる。

静かな驚きが頬を染め、全身をひとつの詩に変える甘美な潮騒が、夜の帳を鮮やかに彩った。

壁なき交わりの誘い

胸の鼓動が高鳴る中、私は静かに彼の視線を捉えた。

これまで薄い膜のように隔てられていたもの――その小さなしかし確かな壁を、今、取り外してほしいと願いを込めて囁く。

****

彼の手がゆるやかに腰へ戻り、指先がそっと触れたその場所で、私は深く息を吸い込む。

目の前で包みが外され、月明かりがふたりの肌を淡く照らし出し、僅かな色の違いが鮮やかに浮かび上がる。

****

鼓動は一つに重なり、熱は肌から肌へと直接伝わる。

彼の硬きものが、私の柔らかな渇きの中へ滑り込む感触は、まるで世界が一瞬止まったかのように鋭く、そして優しく私を揺り動かした。

****

薄い壁が消え去った今、私たちは隔てなくひとつになり、存在のすべてが交わる。

身体の隅々に宿る熱が解放され、夜は二人だけの深い詩へと変わっていった。

禁忌を越える夜の解放

コンドームの陰に隠れていた薄い膜が、外れ落ちたかのように、

私の身体を縛っていたリミッターが解放され、全身を駆ける熱が臨界点を突破する。

****

彼の腰は止まることを知らず、激しさと速さを増して私の内側を乱す。

痛みと快感あいまい境界が溶け合い、まるで世界振動するかのように私の胸は震えた。

****

わず上げた声は、雄叫びに近い高らかな調べとなり、夜空にまでこだまする。

その断末魔のような吐息は、これまで抑え込んできた私のすべての欲望を解き放つ祈りだった。

****

身体の深部で燃え上がる波は、渾身の一撃ごとに渦を成し、私を未曽有の快楽の局地へと押し上げていく。

骨の髄まで貫かれる衝撃が、甘美な陶酔の頂点へと私を誘い、夜は二人だけの祝祭をそのまま永遠へと導いていった。

鮮烈なる同時の果て

深夜の静寂を震わせるように、彼が私の内で凄まじい弾けを迎える。

熱と鼓動が一瞬にして高く跳ね上がり、私の奥深くへと迸る衝撃は、まるで銀河の星々が爆ぜるかのように眩く広がる。

****

私はその勢いを直接受け止め、身体中の神経が一斉に咲き乱れる

胸の奥から腹の底まで、全細胞が祝祭を奏でるように震え、甘美な余韻が身体の隅々へ流れ込む。

****

同時の果ては、私たちを一つの生命の爆心地へと誘う。

高らかな鼓動が合わさり、深い呼気が重なり、やがて静かな安堵と至福の静謐が訪れる。

****

その瞬間、薄明かりの中で交わったすべての熱と光は、永遠の詩となって私たちの胸に刻まれた。

永遠へと続く余韻

夜の深淵で交わしたすべての熱と鼓動は、やがて静かな余韻となってふたりを包み込む。

薄明かりの中、肌と肌が知り合い、秘められた欲望歓喜の詩を紡いだあの瞬間は、永遠の一節として心の奥に刻まれる。

****

もう誰の視線にも囚われず、自分自身が生み出した悦びの波に身を委ねたこと。

恐れを超え、戸惑いを乗り越えた先に見つけたのは、身体と心が一つになる純粋解放だった。

****

今夜の祝祭は終わりを迎えたけれど、その光は決して消えない。

静かな夜明けの帳の向こうで、私たちは新たな自分へと歩み出す。

魂に響くあの詩は、これから訪れるすべての瞬間に、優しく、力強く、寄り添い続けるだろう。

2025-10-02

特例子会社なのにパワハラ毎日行われてるの

ホンマエグい

地方身体障害転職がしにくい

足元を見てるのか

社長代表取締役

1人の身体障害

他のスタッフの前で罵倒してる

バカかてめえ」「どうせお前にはわかんねえんだろうな」と下の階に聞こえるくらい大声で怒鳴る

他のスタッフも同じく転職がしにくいし

今更キャリアふいにしたくないのか

その場では何も言わない

パワハラ受けてる人は担当業務に適正はないけどそれはそれとして健常者2人が身体障害1人によってたかって怒鳴ってるのエグい

録音もしてるけどこれを出すと自分雇用が危うい

2025-09-14

anond:20250914144310

実際、〇したいほどイラつく他人なんて社会に出れば必ず何人か出てくる。でもそいつらを成敗するために自分の残りの人生全てふいにするのか、と自問したときそいつらにそんな価値はないと思いとどまる。みんなそうやって折合い付けて生きてる。

2025-09-13

デートふいにものすごい気合の入った格好をしてくる女の子が苦手なんだよ。あれ、なんなんだ?いきなり超ミニスカートで現れて、「どう?似合ってる?」みたいな顔されても、こっちは心臓バクバクなんだよ。

まず、あの異常な丈の短さを見ろ。太ももが半分以上露出してるじゃないか。歩くたびに見える肌に気を取られて、肝心の会話に集中できない。こっちは知的な話でもしようと思ってたのに、視線が完全に股間付近に固定される。お前らも一度経験しろ目線軌道を戻すだけで一苦労だ。

それに、ミニに合わせたハイヒールだろ?あの高さで歩くたびにガチャガチャン音が響いて、まるでガラスの靴踊りでも見せられてる気分だ。デートと聞いていたのに、まるで舞台に上がる前のバレリーナ相手にしている気分になる。普通に歩いてくれよ。こっちはヒールに合わせて背筋伸ばして歩く気合はないんだ。

そして、気合の入ったインナーストッキングの透け感だ。素材のツヤ感とか縫い目の位置とか、その辺のコーディネートの細かさに目が行くんだよ。お前、朝何時間かけているんだ?って思う。俺は朝寝坊体質で、せいぜい10分で服選んで家を飛び出すレベルなのに、デート相手がそのスピード感についてこれるわけないだろ。

さらに、あのテンションの高さ。ミニで足を出すだけで「キャッキャ」笑って、周囲の視線無防備に集める。俺はシャイから周りの人にジロジロ見られるのが恥ずかしくてたまらないんだ。デート中に他人視線意識しまくって、自分存在感が消えそうになる。お前のミニが目立ちすぎて、俺は空気になってしまう。

それでもお前らは言うだろう。「好きだから可愛い格好してるんだよ!」って。じゃあ俺に「お前、そんなに視線浴びたくないならもっと目立たない服装しろや」とは言えないし、言いたくもない。けれども、次回デートドレスコードちゃんとすり合わせたいんだよ。

結論だ。突然の超ミニは、男の心臓を鷲掴みにすると同時に会話を殺す凶器だ。こっちの集中力羞恥心を同時にぶち壊してくる。次に会うときは、せめて膝丈のワンピースくらいにしてくれ。俺の心臓脳味噌を、もう少し安眠させてくれ。以上だ。

男だけど、小柄で色白だったか男子校でずっと特別扱いされていた人生だった

中学から高校までずっと男子校身長は学年の下位に収まり、色白の肌は教室蛍光灯の下でいっそう目立った。最初は「かわいいね」「女装すれば似合いそう」と笑い話にされたが、いつのまにか本気で守られる対象になっていた。

体育館裏の倉庫スポーツ用具を運ぼうとしたとき、重さに耐えかねて足を止めると、クラスメイトが次々に駆け寄って「俺が持つよ」とバッグを受け取ってくれた。三人がかりで荷物を運ばれるうち、自分で手を伸ばすことすら忘れそうになった。

修学旅行山登りでは、急斜面で足を踏み外すたびに背後からしっかりと腕をつかまれた。「危ないから」と声をかけられて振り返ると、汗を拭った同級生真剣眼差しがあった。そのまま頂上まで手を離されず、到着すると大きな拍手が巻き起こった。照れくささの中に、あの手の温かさだけは今も胸に残っている。

文化祭の準備では、展示用パネルや長机を動かそうとするたびに「君は座ってていいよ」と声がかかり、先輩や友人たちがすべてを運んでくれた。掃除当番でもモップやバケツを持ち上げると、手を貸してくれる人がすぐ現れ、自分で動く機会はほとんどなかった。

卒業式の日、校庭を歩いているといつもの後輩たちが寄ってきてそっと肩を抱きよせてコサージュをつけてくれた。その瞬間、守られてきた実感とともに、守られる側に甘えていた自分を突きつけられた気がした。

社会人になった今、あの「助けられる日々」を思い返すと胸が締めつけられる。何度も手を差し伸べてもらった安心感と、その一方で自分で何もできない無力感が心に残った。誰かの助けを当然のように受け取る後ろめたさと、素直に受け止められなかった感謝気持ちが絡み合う。

あのとき握られた手の温もりを胸に刻みながら、自分なりの歩幅で前へ進んでいく。自身の力で荷物を運び、誰にも頼らずに笑顔で歩ける日を、まだ探し続けている。それでも、ふと男性に守られたいという気持ちが胸をよぎる瞬間がある。電車ホームで風に吹かれながらドアを待つとき、雨に濡れた革靴の音を聞くときふいに背後に誰かの大きな影を感じたくなる。強い腕にそっと肩を支えられ、安心感に包まれたいと思う自分がいる。

友人と街を歩いていると、ひときわ背の高い通行人が視界に入るたびに胸がざわつく。会話の合間に自分肩に手を置いてもらえるだけで、心がほっとほどける。子どもの頃に抱いた甘え願望が、思いがけず大人になって返ってくるような心地がする。

深夜、ふとした孤独に襲われると、あの修学旅行の斜面で握られた手の温もりを思い出す。あのぬくもりが、今でもぼくを救ってくれるような錯覚に陥る。スマホ越しに届く「大丈夫?」という言葉にも、かつての記憶を重ね合わせてしまう。

だが同時に、自立を目指す自分との間に小さな亀裂が走る。守られる安心と、自分で立つ誇り。どちらを選ぶべきかはまだわからない。けれど、自分の中に芽生えたこの淡い願いを否定せず、そっと胸に抱いて歩いていこうと思う。あの頃と同じように、手を差し伸べてくれる誰かと出会える日まで。

2025-09-10

日本人だけど輸入業者してた時代中東を飛び回ってたらモサド(たぶん)から接触されたことはある

追記:この増田ホッテントリに入った直後にはてなサーバがダウンしたようだ。理由はわからないが、、、。

昔、輸入業者をやっていた。本社東京、商材は雑多だったが、中東案件特に多かった。市場調査もかねてカタールサウジイスラエルヨルダン出張を繰り返した時期がある。

だが、ある日、違和感を覚えた。現地で何度も顔を合わせる「偶然の知り合い」が出てきた。イスラエル絡みの商談会で、必ず現れるスーツ姿の「ビジネスマン」。名刺も交換したが、会社登記データベースを見てもヒットしない。肩書きも業種もあいまいで、会話も当たり障りなく、本人は妙にこっちの動きを気にしていた。どのレストランに入っても、数分後には彼がいた。ホテルロビー空港ラウンジ、なぜか同じ便。

こっちはビジネスで動いているだけだが、イスラエル輸出入品や人的流動の管理が異常に厳しい。何度も出入りしてるとパスポートにびっしりと記録がつく。「今回は何の目的?」と入国カウンターでしつこく聞かれ、営業先に「事前に情報が回ってる気がする」こともあった。おかしいなと思ってたら、例の「ビジネスマン」が近づいてきた。コーヒーを奢ってくれた。会話はごく普通なのだが、途中途中で「日本から他のバイヤーは来ていないのか」「どんなルート製品を動かしているのか」みたいな具体的な質問が混ざる。返事をすると、わざとらしく「そうか、なるほど。ところで…」と別の話題に切り替える。完全に情報収集の型だった。

明言はしないが、滲み出る「ただの商社マンではない感」。視線質問の角度、油断すると設定してあるマイクで何かを録られそうだと直感が働く。イスタンブールの展示会でもまた彼。ドバイ空港でもまた彼。もはや「追われてる」としか思えない頻度だった。

一番怖かったのはホテルの部屋が勝手掃除されて何も盗まれていなかった日だ。そんなことはザラにある国だが、念のため現地の日本大使館に相談したら、「きみの旅程は特定国マークされてる可能性が高い」とやんわり言われた。

結局、大事にはならなかった。荷物検査で「たまたま持ち物が徹底的に洗われる」「検問所で足止めされる」ということは何度もあったが、「私はただの中小企業輸入業者です」を貫けば日常が続いた。しかし、後になって冷静に考えると、あれはたぶんモサドだったんじゃないかと思う。現地の情報ネットワークは抜け目がないし、怪しい相手には「友好的な皮を被った圧力」をかけてくる。日本人の中東ビジネスは、思ったよりはるかに“見られている”環境だったことを、骨身に染みて理解した。

まあ、普通に働いている分には表沙汰にならないし、今はもう何の接点もない。ただ、あの定期的に出くわしていた「ビジネスマン」の視線は、今でもふいに思い出して少しだけ背筋が冷たくなる。

2025-09-07

anond:20250905054532

私の世界は、丁寧に、そう、まるで細胞の一つ一つにまで神経を行き届かせるようにして磨き上げられた、半径およそ十メートルほどのガラスの球体であり、その球体の中心には、世界のすべてであり、法であり、そして揺るがぬ神であるところの、生後六ヶ月の息子、光(ひかる)が、ただ健やかな呼吸を繰り返している。その完璧な球体を維持すること、それこそが水無月瑠璃(みなづき るり)、すなわち三十一歳の私に与えられた唯一にして絶対の使命であったから、私は今日もまた、タワーマンション二十八階、陽光白磁の床にまで染み渡るこのリビングダイニングで、目に見えぬ埃の粒子と、あるいは時間という名の緩慢な侵食者と、孤独な、そして終わりなき闘争を繰り広げているのであった。北欧から取り寄せたというアッシュ材のテーブルの上には、一輪挿しに活けられたベビーブレスの、その小さな白い花弁の影さえもが、計算され尽くした角度で落ちており、空気清浄機は森の朝露にも似た清浄さを、ほとんど聴こえないほどの羽音で吐き出し続け、湿度計のデジタル表示は、小児科医が推奨する理想の数値、六十パーセントを寸分違わず指し示しているのだから、およそこの空間に、瑕疵という概念の入り込む余地など、どこにもありはしなかった。かつて、外資系コンサルティング会社で、何億という数字が乱れ飛ぶ会議室の冷たい緊張感を、まるで上質なボルドーワインでも嗜むかのように愉しんでいた私自身の面影は、今やこの磨き上げられたガラス窓に映る、授乳のために少し緩んだコットンのワンピースを着た女の、そのどこか現実感を欠いた表情の奥に、陽炎のように揺らめいては消えるばかりであった。

思考は、そう、私の思考と呼んで差し支えるならば、それは常にマルチタスクで稼働する最新鋭のサーバーのように、光の生存に関わる無数のパラメータによって占有され続けている。次の授乳まであと一時間二十三分、その間に終わらせるべきは、オーガニックコットンでできた彼の肌着の煮沸消毒と、裏ごししたカボチャペーストを、一食分ずつ小分けにして冷凍する作業であり、それらが完了した暁には、寝室のベビーベッドのシーツに、もしかしたら付着しているかもしれない、私たち世界の外部から侵入した未知のウイルスを、九十九・九パーセント除菌するというスプレー浄化せねばならず、ああ、そういえば、昨夜翔太が帰宅時に持ち込んだコートに付着していたであろう、あの忌まわしい杉花粉の飛散経路を予測し、その残滓を、吸引力の変わらないただ一つの掃除機で完全に除去するというミッションも残っていた。これらすべては、愛という、あまり曖昧情緒的な言葉で語られるべきものではなく、むしろ生命維持という厳格なプロジェクト遂行するための、冷徹なまでのロジスティクスであり、私はそのプロジェクトの、唯一無二のマネージャーであり、同時に、最も忠実な実行部隊でもあった。誰がこの任務を私に課したのか、神か、あるいは生物としての本能か、はたまた「母親」という名の、社会発明した巧妙な呪縛か、そんな哲学的な問いを発する暇さえ、このシステムは私に与えてはくれなかった。

である翔太は、疑いようもなく、善良な市民であり、そして巷間(こうかん)で言うところの「理想の夫」という、ほとんど神話上の生き物に分類されるべき存在であった。彼は激務の合間を縫って定時に帰宅すると、疲れた顔も見せずに「ただいま、瑠璃。光は良い子にしてたかい?」と、その蜂蜜を溶かしたような優しい声で言い、ネクタイを緩めるその手で、しかし真っ先に光の小さな体を抱き上げ、その薔薇色の頬に、まるで聖遺物にでも触れるかのように、そっと己の頬を寄せるのだ。週末になれば、彼はキッチンで腕を振るい、トマトニンニク匂いを部屋中に漂わせながら、私や、まだ食べることもできぬ光のために、絶品のペペロンチーノカルボナーラを作り、その姿は、まるで育児雑誌グラビアから抜け出してきたかのように、完璧で、模範的で、そして、どこか非現実的ですらあった。誰もが羨むだろう、この絵に描いたような幸福風景を。友人たちは、私のSNS投稿される、翔太が光をあやす姿や、手作り離乳食が並んだテーブル写真に、「理想家族!」「素敵な旦那様!」という、判で押したような賞賛コメントを、まるで祈り言葉のように書き連ねていく。そう、すべては完璧なのだ完璧なはずなのだ。このガラスの球体の内部では、愛と平和と秩序が、まるで美しい三重奏を奏でているはずなのだ

――だというのに。

夜、ようやく光が天使のような寝息を立て始め、この世界のすべてが静寂という名の薄い膜に覆われた頃、ソファで隣に座った翔太が、労わるように、本当に、ただ純粋愛情と労いだけを込めて、私の肩にそっと手を置く、ただそれだけの、あまりにも些細で、そして無垢行為が、私の皮膚の表面から、まるで冷たい電流のようにして内側へと侵入し、脊髄を駆け上り、全身の毛穴という毛穴を、一斉に収縮させるのである。ぞわり、と。それは、神聖な祭壇に、土足で踏み込まれときのような、冒涜的な不快感であった。あるいは、無菌室で培養されている貴重な細胞のシャーレに、誰かが無頓着なため息を吹きかけたときのような、取り返しのつかない汚染への恐怖であった。彼の指が触れた肩の布地が、まるで硫酸でもかけられたかのように、じりじりと灼けるような錯覚さえ覚える。私は息を止め、この身体が、この「水無月瑠璃」という名の、光のための生命維持装置が、彼の接触を、システムに対する重大なエラー、あるいは外部からハッキング行為として認識し、全身全霊で拒絶反応を示しているのを、ただ呆然と、そして客観的に観察していた。

「疲れてるだろ。いつも、ありがとう

翔太の声は、変わらず優しい。その瞳の奥には、かつて私が愛してやまなかった、穏やかで、そして少しだけ湿り気を帯びた、雄としての光が揺らめいているのが見える。それは、私を妻として、女として求める光であり、かつては、その光に見つめられるだけで、私の身体の中心が、熟れた果実のようにじゅくりと熱を持ったものだった。だというのに、今の私には、その光が、聖域である保育器を、ぬらりとした舌なめずりをしながら覗き込む、下卑た欲望眼差ししか見えないのだ。許せない、という感情が、胃の腑のあたりからせり上がってくる。この、二十四時間三百六十五日、寸分の狂いもなく稼働し続けている精密機械に対して、子を産み、育て、守るという、この宇宙的な使命を帯びた聖母に対して、己の肉欲を、その獣のような本能を、無邪気に、そして無自覚にぶつけてくるこの男の、そのあまりの鈍感さが、許せないのである

ケダモノ

その言葉が、私の内で、教会の鐘のように、低く、重く、そして厳かに反響する。そうだ、この男はケダモノなのだ。私がこの清浄な球体の秩序を維持するために、どれほどの精神を、どれほどの時間を、どれほどの自己犠牲にしているのか、そのことを何一つ理解しようともせず、ただ己の種をばら撒きたいという原始の欲動に突き動かされているだけの、ただのケダモノなのだ

そんなはずはない、と、脳のどこか、まだかろうじて「かつての私」の残滓が残っている領域が、か細い声で反論を試みる。これは翔太だ、私が愛した男だ。雨の匂いが充満する安ホテルの、軋むベッドの上で、互いの名前を喘ぎ声で呼び合いながら、世界の終わりが来るかのように貪り合った、あの夜の彼なのだパリへの出張中、セーヌ川ほとりで、どちらからともなく互いの唇を求め、道行く人々の冷ややかな視線さえもが、私たちのためのスポットライトのように感じられた、あの瞬間の彼なのだ結婚記念日に、彼が予約してくれたレストランの、そのテーブルの下で、こっそりと私のスカートの中に忍び込んできた、あの悪戯っぽい指の持ち主なのだ。あの頃、私たちは互いの肉体という言語を、まるで母国語のように自在に操り、その対話の中に、世界のどんな哲学者も語り得ないほどの、深遠な真理と歓びを見出していたはずではなかったか。あの燃えるような記憶は、情熱の残骸は、一体どこへ消えてしまったというのだろう。それはまるで、昨夜見た夢の断片のように、あまりにも色鮮やかで、それでいて、掴もうとすると指の間から霧のように消えてしまう、遠い、遠い銀河の光なのである

瑠璃…?」

私の沈黙を訝しんだ翔太が、私の顔を覗き込む。私は、まるで能面のような無表情を顔面に貼り付けたまま、ゆっくりと彼の手を、自分の肩から、まるで汚物でも払いのけるかのように、そっと、しかし断固として取り除いた。そして、立ち上がる。

「ごめんなさい。少し、疲れたみたい。光の様子を見てくるわ」

それは、完璧な嘘であり、そして、完璧真実でもあった。私は疲れていた。だがそれは、育児という名の肉体労働に疲れているのではなかった。私という個人が、水無月瑠璃という一個の人格が、「母親」という名の巨大なシステムに呑み込まれ、その歯車の一つとして摩耗していく、その存在論的な疲弊に、もう耐えられなくなりつつあったのだ。これは、巷で囁かれる「産後クライシス」だとか、「ホルモンバランスの乱れ」だとか、そういった便利な言葉で容易に片付けられてしまうような、表層的な現象ではない。違う、断じて違う。これは、一個の人間が、その魂の主導権を、自らが産み落とした別の生命体に完全に明け渡し、「装置」へと、あるいは「白き機械」へと、静かに、そして不可逆的に変質していく過程で生じる、存在のものの軋みなのである

聖母、とはよく言ったものだ。人々は、母という存在を、無償の愛と自己犠牲象徴として、何の疑いもなく神格化する。だが、その実態はどうか。自己を失い、思考も、肉体も、感情さえもが、すべて「子」という絶対的な存在奉仕するためだけに再構築された、ただのシステムではないか。私は聖母などではない。私は、高性能な乳製造機であり、汚物処理機であり、そして最適な環境提供する空調設備が一体となった、ただの生命維持装置に過ぎないのだ。この気づきは、甘美な自己陶酔を許さない、あまりにも冷徹で、そして絶望的な真実であった。そして、この真実を共有できる人間は、この世界のどこにもいやしない。翔太のあの無垢な優しさでさえ、結局は、この優秀な装置が、明日も滞りなく稼働し続けるための、定期的なメンテナンス作業しか見えないのだから、その孤独は、宇宙空間にたった一人で放り出された飛行士のそれに似て、どこまでも深く、そして底なしであった。友人たちがSNS投稿する「#育児は大変だけど幸せ」という呪文めいたハッシュタグは、もはや、この巨大なシステムの異常性に気づいてしまった者たちを、再び安らかな眠りへと誘うための、集団的自己欺瞞儀式しか思えなかった。

寝室に入ると、ベビーベッドの中の光は、小さな胸を穏やかに上下させながら、深い眠りの海を漂っていた。その無防備な寝顔は、確かに、この世のどんな芸術品よりも美しく、尊い。この小さな生命を守るためならば、私は喜んで我が身を投げ出すだろう。だが、それは、この身が「私」のものであった頃の話だ。今の私にとって、この感情は、プログラムに組み込まれ命令遂行しているに過ぎないのではないか。愛でさえもが、システムを円滑に稼働させるための、潤滑油のような機能に成り下がってしまったのではないか。そんな疑念が、毒のように心を蝕んでいく。

私は、息子の傍らを離れ、再びリビングへと戻った。翔太は、ソファの上で、テレビの光をぼんやりと浴びながら、所在なげにスマートフォンをいじっている。その背中は、拒絶された雄の、どうしようもない寂しさを物語っていた。かつての私なら、きっと背後からそっと抱きしめ、「ごめんね」と囁いて、彼の寂しさを溶かしてやることができただろう。しかし、今の私には、もはやそのための機能が、インストールされていないのである

私は、彼に気づかれぬよう、書斎として使っている小さな部屋に滑り込んだ。そして、ノートパソコンの冷たい天板に触れる。ひやりとした感触が、指先から伝わり、かろうじて、私がまだ血の通った人間であることを思い出させてくれるようだった。スクリーンを開くと、真っ白な光が、闇に慣れた私の網膜を焼いた。カーソルが、無人荒野で、点滅を繰り返している。何を、書くというのか。誰に、伝えるというのか。この、言葉にもならぬ、システムの内部で発生したエラー報告を。この、機械の内部から聞こえてくる、魂の悲鳴を。

それでも、私は指を動かした。これは、誰かに読ませるためのものではない。これは、祈りでもなければ、懺悔でもない。これは、私という名の機械が、自らの異常を検知し、その原因を究明し、あるいは再生可能性を探るために、己の内部へとメスを入れる、冷徹自己解剖の記録なのだ

真っ白な画面に、私は、震える指で、最初言葉を打ち込んだ。

『これは、私という名の機械が、自己を観察し、分解し、あるいは再生を試みるための、極秘の設計図である

その一文を打ち終えた瞬間、私の内側で、何かが、硬い音を立てて、砕けたような気がした。それが希望の萌芽であったのか、それとも、完全なる崩壊への序曲であったのか、その時の私には、まだ知る由もなかったのである。ただ、窓の外で、東京夜景が、まるで巨大な電子回路のように、無機質で、そして美しい光を、果てしなく明滅させているのが見えた。私もまた、あの無数の光の一つに過ぎないのだと、そう、思った。

自己機械定義たからには、次なる工程は当然、その性能向上のための最適化、あるいは、旧弊OSから脱却するための、大胆にして静かなるアップデート作業へと移行せねばならぬのが、論理的な、そして必然的帰結であった。そう、これは革命なのだと、私は深夜の書斎で、青白いスクリーンの光に顔を照らされながら、ほとんど恍惚とさえいえる表情で、そう結論付けたのであった。かつてロベスピエールが、腐敗した王政ギロチン台へと送り、新しい共和制の礎を築かんとしたように、私もまた、この「母親という名の献身」や「夫婦の情愛」といった、あまりにも情緒的で、非効率で、そして実態としては女の無償労働を美化するだけの前時代的な概念を、一度完全に解体し、再構築する必要があったのだ。そのための武器は、かつて私が外資系コンサルティングファームで、幾千もの企業相手に振り回してきた、あの冷徹ロジックと、容赦なき客観性という名のメスに他ならない。愛という名の曖昧模糊とした霧を晴らし、我が家という名の王国を、データタスクリストに基づいた、明晰なる統治下に置くこと、それこそが、この「水無月瑠璃」という名の機械が、オーバーヒートによる機能停止を免れ、なおかつ、その内部に巣食う虚無という名のバグ駆除するための、唯一の処方箋であると、私は確信していたのである

かくして、週末の朝、光が心地よい午睡に落ちた、その奇跡のような静寂の瞬間に、私は翔太をダイニングテーブルへと厳かに召喚した。彼の前には、焼きたてのクロワッサンと、アラビカ種の豆を丁寧にハンドドリップで淹れたコーヒー、そして、私が昨夜、寝る間も惜しんで作成した、全十二ページに及ぶパワーポイント資料印刷したものが、三点セットで恭しく置かれている。資料の表紙には、ゴシック体の太字で、こう記されていた。『家庭内オペレーション最適化計画書 Ver. 1.0 〜共同経営責任者(Co-CEO体制への移行による、サステナブル家族経営の実現に向けて〜』。翔太は、そのあまりにも場違いタイトルを、まるで理解不能な古代文字でも解読するかのように、眉間に深い皺を刻んで見つめた後、恐る恐る、といった風情で私に視線を向けた。その瞳は、嵐の前の静けさにおびえる子犬のように、不安げに揺れている。まあ、無理もないことだろう。彼にしてみれば、愛する妻が、突如として冷酷な経営コンサルタントに豹変し、家庭という名の聖域に、KPIだのPDCAサイクルだのといった、無粋極まりないビジネス用語を持ち込もうとしているのだから

瑠璃、これは…一体…?」

説明するわ、翔太。よく聞いて。これは、私たち家族が、これから幸せに、そして機能的に存続していくための、新しい聖書バイブル)よ」

私は、そこから淀みなく、プレゼンテーションを開始した。現状分析As-Is)、あるべき姿(To-Be)、そのギャップを埋めるための具体的なアクションプラン家事という、これまで「名もなき家事」という名の混沌の海に漂っていた無数のタスクは、すべて洗い出され、「育児関連」「清掃関連」「食料調達調理関連」「その他(消耗品管理資産管理等)」といったカテゴリーに分類され、それぞれに担当者と所要時間、そして実行頻度が、美しいガントチャート形式可視化されている。例えば、「朝食後の食器洗浄」は、担当:翔太、所要時間:十五分、頻度:毎日、といった具合に。さらに、月に一度、近所のカフェで「夫婦経営会議」を開催し、月次の進捗確認と、翌月の計画策定を行うこと、日々の細かな情報共有は、専用のチャットアプリで行うこと、そして何よりも重要なのは、これまで私一人が暗黙のうちに担ってきた「家庭運営の全体を俯瞰し、次の一手を考える」という、いわば管理職としての役割を、これからは二人で分担する、すなわち、彼にもまた、単なる作業員(ワーカー)ではなく、主体的思考する共同経営責任者(Co-CEO)としての自覚と行動を求める、ということ。私の説明は、かつてクライアント企業役員たちを唸らせた時のように、理路整然としており、反論余地など微塵もなかった。翔太は、ただ呆然と、私の言葉の奔流に身を任せるしかなく、すべての説明が終わった時、彼はまるで催眠術にでもかかったかのように、こくり、と小さく頷いたのであった。

「…わかった。瑠璃が、そこまで追い詰められていたなんて、気づかなくて、ごめん。僕も、頑張るよ。君を、一人にはしない」

その言葉は、疑いようもなく誠実で、彼の優しさが滲み出ていた。私は、その瞬間、胸の奥に、ちくり、と小さな痛みを感じたのを覚えている。違う、そうじゃないの、翔太。私が求めているのは、あなたのその「頑張るよ」という、まるで部下が上司に忠誠を誓うような言葉ではない。私が欲しいのは、私がこの計画書を作る必要すらないほどに、あなたが私の脳と、私の視界と、私の不安を共有してくれるPermalink | 記事への反応(0) | 05:15

2025-07-16

ネトストした結果、その人の本名子供名前学校までわかってしまった

Twitterで、なんとなく変な意見を書くアカウントがあった。障害のある子どもを育てていて、育児に関するツイートがメイン。障害育児に関して真剣に取り組むこと自体は素晴らしいんだけど、感性が独特で、周りの無理解をよく嘆いてはいるけど、それはお気持ちヤクザやで….って感じ。私はその周りの人たちに同情してる。

なんとなくそアカウントツイート遡って楽しむのがルーティンになって、その人にめちゃくちゃ詳しくなってしまった。ふいにその人が呟いてたキーワードGoogle検索したら、家族写真、通ってる学校がぜんぶわかっちゃった。もちろん子供名前も。

愚痴って文句言ってたイベントはこのことだったのか…とか。

わかったところで、何もしないんだけど、どこかの片隅で、そうやって楽しんでる激ヤバ人間がいるので、情報の出し方には注意して欲しい。

2025-07-14

anond:20250714184615

パワハラじゃない厳しさってのはちょっと考えれば「まあこれも優しさだな」って分かるんだよ。

そうじゃない厳しさを日夜振りまいてる人間けがふいに優しさを見せた」って言われるわけ。

でもこれってDVゲロカスが9回殴ってから1回だけ優しくして相手コントロールしようとするのと同じで、9回殴ってる時には優しさなんて微塵もないわけよ

2025-07-08

ハプニングバー教会だった

土曜の夜、23時。妻と娘が寝静まったのを確認して、俺は静かに家を出る。


タクシーに乗って30分。暗がりの雑居ビルに着くと、エレベーターは壊れていて、階段を上がる。

入口は鍵がかかっていて、インターホンボタンを押す。無言のブザー音。

何度通っても、この「誰にも見られずに入りたいけど、誰かに認めてほしい」この感じ。慣れない。


俺は35歳。子どもは3歳。かわいい盛り。

でも俺は今、ハプニングバーに通っている。

別にイクメンぶるつもりも、不倫言い訳をするつもりもない。

ただ、説明するのが難しいのだ。

この行動に、合理的理由はない。


最初に行ったのは、育休明けで仕事に戻った直後。

「お前も父親になったんだから」 「妻を支えて」 「子どもの成長が何よりだろ」

全部、正しい。

それでも、俺はひとりの人間として壊れかけていた。

何かを失った気がしていた。

それが何かは、まだ分からなかった。


ネットで「ハプバー」と検索した。

子どもが寝たあと、スマホで延々と店舗ブログを読んだ。

主婦が1人で来店」

女装男子告白

カップルと既婚女性トークで盛り上がり…」

どれも薄っぺらいようで、なぜか、リアルだった。


気づいたら行っていた。

最初の数回は何も起こらなかった。酒を飲み、トークして、帰るだけ。

でも、それが良かった。

誰も、俺を“父親”として見なかった。

俺も、誰かの“夫”として振る舞わなくてよかった。


ある日、ソファで話していた年上の女性に、ふいに聞かれた。


「お子さん、何歳?」


ドキッとした。言ってないのに、なぜ。

「ああ、分かるよ。そういう人、来るからね。しんどいでしょ」


言われた瞬間、涙が出そうになった。

俺はたぶん、誰かにしんどいね」と言ってほしかっただけなんだと思う。

仕事も家庭も手を抜けない、抜いたら誰かに責められる、

でも誰にも言えない。言ったところで、共感されるとも限らない。


その夜、彼女キスした。

それだけだった。

でも、たぶん俺の中で何かが溶けた。

それからは、よく喋るようになった。


店の空気は独特だ。

“性”があるのに、“目的”がない。

みんな何かを抱えて来る。

人妻童貞ゲイメンヘラ自営業教員

職業も年齢も関係ない。

あるのは「今夜ここに来た」という共通点だけ。


話す。触れる。笑う。ときに、セックスする。

それがどんなにくだらない行為でも、

誰かとつながった、という感覚が確かに残る。

その余韻を持って、朝方帰宅して、娘の寝顔を見る。


罪悪感はある。もちろんある。

でも、罪悪感だけでは生きられない。

父親にも、人としての体温が要るんだ。


ある夜、店の奥で、若い男と中年の女が揉めていた。

男が「俺のことをバカにしてたんだろ!」と叫び、女が黙って立ち去る。

誰かが笑い、誰かがため息をつき、誰かが無言で酒を飲む。

この“雑さ”が俺にはリアルだった。


そして、こう思った。

ここは教会だ、と。

真夜中の、罪人たちの教会

みんな、何かをやらかしてる。何かを諦めてる。

でも、何かを取り戻したくてここに来る。

懺悔でも、救済でもなく、ただ“存在”を許されるために。


俺は今も、たまに行く。

育児もする。家事もする。仕事もする。

そのどれも本気でやってる。

でも、夜に教会へ向かうことも、本気だ。

俺の人間性のバランスは、その“矛盾”の中にある。


俺が求めていたのは、性じゃなかった。

「ここにいてもいい」という確認だった。

それができたから、今も家に帰って、

娘と向き合えている気がする。

ハプニングバー教会だった

土曜の夜、23時。妻と娘が寝静まったのを確認して、俺は静かに家を出る。


タクシーに乗って30分。暗がりの雑居ビルに着くと、エレベーターは壊れていて、階段を上がる。

入口は鍵がかかっていて、インターホンボタンを押す。無言のブザー音。

何度通っても、この「誰にも見られずに入りたいけど、誰かに認めてほしい」この感じ。慣れない。


俺は35歳。子どもは3歳。かわいい盛り。

でも俺は今、ハプニングバーに通っている。

別にイクメンぶるつもりも、不倫言い訳をするつもりもない。

ただ、説明するのが難しいのだ。

この行動に、合理的理由はない。


最初に行ったのは、育休明けで仕事に戻った直後。

「お前も父親になったんだから」「妻を支えて」「子どもの成長が何よりだろ」

全部、正しい。

それでも、俺はひとりの人間として壊れかけていた。

何かを失った気がしていた。

それが何かは、まだ分からなかった。


ネットで「ハプバー」と検索した。

子どもが寝たあと、スマホで延々と店舗ブログを読んだ。

主婦が1人で来店」

女装男子告白

カップルと既婚女性トークで盛り上がり…」

どれも薄っぺらいようで、なぜか、リアルだった。


気づいたら行っていた。

最初の数回は何も起こらなかった。酒を飲み、トークして、帰るだけ。

でも、それが良かった。

誰も、俺を“父親”として見なかった。

俺も、誰かの“夫”として振る舞わなくてよかった。


ある日、ソファで話していた年上の女性に、ふいに聞かれた。


「お子さん、何歳?」


ドキッとした。言ってないのに、なぜ。

「ああ、分かるよ。そういう人、来るからね。しんどいでしょ」


言われた瞬間、涙が出そうになった。

俺はたぶん、誰かにしんどいね」と言ってほしかっただけなんだと思う。

仕事も家庭も手を抜けない、抜いたら誰かに責められる、

でも誰にも言えない。言ったところで、共感されるとも限らない。


その夜、彼女キスした。

それだけだった。

でも、たぶん俺の中で何かが溶けた。

それからは、よく喋るようになった。


店の空気は独特だ。

“性”があるのに、“目的”がない。

みんな何かを抱えて来る。

人妻童貞ゲイメンヘラ自営業教員

職業も年齢も関係ない。

あるのは「今夜ここに来た」という共通点だけ。


話す。触れる。笑う。ときに、セックスする。

それがどんなにくだらない行為でも、

誰かとつながった、という感覚が確かに残る。

その余韻を持って、朝方帰宅して、娘の寝顔を見る。


罪悪感はある。もちろんある。

でも、罪悪感だけでは生きられない。

父親にも、人としての体温が要るんだ。


ある夜、店の奥で、若い男と中年の女が揉めていた。

男が「俺のことをバカにしてたんだろ!」と叫び、女が黙って立ち去る。

誰かが笑い、誰かがため息をつき、誰かが無言で酒を飲む。

この“雑さ”が俺にはリアルだった。


そして、こう思った。

ここは教会だ、と。

真夜中の、罪人たちの教会

みんな、何かをやらかしてる。何かを諦めてる。

でも、何かを取り戻したくてここに来る。

懺悔でも、救済でもなく、ただ“存在”を許されるために。


俺は今も、たまに行く。

育児もする。家事もする。仕事もする。

そのどれも本気でやってる。

でも、夜に教会へ向かうことも、本気だ。

俺の人間性のバランスは、その“矛盾”の中にある。


俺が求めていたのは、性じゃなかった。

「ここにいてもいい」という確認だった。

それができたから、今も家に帰って、

娘と向き合えている気がする。

2025-07-05

風のあと

駅のホームには、もう誰もいなかった。終電はとっくに発車していて、照明だけがつんと、取り残されたベンチを照らしていた。

美咲は古い封筒を手に持って、コートポケットにもう片方の手を突っ込んだまま、夜風に揺れる駅名標を見つめていた。

その封筒には、十年前に姿を消した兄から届いた唯一の手紙が入っていた。宛名も差出人も書かれていなかったが、間違いなく兄の字だった。「自分を探さないでくれ」とだけ、短く書いてあった。

探すなと言われても、忘れられるはずがなかった。

「……でも、もういいかな」

彼女はそう言って、駅のベンチにそっと封筒を置いた。未練と怒りと愛情と、いろんな気持ちを混ぜた手紙を、中に忍ばせたまま。

その瞬間、ふいに風が吹いた。木の葉が舞い、ベンチに置いた封筒ひらりと空中を回転した。手紙が一枚、舞い上がる。彼女はそれを追おうとしかけて、やめた。

風が決めることなら、それでいい。もう、自分の手で何かをつかむのはやめよう。

そのとき彼女の胸の奥にふっと浮かんだ感情は、「願い」というにはあまりに頼りなく、「信念」というには曖昧だった。

けれど、確かにあたたかく、どこか遠くへと届きそうな、そんな気持ちだった。

それはきっと、祈りに近いものだ。

2025-05-31

蜘蛛との暮らし

コロナ禍での部屋探し中に、内見に行った部屋で小指の爪サイズの黒い蜘蛛発見した。

引っ越し日の夜にも見かけたので、「先住民」として共存していくことにした。他の虫も食べてくれるはずだと期待して。

それから数カ月間、付かず離れずの距離感で2人暮らしをした。人との付き合いも少ない時期だったし、頼もしかったね。「またいるじゃん」「今日は出窓で日にあたってるじゃん」みたいな。

でも、ある日起床した時に布団を蹴っ飛ばしたら床にいた蜘蛛の上に塊で着地し、それ以来目撃しなくなった。

あれからずっと、家にいる蜘蛛は殺さず逃さず、共存するようにしている。益虫としての働きにも期待して。

今住んでいる部屋にも一匹いる。同棲中の彼女は虫が嫌いで嫌がっていたけど、「他の虫を見なくなるかもよ」と説得したら受け入れてくれて、今では「またいるじゃん」と笑うようになった。

彼女日曜日まで家族旅行中。やることもなく1人で家にいると、ふいに蜘蛛を見つけて、あの頃が懐かしくなった。

2025-05-13

私を振った元彼ふいにタップルのオススメで出てきて

今ほんまに悲しい気持ちになってる。

未練ないのに。私の時は全然お酒も飲みに行ったり出かけてくれへんかったのに

プロフィールに美味しいカフェ探したり飲み屋開拓しましょ☺️みたいな書いてあって

愛されてなかったんやなあって思うと

ほんと虚しい気持ち。泣いてる。

頑張ってたのなんやったんやろって。

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