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「社交の罠、言論は武器である」小林よしのりライジング Vol.260

 フジサンケイグループは昭和60年(1985)から毎年「正論大賞」という言論人表彰をやっている。  第1回の受賞者は渡部昇一、他に主な受賞者は、曽野綾子、岡崎久彦、田久保忠衛、石原慎太郎、小堀桂一郎、中西輝政、森本敏、櫻井よしこ……  もう言うまでもなく、産経論壇村お手盛りの賞で、日本国には害にしかならない「害毒大賞」みたいなものだ。  そしてこれには「新人賞」に相当する「正論新風賞」というのが設けられているのだが、今年選ばれたのが、なんと、小川榮太郎と三浦瑠麗だ。  よりによって、安倍首相の提灯持ちライターで、フェイク本で商売している小川榮太郎と、デマ発言を公言して居直る三浦瑠麗の二人を選んで、顕彰しているのだから、呆れ果てる。  贈呈式では安倍首相がビデオメッセージで受賞者を賛美、祝福した。   そもそも言論の賞に権力者が祝辞を寄せることを異常だとも思わず、むしろ喜んでいるという感覚が完全に狂っている。  権力は暴力装置を一手に握って、税務署もマスコミも掌握して、言論を牛耳ることができる恐るべき存在である。国民の側からすればその恐るべき権力と戦うには「言論」という武器しかないのだ。言論人とはそういう役割を引き受けねばならない。  なのに、権力のお墨付きを得た、権力御用達の「正論」など、何になろうか?そもそも、そんな「正論」などあるはずもなく、言論人はあくまでも「公」のために「正論」を吐かなければならない。  フェイク言論に賞が授与され、祝福に駆けつける東浩紀や津田大介という連中は何がしたいんだ、一体?  社交のみか?付き合いのみか?  安倍は「正論新風賞」を受賞した三浦瑠麗をこう賛美した。 「既存メディアの論調などに決して流されることなく、持ち前の冷静な分析力とわかりやすい語り口で、評論活動を通じておられる三浦さんには、正論新風賞として初の女性受賞者としても今後、さらなるご活躍を大いに期待しております」  笑わせるなという評価だ。三浦は「既存メディアの論調」に流されないどころか、ウィキペディアから引用禁止を通告された「デイリー・メール」や、ネットのデマに流されまくっているのだから話にならない。  贈呈式が行われたのは三浦が「スリーパー・セル」発言をした「ワイドナショー」の放映翌日で、まさに炎上の真っ最中だったのだが、三浦は首相のお墨付きに気を良くしたのか、完全に開き直って 「(北朝鮮危機の)Xデーについても、専門家はそれに伴うリスクやコストもしっかり情報発信していくべきだ」 と発言して、 「今後もタブーなく発言していく決意を示した」 という。  デマを飛ばしてはならないというのは「タブー」ではない。「ルール」だ。  ホテルニューオータニで開催された贈呈式には、約500人が出席した。ここに 「社交」 があり、 「つきあい」 があるから人が集まってくるわけだ。   彼らは「社交」によって言論が「なあなあ」になる危険性にまったく無自覚なんだろう。  言論をやっている以上は、誰が相手だろうと、男女を問わず厳しく批判しなければならないことがある。  ましてや、人に害を及ぼすような発言をしていれば、特に厳しく接しなければならなくなる。  ところがその相手と会って仲良くしていたら、なんだ、実は全部なあなあで、本気で批判していないんじゃないかというように、外からは見えてしまう。  そんな馴れ合いの関係を、果たして「社交」というのだろうかという疑問が湧く。

「社交の罠、言論は武器である」小林よしのりライジング Vol.260
小林よしのりライジング

常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!

著者イメージ

小林よしのり(漫画家)

昭和28年福岡生まれ。昭和51年ギャグ漫画家としてデビュー。代表作に『東大一直線』『おぼっちゃまくん』など多数。『ゴーマニズム宣言』では『戦争論』『天皇論』『コロナ論』等で話題を巻き起こし、日本人の常識を問い続ける。言論イベント「ゴー宣道場」主宰。現在は「週刊SPA!」で『ゴーマニズム宣言』連載、「FLASH」で『よしりん辻説法』を月1連載。他に「週刊エコノミスト」で巻頭言【闘論席】を月1担当。

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