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「鈴木宗男の呆れた北方領土発言」小林よしのりライジング Vol.450

 いよいよ23日は『ゴーマニズム宣言SPECIAL ウクライナ戦争論』の発売日だ。  これはウクライナ戦争を他人事としか思わず、「どっちもどっち」などと平気で言っている平和ボケ日本人に「覚悟」を迫る書である。  ウクライナのゼレンスキー大統領は7日夜、ビデオ演説の冒頭で 「本日、重要な決定がなされた。歴史的だ」 と述べた。  その歴史的に重要な決定とは、 「ロシアに一時的に占領された北方領土を含め、日本の主権と領土の一体性を尊重することを再確認する」 というものだった!  そしてゼレンスキー大統領は同じ趣旨の大統領令に署名し、ウクライナ最高会議(議会)も同じ内容の決議を採択したことを明らかにした。  確かにこれは、歴史的な決定である!  ウクライナ議会の決議は、 「日本の北方領土は1945年にソ連が何の法的根拠もなく占領した」「全ての日本の市民を強制的に追放した」 と強調した上で、 「(北方領土は)ロシアの占領下にあり続けている」 として、 ロシアに返還を求める日本の立場を支持し、国際社会が解決のためにあらゆる手段を講じるように訴えている。  そしてゼレンスキー大統領も演説で北方領土について、 「ロシアはこれらの領土に何の権利も持っていない。世界中の人々がよく知っている。我々は行動しなければならない。私たちはロシアが占領する全ての土地を解放するため行動しなければならない」 と重ねて述べ、こう訴えた。 「ウクライナと国際法秩序に対する今回の戦争によって、かつてロシアに奪われたものすべてが真に解放されるのも時間の問題になった。ロシアはこの状況に自ら陥った」 「侵略者は敗北しなければならない。戦争が再び起きないように。そして平和が本当に長く続くために。侵略者には何も残すべきではない。我々のパートナーの国々のために正義が復活すると信じている」  よくぞ言ってくれた、ゼレンスキー大統領!  ロシアに領土を不法占拠されているという点においては、ウクライナも日本も同じである。   現在ロシアと領土問題を抱えている国は、他にもジョージア、モルドバがあり、さらに歴史をさかのぼれば、フィンランド、ポーランド、バルト三国など、ロシアに侵攻され、泣く泣く領土を放棄させられた国は数多い。  このようなロシアの横暴は、今度こそ終わらせなければならない。これは、世界史的な転換点となる戦争である。  ロシアに対するウクライナの戦いは、日本にとって決して他人事ではない。むしろ積極的にウクライナと共闘し、日本もロシアから北方領土を取り返し、世界に正義を復活させるための戦いを展開すべきなのである!  ところが、このウクライナの歴史的決定に対する日本のニュースの扱いは、極めて小さかった。  しかも報道はしても「日本政府に対して、ロシアへの制裁とウクライナへの支援を継続してほしい意向があるものとみられる」などと、いかにもウクライナ側の「打算」の産物のように示唆する、冷ややかな論調が目立った。  何が何でも「他人事」にしておきたい、どんな事情があろうと戦争にだけは関わりたくない、頑としてお花畑に居座り続けたいという情けない日本人は、まだまだ多いと言わざるを得ない。  とはいえ、関わり合いたくないと逃げる臆病者は、まだマシな方だと言うべきなのかもしれない。  中には「他人事」どころか完全にロシアの側に立って、ゼレンスキーを非難する信じられない人間までいるのだ!   日本維新の会副代表の参院議員・ 鈴木宗男 は、ゼレンスキーの北方領土発言について10日のブログにこう書いた。 「単純に考えれば日本を支持する立場のように見えるが、有難迷惑な話である」  宗男が「ロシアの手先」だということは、知ってる人にとっては「何を今さら」の事実なのだが、ウクライナ戦争開戦以降は、もうそれがなりふり構わぬ様相と化している。  宗男は開戦直後・2月26日のブログで、 「ゼレンスキー大統領になってから、ミンスク合意、停戦合意を履行しなかったことが今日の事態を招いている」 と述べ、メディアについても、 「一方的にロシアを批判する前に、民主主義、自由主義は約束を守るのが基本である。その約束を守らなかったのはどの国で誰かをメデイアは報じないのか」 と非難した。   宗男は戦争の原因がゼレンスキーの約束違反であり、正義はロシアの側にあり、ウクライナの自業自得であると決めつけ、その後も何があろうがロシアの立場を正当化する発言のみを続けている。 今回のゼレンスキーの発言に対する非難も、その一環である。  宗男は北方領土についても、ロシアの支配を正当化してこう言う。   それは、戦後の国際的諸手続き(ヤルタ協定、国連憲章、ポツダム宣言、サンフランシスコ平和条約等)で、ロシアが現在実行(ママ)支配しており、二国間で解決すべき問題であり、いわんやロシアを刺激しても何も得るものはない。  まず、これが何を言っているのかよくわからない。  普通は「国際法に基づきロシアが実効支配」と書くはずだ。   国際法ではなく 「戦後の国際的諸手続き」 によって 「ロシアが実効支配」 とは、どういう意味なのだろうか?  わかりにくいのも無理はない。これは宗男が自分で考えて言っているわけではなく、現在のロシアの主張をそのまんま鵜呑みにして言っているだけなのだ。 「ヤルタ協定、国連憲章、ポツダム宣言、サンフランシスコ平和条約」 を基に、北方領土は合法的にソ連に移り、それをロシアが引き継いだというのは、ロシアの言い分そのものであり、 鈴木宗男は忠実なるロシアの手先として、それを繰り返しているのである。

「鈴木宗男の呆れた北方領土発言」小林よしのりライジング Vol.450
小林よしのりライジング

常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!

著者イメージ

小林よしのり(漫画家)

昭和28年福岡生まれ。昭和51年ギャグ漫画家としてデビュー。代表作に『東大一直線』『おぼっちゃまくん』など多数。『ゴーマニズム宣言』では『戦争論』『天皇論』『コロナ論』等で話題を巻き起こし、日本人の常識を問い続ける。言論イベント「ゴー宣道場」主宰。現在は「週刊SPA!」で『ゴーマニズム宣言』連載、「FLASH」で『よしりん辻説法』を月1連載。他に「週刊エコノミスト」で巻頭言【闘論席】を月1担当。

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