2025-07-08

日本労働生産性が低い根本的原因:「職務専念義務」の害

A(会社員): 最近職場ヘッドホンをつけて音楽を聴きながら仕事をしていたら、上司に「職務専念義務違反だ」って怒られたんだよね。でも、音楽があった方が集中できるのに...

B(法律に詳しい友人): それは災難だったね。でも実は、その「職務専念義務」って概念結構問題があるんだよ。

A: え、どういうこと?法律で決まってるんじゃないの?

B: そこが面白いところなんだ。実は公務員民間労働者全然違うんだよ。公務員場合国家公務員法地方公務員法に明確に書かれている。「注意力のすべてを職務遂行に向けなければならない」って厳しい規定があるんだ。

A: じゃあ僕たち民間労働者は?

B: 実は労働基準法にも労働契約法にも書かれていないんだ!でも裁判所は「雇用契約に当然含まれ義務」として扱ってる。

A: え、それっておかしくない?法律にないのに?

B: その通り!しかも、公務員向けの厳格な規定民間にも適用してるのが問題なんだ。実際に最高裁判例では「身体活動の面だけでなく、精神活動の面でも注意力のすべてを職務遂行に向けていなければならない」なんて言ってる。これって明らかに公務員法の文言をそのまま借用してるよね。

A: 「精神活動の面でも注意力のすべて」って...それ完全に人間機械扱いしてない?

B: まさにそう!公務員は「全体の奉仕者」として特別地位にあるけど、僕たちは私的契約関係のはずでしょ?

A: 確かに...。でも海外ではどうなの?

B: 欧米では全然違うよ。アメリカヨーロッパでは、ヘッドホン音楽を聴きながら働くのは普通に受け入れられてる。「業務に支障がなければ問題ない」という合理的な考え方なんだ。

A: えー!じゃあなんで日本だけこんなに厳しいの?

B: 歴史的な経緯があるんだよ。明治時代プロイセン官僚制度を導入して、儒教武士道の「忠」「誠」の精神が混ざって、戦時中の「滅私奉公思想まで加わって...さら戦後は「仕事神聖もの」という昭和価値観も重なった。要するに封建時代の「奉公」の概念現代まで残ってるんだ。

A: 「仕事神聖もの」?

B: そう。昭和高度経済成長期に「働くこと自体美徳」「仕事に私情を挟むのは不純」みたいな価値観が強くなったんだ。だから音楽を聴いたりお菓子を食べたりするのが「仕事を汚す行為」みたいに捉えられる。

A: うわぁ、それって完全に時代錯誤じゃない?

B: そうなんだよ。しかも「注意力のすべてを職務に向ける」って、人間心理全然理解してない。集中力には限界があるし、適度な気分転換の方が生産性が上がることだって科学的に証明されてる。

A: 本当にそうだよ!家族のことが心配な時もあるし、ずっと100%集中なんて無理だよ。

B: でしょ?現代マルチタスクが基本だし、リモートワークで家事と並行して働くのも普通人間機械のように扱う発想なんだよ。

A: でも公務員特別から厳しくてもいいんじゃない

B: それも違うと思う。公務員も同じ人間から集中力限界は同じだし、持続可能な働き方をしないと結果的行政サービスの質が下がる。過労死燃え尽き症候群の温床にもなってる。

A: 確かに...。でもこの制度、他にも問題があるの?

B: たくさんあるよ。まず、法的根拠がないのに民間に「類推適用」されて、日本全体の労働文化を硬直化させてる。働き方改革の阻害にもなってるし、過労死うつ病の一因にもなってる。それに、パワハラの温床にもなってるんだ。

A: パワハラとも関係があるの?

B: そう。「職務専念義務」を盾に、上司が部下の些細な行動まで監視して叱責する口実に使われることがある。「仕事中にお菓子を食べるなんて言語道断」「ちょっとスマホを見ただけで職務専念義務違反」みたいに。本来なら業務に支障がなければ問題ないことでも、この概念があると過度に厳格な指導理由にされちゃう

A: 確かに!僕の職場でも、休憩中じゃない限り一切私的なことをするなって雰囲気があるよ。

A: それは深刻だね。でも改革はできないの?

B: 完全削除は政治的に難しいかもしれないけど、穏当な修正なら可能かも。例えば「全力を挙げてこれに専念しなければならない」を「与えられた職責を十分に果たすよう努めなければならない」程度に変更するとか。

A: それだけでも随分印象が変わるね!

B: そう!それに参考になる例もある。2022年民法から親の「懲戒権」が削除されたんだ。かつては「親が子を躾けるのは当然」とされてたけど、児童虐待の温床になることが分かって時代に合わせて変更した。

A: なるほど!「当然」とされてきたことでも見直せるってことね。

B: その通り。職務専念義務も、明治時代価値観に基づく時代遅れの制度から科学的な人間理解現代の働き方に合わせて変える時期だと思う。

A: 君の話を聞いてると、僕がヘッドホンで怒られたのも理不尽だったんだね。

B: 少なくとも、欧米では当たり前のことを「職務専念義務違反」とするのはおかしいよ。公務員法の穏当な修正で、日本全体の労働文化改善される可能性がある。

A: 希望が持てるよ。もっと人間的で合理的な働き方ができる社会になるといいな。

B: そうだね。「滅私奉公から効率的で持続可能な働き方」への転換が必要だと思う。法律文言を変えることで、社会意識も変わっていくはずだよ。

  • 昭和の頃までは日本経済の強さとして語られがちだった制度・慣習が バブル崩壊以降は逆に経済低迷の原因とされるように変わってるパターン多いように感じる 常識的に考えれば明治や...

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