Claudeのレポートを使ってなかったので試しに使ってみた。
2025年7月9日、日本の石破茂首相がテレビ番組で発した言葉が、東アジアの地政学的構造を根本から揺るがしている。「もし彼らが、日本は米国に大きく依存しているから米国の言うことに従うべきだと考えているなら、我々は安全保障、エネルギー、食料においてより自立的になり、米国への依存を減らす必要がある」。この発言は、8月1日から発効する米国の25%関税措置への対応として発せられたものだが、単なる貿易摩擦への反応を超えた歴史的な転換点を示唆している。
実際、トランプ政権は同盟国に対して自立を明確に要求しており、日本への書簡では「この25%という数字は、貴国との貿易赤字格差を解消するために必要な水準にははるかに及ばない」と警告している。このような状況下で、日本・韓国・台湾による東アジア連合(EAU)構想は、地域の自立と繁栄のための現実的な選択肢として浮上している。
EAUが実現すれば、合計GDPは約7兆ドル、世界経済の8%を占める巨大経済圏が誕生する。日本の4.2兆ドル、韓国の1.95兆ドル、台湾の7,900億ドルを合わせた経済規模は、米国、中国に次ぐ世界第3位の経済ブロックとなる。人口約1億8,000万人の高度に教育された労働力を擁し、一人当たりGDPは3万ドルを超える先進経済圏となる。
現在の貿易関係はすでに密接で、日本と台湾間の貿易額は年間882億ドル、日本と韓国間は93兆円に達している。関税撤廃により、域内貿易は15~25%増加すると予測され、サプライチェーンの効率化と共に大きな経済効果が期待できる。
EAUの最大の強みは、世界の半導体生産の74.3%を支配することだ。台湾のTSMCが世界ファウンドリー市場の58.5%、韓国のサムスンが15.8%を占め、さらに高帯域幅メモリー(HBM)市場では、韓国のSKハイニックスとサムスンで合計95%のシェアを持つ。この技術的優位性は、AI時代において決定的な競争力となる。
日本の素材技術、韓国のメモリー技術、台湾の製造技術の組み合わせは、他の地域では再現不可能な産業クラスターを形成する。すでにSKハイニックスとTSMCはHBM4の共同開発を進めており、統合によってさらなるイノベーションが加速される。
3か国はいずれも深刻な少子高齢化に直面している。韓国の出生率は0.87と世界最低、日本は1.3、台湾は1.1という危機的水準にある。2060年までに東アジアの高齢者比率は33.7%に達すると予測される中、労働力の相互補完と技術革新による生産性向上が不可欠となる。
統合により、高度人材の域内移動が可能となり、各国の労働力不足を相互に補完できる。特に半導体エンジニアなど専門技術者の交流は、産業競争力の維持に直結する。
EAU構想の最大の障壁は、日韓間の歴史問題である。慰安婦問題では、2015年の「最終的かつ不可逆的な解決」合意が事実上崩壊し、被害者は日本からの直接的な謝罪と賠償を求め続けている。徴用工問題でも、2018年の韓国最高裁判決以降、日本企業への賠償命令が続き、2023年の尹政権による解決案も韓国国民の約60%が反対している。
竹島(独島)の領有権問題も解決の糸口が見えない。韓国にとって独島は日本の植民地支配からの独立の象徴であり、日本にとっては領土主権の問題として譲歩できない。このような根本的な信頼の欠如が、政治統合への大きな障害となっている。
台湾の参加は、EAU構想に特殊な複雑性をもたらす。正式な外交関係を持つ国は12か国のみで、国連を含むほとんどの国際機関から排除されている。中国は台湾を「反乱省」と見なし、2005年の反国家分裂法では武力行使も辞さない姿勢を明確にしている。
中国はEAUを米国主導の対中包囲網の一環と解釈し、強力な反対措置を取ることが予想される。経済制裁、軍事的圧力、外交的孤立化など、あらゆる手段を用いて統合を妨害する可能性が高い。実際、中国は日韓両国の最大の貿易相手国であり、経済的報復のリスクは無視できない。
3か国とも民主主義国家だが、政治システムは大きく異なる。日本の議院内閣制、韓国の大統領制、台湾の半大統領制という違いは、意思決定メカニズムの統合を困難にする。また、各国の憲法は主権の移譲に厳格な制限を設けており、EUのような超国家的機関の設立は法的にも政治的にも極めて困難である。
国民感情も大きな障壁となる。韓国の反日感情、日本の嫌韓感情は根強く、台湾でも主権への懸念から深い統合への抵抗が予想される。
1990年の東アジア経済協議体(EAEC)構想は、日本のリーダーシップ不在と米国の反対により失敗した。しかし、1997年のアジア通貨危機後に誕生したASEAN+3は、実務的協力の枠組みとして定着し、2020年に発効した地域的な包括的経済連携(RCEP)は、世界GDP の30%をカバーする最大の自由貿易協定となった。
これらの経験は、アジアにおける地域統合は欧州型の超国家的統合ではなく、主権を維持しながら実務的協力を深める「アジア方式」が適していることを示している。EUモデルの直接的な適用は現実的でないが、段階的統合のロードマップは参考になる。
専門家の分析によれば、EAU実現には25年程度の長期的視野が必要とされる。第1段階(2025-2030年)では、観光、教育、技術標準などの分野での協力から始める。すでにRCEPが発効し、2022年には域内貿易が8%増加したことは、経済統合の実現可能性を実証している。
第2段階(2030-2035年)では、投資協定の締結、規制の調和、金融協力の深化を進める。第3段階(2035-2045年)で共通市場の形成、通貨協力の開始を目指し、第4段階(2045-2050年)で完全な経済統合と限定的な政治協力を実現する。
ASEAN+3、東アジアサミット(EAS)、RCEPなど既存の協力枠組みを基盤として活用することが現実的だ。特にASEANの中心性を維持しながら、日韓台が「RCEP+」として深化した協力を進める方式が、地域の支持を得やすい。
短期的には、デジタル決済システムの統合、観光ビザの相互免除、高等教育単位の相互認定、パンデミック対策での協力など、市民が直接的な利益を感じられる分野から始めることが重要である。
石破首相の発言が示すように、米国依存からの脱却は日本だけでなく東アジア全体の課題となっている。EAU構想は、この地域が自らの運命を自ら決定し、世界経済の第3極として自立的な発展を遂げるための現実的な選択肢である。
歴史的対立、台湾の地位、中国の反対など、克服すべき課題は山積している。しかし、7兆ドルの経済規模、世界の半導体生産の74%という圧倒的な技術力、共通の民主主義的価値観は、これらの障壁を乗り越える十分な動機となる。
重要なのは、完璧な統合を最初から目指すのではなく、実現可能な協力から始めて信頼を構築していくことだ。25年という長期的視野を持ちながら、観光客の相互訪問の促進、学生交流の拡大、技術標準の共通化など、具体的な利益を積み重ねていく。そして何より、この地域の人々が共有する平和と繁栄への願いを、対立を超えて協力へと転換していく政治的意志が求められている。
東アジア連合は夢物語ではない。それは、変化する世界秩序の中で、この地域が選択できる最も現実的で建設的な未来への道筋なのである。